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211231読んだ本【バカチン歴史家②】 [バカチン歴史家]

捏造や間違いをどれだけ見付けられるか読み手の教養と知識を試す本ヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!!

【読んだ本(バカチン歴史家②)】

角田文衞『承香殿の女御 復原された源氏物語の世界』(中公新書,1963)所蔵本

丸谷才一『軽いつづら』(新潮文庫,1996)は角田文衞『椒庭秘抄 待賢門院璋子の生涯』を高評(゚ロ゚;)

    ・・・崇徳天皇は白河法皇の実子であると證明するのだ。/この箇所の、荻野久作
    博士の説を援用したりしての詳細厳密な考證は、歴史推理の名品とも言ふべきもので、
    嘆賞を禁じ得ない。いくら褒めても足りないほどの、学問的放れ業でありますが、・・・

これに対し、片桐洋一は角田文衞「小野小町の実像」(『王朝の映像』所収)について「これは考証
と称すべきものではない。推理小説としても程度の悪い作品である。・・・用いられた資料について
の吟味が乏しく、都合のよい所だけを、しかも部分的に利用しただけ・・・」と酷評してたけれどね
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-11-29 )〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

その本を読まないと判らないけど、本書を読んだ限り、丸谷才一の目が節穴の可能性C= (-。- ) フゥー

角田文衞は本書で「承香殿の女御」こと藤原元子の「生活の記録をできるだけ忠実に復原」どころか
捏造していたが(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-12-30 )、元子の父親の
藤原顕光についても捏造オホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*) 本書119~120頁から当該件オホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!

    ・・・/寛仁三年から四年にかけて、公人としての顕光は、軽んぜられながらも、
    とにかく自分の職責を果たしていた。しかし、満たされぬ野心と延子[顕光の娘
    で、皇太子の地位から自ら降りて院号(小一条院)や藤原道長の娘の寛子を得た
    敦明親王の女御]をうしなった寂寥とにさいなまれ、彼の私生活は暗いもので
    あった。そのころ彼は、「むすめにおくれて歎き侍りける人に月のあかかりける
    夜いひつかはしける」という詞書で、

     その事と思はぬだにもあるものをなにごこちして月を見るらむ

    という歌を詠んでいる。歌の意は、特別にもの思いがなくても月を見ると憂いが
    覚えられるものを、まして愛娘をうしなったあなたの心中はどんなものであろう
    ということである。詞書には、知人か友人に贈ったとあるが、実はそういったこと
    に託して心境を述べた彼自身のための詠草であったのであろう。/・・・

付された注4を確認すると「『詞花和歌集』巻第十、雑下、三九〇番。」とあるが(163頁)、同歌の
作者の「堀河右大臣」は藤原顕光ではなく藤原頼宗(道長の子)だよヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!!

小生の手元にあるのは、菅根順之『笠間注釈叢刊10 詞花和歌集全釈』(笠間書院,1983)、松野陽一
(校注)『和泉古典叢書7 詞花和歌集』(和泉書院,1988)、川村晃生&柏木由夫&工藤重矩(校注)
『新日本古典文学大系9 金葉和歌集 詞花和歌集』(岩波書店,1989)、そして、工藤重矩(校注)
『詞花和歌集』(岩波文庫,2020)の4冊だが、同歌作者を顕光とする説などモチ無いC= (-。- ) フゥー

小町谷照彦(校注)『新日本古典文学大系7 拾遺和歌集』(岩波書店,1990)巻末の「人名索引 作者
名索引」の「顕光」の項を見ると「・・・勅撰入集は拾遺集の1首のみ.・・・」とあるので、顕光は
「一首歌人」にすぎないのに、こうやって角田文衞は他人が詠んだ歌も顕光の作としてしまうので、
「・・・右大臣の顕光は歌才はあったにせよ、・・・」(95頁)といった評価にエッ(゚Д゚≡゚Д゚)マジ?

    ・・・/道長の政敵は少なくとも表面的には姿を消し、摂関政治は今や頂点に
    近づいていた。顕光の政治的手腕はともかく、道長は従順な協力者たる顕光を
    尊重し、大饗などがあれば必ず彼を主賓として招いていた。顕光の野心は道長
    によって無言のうちに封じられていたとはいえ、彼は自分を引き立ててくれ、
    かつ右大臣として正当な待遇を与えてくれる道長に楯つこうなどとは考えて
    いなかったであろう。長保の末年のこと、彼が賀茂詣をした時などは、当時
    右近少将であった道長の子頼通がうやうやしく前駆の役を果たしたりした。
    ・・・

この件(62頁)を読んだ時には気付かなかったのだが、その後、倉本一宏(全現代語訳)『藤原道長
「御堂関白記」(上)』(講談社学術文庫,2009)を読んでて、同書の寛弘2年(1005年)4月19日条で
はたと閃くものがキタ━━━━゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚━━━━!!!! キタヨキタヨヽ(゚∀゚=゚∀゚)ノキチャッタヨ-!!!!!!

     十九日、丙申。 藤原顕光、賀茂詣

    右大臣(藤原顕光)が、賀茂社に参詣された。(藤原)頼通は、右大臣の供をして
    参詣した。これは中宮(藤原彰子)が大原野社に参詣された際に、右大臣が供奉された。
    それが畏[おそ]れ多かったので、共に参ったのである。右大臣は頼通に、馬二疋と
    野釼[のだち]一腰を賜った。これは甚だ大変な贈物である。

藤原顕光の前駆を藤原頼通が務めたことは奇異だったらしく、その理由を藤原実資も日記『小右記』
にわざわざ記しており、倉本一宏編『現代語訳 小右記4 敦成親王誕生』(吉川弘文館,2017)10頁の
寛弘2年(1005年)4月19日条を引く(⌒~⌒)

     十九日、丙申。 顕光賀茂詣/頼通前駆を務める

    「右大臣(顕光)が賀茂社に参った」と云うことだ。「左右近衛の官人を舞人とした」
    と云うことだ。左府[道長]は四位少将(藤原)頼通を前駆とさせた。「先日、右府
    (顕光)は大原野行啓に供奉された。今、あの恐縮を感謝する為である」と云うことだ。
    ・・・

中宮彰子の大原野行啓に顕光が供奉したことに対する感謝と聞いて実資が得心したのは、次の出来事
を知っていたからであろう(⌒~⌒) 橘健二&加藤静子(校注・訳)『新編日本古典文学全集34 大鏡』
(小学館,1996)403頁の寛弘2年(1005年)3月8日の彰子の大原野神社への行啓の件から引く(⌒~⌒)

    ・・・閑院太政大臣殿の、西の七条より帰らせたまひしをこそ、入道殿いみじう恨み
    申させたまひけれ。堀河の左大臣殿は、御社までつかまつらせたまひて、御引出物
    御馬あり。・・・

     ・・・閑院の太政大臣殿(公季)が、西の京の七条通から引き返されたのを、
     入道殿[道長]はたいそうお恨みなさいました。堀河の左大臣殿(顕光)は、
     お社までお供申しあげられて、御引出物として、お馬を贈られました。・・・

藤原公季が帰っちゃったから(『小右記』によると体調不良)、顕光の株が上がっただけかと(^_^;)

「道長は・・・顕光を尊重し・・・引き立てて・・・右大臣として正当な待遇を与えて」る一環で、
頼通が顕光の前駆を務めたのなら、わざわざ実資が特記したりしないのではないか(@_@;) 加えて、
頼通の前駆を角田文衞は寛弘2年(1005年)4月19日ではなく「長保の末年」の出来事としているが、
寛弘に改元されたのは長保6年(1004年)7月20日(前掲『藤原道長「御堂関白記」(上)』同日条)
なので一年ものズレがある(@_@;) 角田文衞が典拠としているのは何だろうかと注72を見たところ、
「『江談抄』第一。」とあったので(157頁)、後藤昭雄&池上洵一&山根對助(校注)『新日本古典
文学大系32 江談抄 中外抄 富家語』(岩波書店,1997)所収の山根對助&後藤昭雄(校注)『江談抄』
第一の「摂関家の事」の(二八)「摂政関白の賀茂詣に公卿ならびに子息の大臣を共にする事」の中
の一節(同書18頁)を引くが、( )内は「底本における二行割書の注記」(凡例)である(⌒~⌒)

    ・・・/治部卿(伊房)云はく、「宇治殿の少将にて御坐[おはしま]す時、
    堀川の大臣(顕光)、賀茂詣に前駆せしめたまふと云々。宇治殿摂録の時、
    堀川の大臣上卿と為りて陳の定有り。内覧の文遅く来りて、数剋を経たり。
    傍の人に語りて云はく、『わが前駆を為せし人なり』」と云々。/・・・

「賀茂詣」に付されてる脚注注3には、次のように記されていた(同書18頁)オホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)

         寛弘二年(一〇〇五)四月十九日のこと(池上洵一)。
タグ:伝記 歴史 和歌
コメント(6) 
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コメント 6

tai-yama

middrinnさんお墨付きの丸谷さんでも節穴な時が・・・
自分の自説を証明するために、わざと間違えて節も(笑)。
by tai-yama (2021-12-31 23:08) 

ナベちはる

捏造や間違いを見つけられる教養、欲しいです…((+_+))
by ナベちはる (2022-01-01 01:22) 

middrinn

丸谷才一の株は最近になって小生の中では更に急落してますよ(^_^;)
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-09-29
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-11-14
tai-yama様、上記記事返信コメや『枕草子』未読疑惑の下記記事^_^;
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
by middrinn (2022-01-01 05:52) 

middrinn

何か気になったことを調べようとする姿勢も、
ナベちはる様、教養に匹敵しますよ(^o^)丿
by middrinn (2022-01-01 06:12) 

caterham_7

あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします
毎週訪問いただき感謝しております。
by caterham_7 (2022-01-01 15:59) 

middrinn

新年あけましておめでとうございま~す(^o^)丿
こちらこそ、今年も宜しくお願いしますm(__)m
カッコいいお車や動物等の御写真が楽しみ(^^)
by middrinn (2022-01-01 16:27) 

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