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210326読んだ本

読書の厄介なところは、何度も映画化されてても傑作とは限らないことである〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)

【読んだ本】

角田喜久雄『風雲将棋谷』(春陽文庫,1994新装)所蔵本

読了(^o^)丿 お絹が「しのぶ湯」を出ようとすると、見知らぬ浪人者に町内の祭りの支度金を賭将棋
で取られそうになってるから助けてくれと2階に引っ張りあげられる(^_^;) 町内では第一の指し手と
される提灯屋のおじさんに代わって浪人者と対戦し、相手の王将を身動きならぬ状態に追い込むと、
急用があるとして浪人者は賭け金を持って席を立ったので、それなら賭け金を置いていくよう言うと、
逆ギレした浪人者は刀を抜いたヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ しかし、お絹の父親は引退したとはいえ捕物の名手
として知られた仏の仁吉、紫雲流さみだれ縄を独創した人物で、お絹は縄のように縒った濡れ手拭を
自在に操り、白刃を叩き落とされた浪人者は賭け金を置いて、逃げるように階段を下りていった(^^)
おとっつぁんにこの一件を聞かれたら、きっとまたお小言だろうなぁと思いながら家に向かっていた
お絹のことを待ち伏せていたのは先の浪人者(@_@;) 相手の手に引っ掛かり、組み敷かれてしまった
お絹((;゚Д゚)ヒィィィ! お絹を相棒に担がせ連れて行こうとすると、現れた謎の男が喧嘩を売ってきて、
自分の名前を知っていることに驚いた浪人者は、男が流れ星の雨太郎と判ると平伏して、逃げ出して
しまった( ̄◇ ̄;) 助かったお絹、先ほどの一番はあんたの勝ちだが相手が二五の歩と受けたらどう
だろう?と言い残して消えてしまった雨太郎にホの字(〃'∇'〃) お絹は帰宅すると、父の仁吉から、
この一ヶ月で五人の娘が行方不明になっていて、その一両日前にはさそりが寝室に現れていることと
五人とも亥年の十九歳であることが共通するが、明後日が祝言の上総屋のお加代さんも亥年の十九歳
で昨夜さそりが寝室に一匹現れたので、年齢も同じで顔も似通ってるお加代さんに化けて祝言の席へ
臨んでくれないかと頼まれる・・・角田喜久雄の時代伝奇小説らしく謎で読み手を引っ張るとともに
主人公はピンチの連続で、さそり道人こと黄虫呵[こうちゅうあ]は人間とは思えぬヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ
角田喜久雄の時代伝奇小説は優れたキャラ造形が特長の一つ、大村彦次郎『時代小説盛衰史(上)』
(ちくま文庫,2012)は次のように記す(^^)

    ・・・『妖棋伝』では縄いたち、『講談倶楽部』で始まった連載の『風雲将棋谷』では
    さそり道人が登場し、妖異な雰囲気を醸成した。各社から原稿の依頼が殺到し、映画化
    の話が撮影所から舞い込んだ。/・・・

本書の表紙カヴァーの袖に「阪東妻三郎・市川右太衛門・勝新太郎の流れ星役で、戦前戦後に三度も
映画化された角田喜久雄の伝記時代小説の傑作」とあるが、さそり道人の能力、映画化は無理だろう
と思いつつネット検索したら、映画(の一つ)は物語の基本的設定が全く違うじゃん((;゚Д゚)ヒィィィ!
とまれ、ヒントを出し過ぎてて謎の幾つかは解り易いし、あっけない結末には口あんぐりで、コレが
「角田喜久雄の伝記時代小説の傑作」とは、流石におかしい(ノ ̄皿 ̄)ノナンデヤネン!┫:・’.::
〈北上次郎選「昭和エンターテインメント叢書」③〉とされてる角田喜久雄『半九郎闇日記(下)』
(小学館文庫,2010)巻末の「解説」で北上次郎も次のように記している(^_^;)

    ・・・『風雲将棋谷』は、盗賊流れ星の雨太郎と、紫雲流の縄術を使うお絹の恋模様を
    中心に、蝦夷地の跡目相続争いを描いているが、蠍使いの悪党黄金呵[ママ]の造形が
    弱いことを指摘する向きもあるかもしれない。もっとも講談倶楽部の編集者菅原宏一は
    『私の大衆文壇史』の中で、角田喜久雄の時代小説では『妖棋伝』と並んでこの『風雲
    将棋谷』を高く評価しているから意見はわかれる。/・・・

『妖棋伝』は角田喜久雄の出世作と言われ、「高く評価」されるのは、よぉーく解る(^o^)丿 だが、
さそり道人こと黄虫呵の「造形が弱い」というよりも、むしろストーリー(ミステリー性と結末)が
チト残念な作品かと(^_^;) 角田喜久雄『怪異雛人形』(講談社大衆文学館文庫コレクション,1995)
巻末に収録された縄田一男「人と作品 角田喜久雄」は次の指摘をしている(^_^;)

    /敵役の持つ負のロマン、これを最も効果的に展開したのが角田喜久雄であり、その点、
    『風雲将棋谷』で流れ星の雨太郎を追いつめるさそり道人は、怖ろしいほどの強さを
    持っているが、やや怪物じみていて、銭酸漿[←角田喜久雄『髑髏銭』のキャラらしい]
    に一歩譲るといわざるを得ない。/・・・

「やや怪物じみていて」とあるが、人間の能力を超えており、もはや怪物かと(^_^;) CGじゃないと
映像化は無理(^_^;) さそり道人を超人的に描くから、最終局面でニャンじゃそりゃあ!?とがっかり
させられたわけで、ネタバレ防止で書けないのがもどかしいが、ストーリーに難あり、でしょ(^_^;)
「敵役の持つ負のロマン」とは言い得て妙で、北上次郎も『半九郎闇日記』について「・・・なんと
いってもこの作品を際立たせているのは、希代の悪党松前屋本蔵という魅力的な敵の存在である。」
と指摘しているように、角田喜久雄の時代伝奇小説の傑作には魅力的な敵キャラが必ず登場してて、
ちなみに、小生の推しは何と言っても『まぼろし若衆』の高砂蔵人だな〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

・主人公の棋聖天野宗歩よりもドS悪役の高砂蔵人が凄くてイチオシの傑作(^^)v お菊さま♡(*'ε`*)チゥ

 『まぼろし若衆』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-02-15

・生き甲斐は女と色情の前島数弥などキャラ造型が流石で番町の姫君お京さまがツンデレで可愛い(;_;)

 『緋牡丹盗賊』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-04-08

・平賀源内らが駆けつけると女の死体の乳房に「死人詰め」なる詰将棋のような図というマジ傑作(^^)v

 『将棋大名』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-06-02

・大岡越前もお手上げの謎の事件が次々(゚ロ゚;)「影さま」の正体は?「怪物男」とは?マジで傑作(^^)v

 『寝みだれ夜叉』上⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2016-12-02
 『寝みだれ夜叉』下⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2016-12-04

・『寝みだれ夜叉』の主人公水木半九郎が主役の半九郎四部作第1作でジェットコースター的展開(^_^;)

 『恋慕奉行』上⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-04-10
 『恋慕奉行』下⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-04-18

・討入後14年も大石内蔵助目撃に於兔姫や亀に浦島太郎と角田ワールド全開で寝不足必至北上次郎選(^^)

 『半九郎闇日記』上・下⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-07-01

・「あの娘さんの顔、印籠の絵の、裸の女とそっくりじゃアないか!」(゚ロ゚;) 半九郎四部作完結(^^)v

 『盗っ人奉行』上・下⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-27

・お蝶が目撃した殺人の死体は9年前死んだ大高源吾だし泉岳寺では生きている大石内蔵助に遭遇(゚ロ゚;)

 『妖異忠臣蔵』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-01-28

・毛色の異なる作品もキャラの魅力で最後までニコニコ愉しんで読んでたら大ドンデン返しが( ̄◇ ̄;)

 『虹に立つ侍』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-24

・ほぼミステリーで読者をぐいぐい引っ張って伏線も次々と確実に回収するストーリーテラーぶり(^^)v

 『振袖地獄』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-03-30

・主人公は「鹿子絞りの振袖に島田髷の美女お紋」もハーレム展開と思わせつつ最後まで飽かせず^_^;

 『緋鹿子伝法』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-07-03

・くちなし小町お多加はお姫様の恰好をさせられ墓参りのバイト(゚o゚;) 各キャラの絡みが愉しいね(^^)

 『姫夜叉行状記』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-21

・夜更けに立っている若い娘を通りがかりの男が覗きこむとのっぺらぼうだったという白蝋小町(゚ロ゚;)

 『白蝋小町』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-01-30

・『白蝋小町』から9年、江戸に戻った吾妻一兵は闇太郎様の謎を追っていきなり絶体絶命の危機(゚ロ゚;)

 『闇太郎変化』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-02-18

・お通の茶屋に薄気味悪い男女二人が来て「三の城は無事か?」「風の里から来た」と謎の言葉(゚ロ゚;)

 『悪霊の城』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-11-09

・関白秀次の将棋の駒「山彦」の謎に取り憑かれた人々、意外な犯人、角田喜久雄の出世作に納得(^^)

 『妖棋伝』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-09-14

・月姫とは何者?その秘密とは?大久保長安に乱破や忍者など色々なキャラが登場して卍巴の展開(^^)

 『月姫系図』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-07-30

・桜兵之介&多喜&平賀源内が無辜を犠牲に保身へ走る権力者を相手に最後までハラハラドキドキ(^^)

 『兵之介闇問答』上・下⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-12-09

・小源太が発見した無人の小舟に横たわってた白無垢の花嫁姿の若い女、記憶が半年間無い( ̄◇ ̄;)

 『赤姫秘文』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-12-30

・お喜美の頭上に真っ赤な塊りが覆いかぶさってきて「赤屋敷へこい。赤屋敷へこい」ヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ

 『雪太郎乳房』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-02-07

・お喜美を追ってきた荒くれ侍4人を次々と倒す春の家春之助は名女形だが御嶽神陰流の使い手(゚ロ゚;)

 『折鶴七変化』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-05-28

・瀬戸内を主な舞台として舟姫呪文の謎をめぐって何ともホロ苦~い人間模様が展開される佳作か^_^;

 『舟姫潮姫』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-10

・敵の企てはスケールが大きく絵空事感も、どんでん返しあり、充分に愉しめた(^^) お都賀さん(;_;)

 『霧丸霧がくれ』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-09-01

・他作品と違いリアリティーある謎だし出自や身分の軛からの自由を求める女性達を描いて名作(^o^)丿

 『酔いどれ牡丹』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-24

・お光は産みの親が待ってるかもと向かった湯島天神で拉致され老中阿部正弘の養女も行方不明(゚ロ゚;)

 『妖花伝』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-06-15

・面白いけど縄田一男の「戦後の角田作品の最高峰」「角田作品の集大成」との評は違うかと(@_@;)

 『影丸極道帖』上⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-04-22
 『影丸極道帖』下⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-06-14

・ヒロインにイライラも、角田喜久雄のチョー面白い時代伝奇小説群の中ではチト残念な作品か(^_^;)

 『お小夜悲願』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-07-25

・水軍の村上家の家宝「ポルトガルの聖母」をめぐる争いに端を発するけど出来はフツーの作品(^_^;)

 『黒潮鬼』⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-10-07

・角田喜久雄『怪異雛人形』(講談社大衆文学館文庫コレクション,1995)所収の中篇短篇v( ̄∇ ̄)ニヤッ

 「怪異雛人形」⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-08
 「鬼面三人組」⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-11
 「美しき白鬼」⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-14
 「恋文地獄」⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-15
 「自殺屋敷」⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-18
 「悪魔凧」⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-19
 「逆立小僧」⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-08-20
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コメント 8

ナベちはる

何度も映画化になるということはそこに何かがあるからだと思うのですが、それは(大抵は)誰にもわからないですよね((+_+))
by ナベちはる (2021-03-27 01:35) 

middrinn

たしかに何かがあって、しかもヒットするから、
何度も映画化されてるわけですものね(@_@;)
by middrinn (2021-03-27 06:11) 

df233285

良く判りませんが。昔は大衆の面前では将棋賭博に負けると、
どんな悪者でも、掛け金をいったんは支払ってゆくものだった
のですね。
by df233285 (2021-03-27 07:56) 

middrinn

この場面は、浪人者は刀を抜いたけど、お絹の紫雲流縄術に叩き落されて、
気を呑まれてしまったため、お絹の言うまま賭け金を置いて帰りました(^^)
ちなみに、抜く前に急用を思い出したとして掛け金を持ったまま浪人者が
帰ろうとした際には、お絹は「賭け将棋にご中座は、負けと相場が決まって
おりまする。この一番はお指し継ぎなさいますか、それとも掛け金をお下げ
おきのうえお帰りくださいますよう」と浪人者に語り掛けております(^^)
by middrinn (2021-03-27 08:30) 

そら

窮地に追い込まれ、賭け金を持って逃げるとはまさに卑怯この上ありません!!
by そら (2021-03-27 09:03) 

middrinn

しかも、逆ギレして、刀を抜いたんですよヾ(`◇´)ノ
by middrinn (2021-03-27 09:13) 

tai-yama

「さそり道人」じゃなく「さそり座の男」だったら映画化も
容易だったのに・・・・
by tai-yama (2021-03-27 19:05) 

middrinn

「さそり座の女」の方が「妖異な雰囲気を醸成」するかと(^_^;)
by middrinn (2021-03-27 19:28) 

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