SSブログ

210107読んだ本

ミステリー業界における江戸川乱歩とは、漫画業界における手塚治虫みたいな存在なのかしら(@_@;)

【読んだ本】

戸板康二『あの人この人 昭和人物誌』(文春文庫,1996)所蔵本

「江戸川乱歩の好奇心」という一篇を読んだ(^^) 表題に関連する話も興味深かったけど、演劇評論家
だった戸板康二が江戸川乱歩の勧めで小説を書くようになった話(後に直木賞を受賞)がいいな(^^)

    ・・・/それ[=初めて会って]からしばらくして、「宝石」という
    推理小説の雑誌を、宝石社から、自分が編集して出すという話を聞いた。
    たまたま、「宝石」が創刊されて間もなく、私は十一日会という主として
    演劇人がこしらえたグループの丸の内常盤家でのパーティーに出席し、
    ちょっと遅れて行くと、広間の中央の円卓に、乱歩さん御夫妻がいて、
    その隣の椅子があいていたので、すわらせてもらった。/「何かあなた、
    書きませんか、小説を」といわれ、私は劇場の楽屋に舞台の音が聞こえる
    仕掛のトリックで何となく考えていた筋があったので、「ひとつだけ、
    それでは、書かせて下さい」と答えた。酒杯を手にしていたので、
    大胆になってもいたのだろう。乱歩さんはニッコリして、「ぜひお願いしますよ」
    といった。/私がおどろいたのは、翌日の夕刻、ハガキの速達が来て、
    乱歩さんが「ゆうべの約束お忘れなく」と書いていた。
    これには身ぶるいするような感動があった。/・・・

戸板康二の急逝で夫人の戸板当世子が本書の「あとがきにかえて」を書いてて、次のようにある(^^)

    ・・・/小説を書く様になったのは、あるパーティーで、江戸川乱歩さんに
    お会いして、何か書いてみませんか、とおっしゃっていただき、でもそれは、
    ただ何気なくおっしゃっただけと思っていたら、翌日お葉書をいただき、
    その気になりましたかと言われ、本当にそう思って下さっているんだと分り、
    書く気になったのがはじまりでした。・・・

酒席での依頼ゆえ御愛想だと思ってたところに「翌日」「速達」なのが〈ちょっといい〉(〃'∇'〃)

石川九楊『現代作家100人の字』(新潮文庫,1998)は書から「人格を推理」して「気難しい顔付き」
と評も、「ハガキ」はどんな字だったのかしら(^^) 「昭和三十三年の六月に、雑誌は発売されたが、
表題の脇に乱歩さんが何とも泣かせるような紹介文を書いている。」とあるのも気になる(〃'∇'〃)

・乱歩は人情家だった。ある編集者が失業し、彼に苦衷を訴えたところ、推理小説の原書を数冊・・・

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-06-23

・「推理小説を読んでいらして、ずいぶん早くから犯人がおわかりになるんでしょうね」と質問(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-09-26

・戸板康二の「ちょっといい話」シリーズ4冊から〈真・ちょっといい話〉を選りすぐってみた(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-12-27
コメント(15) 
共通テーマ:

コメント 15

ぽ村

江戸川乱歩懐かしい!
小学生のころ学校の図書室に作品集があって一冊一冊読んでました
表紙と挿絵のオドロオドロしさが古いのに癖になる感じでした
by ぽ村 (2021-01-07 21:40) 

ニッキー

酒の席で言われると本気にはあまりしないと
乱歩さんもわかっててちゃんとフォローのハガキを出すなんて
さりげなさがかっこいいですねぇ( ^ω^ )
でも「書いてみませんか?」と言われて書けるって
才能のある人は違うなぁ(°_°)
by ニッキー (2021-01-07 21:53) 

tai-yama

雑誌のページが足りなかったので何とか書かせたかったのかも(笑)。
実は、その酒宴で出されたお酒には小説を書きたくなる仕掛けが
あったり。
by tai-yama (2021-01-07 23:21) 

nikki

江戸川乱歩 幼少期は名古屋に住んでいたらしい。

江戸川乱歩旧居跡記念碑が名古屋市の栄にできたらしい。
コロナ禍じゃなかったら記事にするのに。
by nikki (2021-01-08 00:51) 

そら

私も書いてみようかしらん!
いやいや無理無理(^^;
by そら (2021-01-08 06:39) 

middrinn

「江戸川乱歩 ポプラ社」で画像検索されることを、
おススメ(^o^)丿 また読みたくなりますね(^_^;)
ぽムたん御推奨の漫画を図書館で借りました(^^)
by middrinn (2021-01-08 08:33) 

middrinn

まさに自然債務で、酒の席で新しい着物を買ってあげるよ~と、
ニッキー様、ホステスに約束するのと同じなのに偉いです(^^)
by middrinn (2021-01-08 08:38) 

middrinn

小林信彦『回想の江戸川乱歩』(文春文庫,1997)に、
tai-yama様、「・・・江戸川乱歩の顔で依頼するわけ
ですからね、そりゃあ頼まれたら、まあ、誰でも書き
ますよ。」とあるので、原稿不足は無さそう(^_^;)
by middrinn (2021-01-08 08:43) 

middrinn

江戸川乱歩旧居跡記念碑が出来るとは、
nikki様、やはり乱歩は偉人( ̄◇ ̄;)
by middrinn (2021-01-08 08:47) 

middrinn

奥様との出会いからカワセミさんのことまで、
そら様、書くネタは沢山ありますよ(^o^)丿
by middrinn (2021-01-08 08:48) 

アニマルボイス

千駄木から団子坂(「D坂」)へ下っていく途中に「コーヒー乱歩°」という喫茶店がありますよ。(^-^)

手塚治虫は「ブラックジャック」「火の鳥」など死ぬまで創作者として現役だったけど、乱歩の創作では初期の短編だけ。もちろん少年ものや海外ミステリの紹介など大きな功績のある巨人ですが、立ち位置としてはちょっと違うような気がします。
by アニマルボイス (2021-01-08 17:14) 

middrinn

「コーヒー乱歩°」、行かれた方のレポートによると面白そうですね(〃'∇'〃)
ナルホド!( ̄◇ ̄;) 乱歩全集は紛失したので、小林信彦『回想の江戸川乱歩』
(文春文庫,1997)巻末の「江戸川乱歩略年譜」だと、65歳で書き下ろし長篇
『ぺてん師と空気男』刊行後は、67歳での『探偵小説四十年』だけで、71歳で
逝去となってます(^^) 戸板康二のような新人発掘が手塚に似てるかと(^_^;)
by middrinn (2021-01-08 18:17) 

middrinn

アニマルボイス様のコメに通じるものがありそうなので、メモっておく_φ( ̄^ ̄ )メモメモ
小林信彦『人生は五十一から』(文春文庫,2002)の「乱歩、正史、清張のこと Ⅱ」に
〈・・・/「宝石」の中年の編集長につれられて、石神井(だったと思う)の松本家に
挨拶に行ったのは昭和三十四年(一九五九年)の春、まだ寒いころだった。潜水艦にある
ような階段を登ったのを覚えている。/「がっしりしたデスクの向う側にすわった清張は、
/「江戸川乱歩が初期の短篇だけで亡くなっていたら、天才と呼ばれたのになあ」/と
言った。/ずいぶんひどいことを言うと思ったが、当っていないわけでもない。清張は
ほぼ同じことを活字にしている。/・・・〉云々とあった〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
by middrinn (2021-01-08 20:35) 

アニマルボイス

せっかくのメモなので、ついでに書いておきますね。
昔々のその昔、東都書房から「日本推理小説大系」という大判のシリーズが出されていて、第2巻が「江戸川乱歩集」で、解説の松本清張が確か「初期の短編は輝きを失っていない」というようなこと書いていて、「その通り」と思ったものでした。小林さんの文章は、この清張解説をさしているいるのかもしれませんね。
ちなみにシリーズ第1巻の「明治・大正集」は、谷崎潤一郎や佐藤春夫、幸田露伴、泉鏡花、正宗白鳥らの推理小説短編が集められている珍品なのでmiddrinn様にお薦めです。
by アニマルボイス (2021-01-08 21:14) 

middrinn

活字での清張の乱歩評は小林信彦が上記の件に続いて引いてて、次の通りです(^_^;)

  ・・・/〈(自分が驚嘆した)乱歩が「一寸法師」あたりから、
  いわゆる講談社の通俗雑誌に走るようになって、私の乱歩への
  傾倒は消滅した。私は氏の輝かしい生命はその時に終ったと
  思った。この考えは(多少の修整はあるが)今でも変っていない。〉
  /・・・

小林信彦も「乱歩、正史、清張 Ⅰ」の方で、乱歩について「初期のすぐれた短篇の
ほとんどが大正十四年までに書かれ、昭和二年春には執筆を休止する。」と(^_^;)
おススメの本、〈推理小説〉でその面々は驚きで、どんな作品か気になります(^^)
by middrinn (2021-01-08 21:37) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。