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211114読んだ本

読書の厄介なところは、何でも男と女の話にしたがるエロオヤジである〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
落語四団体の若手が出演していた大昔の深夜番組で三遊亭窓里が何でも下ネタにして笑いをとってて
もはや芸の域に達してたけど(^_^;) 立川ボーイズの談春&志らくが一番ウケてたけど、あまり面白く
なかった春風亭昇太が笑点の司会はともかく落語芸術協会の会長に就いたのにはマジ驚いた( ̄◇ ̄;)

【読んだ本】

谷沢永一『紙つぶて 自作自注最終版』(文藝春秋,2005)所蔵本

本書の「何でも叙景歌で片づける万葉学」という一篇から引用するよん〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

    ▽万葉集巻十に、・・・しぐれの雨まなくし降れば真木の葉もあらそひかねて
    色づきにけり[という歌がある]。これもおそらく祝婚歌。一方では男の根[こん]
    のよさに呆れ、かつそれを賞めそやし、同時に、女の最初の拒み方と今の嬉しげな
    様子との違いをからかって、口は悪いが人のよい祝い方をしているのであろう。
    丸谷才一が「言葉で作る世界」(岩波講座『文学』第三巻)で示した鮮やかで
    誰にも納得のゆく解釈だ。▽不思議なことに専門のいわゆる万葉学者は、未だ
    かつて絶対にこのような人間臭い解釈を下さなかった。澤瀉久孝が『萬葉集注釋』
    (中央公論社)に、「しぐれの雨が間断なく零[ふ]るので、真木の葉もそれに
    抵抗しかねて色づいたことよ」と、無味乾燥の極を行く口語訳を施したのをはじめ、
    『日本古典文学体系』(岩波書店)も『日本古典文学全集』(小学館)も木で鼻を
    くくったような扱いだ。▽常緑樹である真木、すなわち杉や松などが色づくはずは
    ないから、これは枯れ落ちる前の色のことか、と首をひねる学者馬鹿の珍解釈を
    丸谷才一は嘲笑して、これらの歌を単なる叙景歌と思いこんでかかる石頭には、
    ユーモアのための詩的誇張が感じとれないのだ、と注意している。・・・

『万葉集』のことは分らぬが(本書自注は伊藤博『万葉集釈注』五[1996年]も槍玉に挙げてる)、
この歌は『新古今和歌集』の冬歌にも入ってて、手元の注釈書は揃って「叙景歌」と解してる(^_^;)

・石田吉貞『新古今和歌集全註解』(有精堂,1960)

    時雨の雨が、少しの晴れ間も無く降るので、いつも色の變わらない槇の葉も、
    爭いきれずに紅く色づいたわい

・窪田空穂『完本新古今和歌集評釈』上巻(東京堂出版,1964)

    しぐれの雨が絶え間なくも降るので、まきの葉も、染まるまいと争ったが、
    争い得ずして色づいたことよ。

・久保田淳(校注)『新潮日本古典集成 新古今和歌集 上』(新潮社,1979)

    しぐれがひまなく降るので、杉や檜の葉もついにあらがいきれずに
    色づいてしまったなあ。

・田中裕&赤瀬信吾(校注)『新日本古典文学大系11 新古今和歌集』(岩波書店,1992)

    時雨が絶えまなく降るので常緑の真木の葉も争いきれず、とうとう色づいたことだ。

・峯村文人(校注・訳)『新編日本古典文学全集43 新古今和歌集』(小学館,1995)

    時雨の雨が絶え間なく降るので、槇の葉も、それに争いかねて、色づいたことだ。

・久保田淳(訳注)『新古今和歌集 上』(角川ソフィア文庫,2007初版)

    時雨の雨が間断なしに降るので、真木の葉も抗しきれなくなって色づいてしまったよ。

・久保田淳『新古今和歌集全注釈 二』(角川学芸出版,2011)

    しぐれが間断なく降るので、ついに真木の葉も抗しきれずに色づいてしまったよ。

小島吉雄(校注)『日本古典全書 新古今和歌集』(朝日新聞社,1959)の頭注欄も「出典は柿本集。
原據は萬葉集巻十、作者未詳歌。」とあるだけで、「祝婚歌」のようなことを匂わせもしない(^_^;)
丸谷才一はエッセイ集『月とメロン』(文春文庫,2011)で「わたしが日本の古典でとりわけ好きなの
は『新古今和歌集』だが、明治維新以後の『新古今』学者のなかの随一は小島[吉雄]だと思ふ。」
と記しながら、『日本詩人選10 後鳥羽院』(1973年)で後鳥羽院の歌「我こそは新じま守よ沖の海の
あらき浪かぜ心してふけ」の従来の解釈は誤りと断じて新解釈を示したつもりも、ソレは小島吉雄の
解釈と同じだったことは、井上宗雄(全訳注)『増鏡(上)』(講談社学術文庫,1979)が指摘して、
樋口芳麻呂の『王朝の歌人10 後鳥羽院』(集英社,1985)すら追認してるし(「すら」は丸谷才一の
「友情」で『王朝秀歌選』[岩波文庫,1983]を出せたと樋口芳麻呂が感謝の念を記していたから)、
加えて、丸谷才一の解釈が成り立たぬことは、井上宗雄・前掲書を読めば得心オホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!

本題に戻すと、「筆者は和歌文芸としては万葉集を愛好していたが、古今・新古今集はそれほどには
思っていなかった。」と「序」で正直に告白している窪田空穂の前掲書が上記のように訳しながらも
「民謡系統の歌で、しぐれは男、まきの葉は女としての譬喩歌である。」とも評してはいるのだが、
久保田淳は前掲『新古今和歌集全注釈 二』で〈『完本評釈』に「・・・」というが、万葉集では「秋
雑歌」に分類しているのだから、そのように解する必要はない。〉と一蹴(^_^;) 『万葉集』の部立を
知らんので、解らんけどね(^_^;) 気になるのは、久保田淳が同書で次のように記してること(@_@;)

    ・・・事実はその[←「常緑の針葉樹が紅葉するはずはないという常識」を指す]通り
    であろうが、詩はその常識から外れたところに成り立つと考える。[澤潟久孝の]
    『萬葉集註釋』巻第十は「檜や杉などは常緑樹であるが、それでもしぐれに染められる、
    といふので、小清水卓二博士が檜の中にはずゐぶん色が変るのがあり、万葉人がその
    真実を見てゐるのに感心する、と私に話された事がある」という。/

「詩はその常識から外れたところに成り立つ」ものゆえ、却って、この「日本の植物生理生態学者
(wiki)の言う「真実」へと至った、ということなのかな(@_@;) 「常識」=「事実」と「真実」の
関係がよう解らんが、前掲『新古今和歌集 上』で「実際に紅葉することはないが、冬には杉や檜の緑
もさびた色合いを帯びてくることをいったと見られる。」と記したあたりに落ち着くのかな(@_@;)
丸谷才一論文は未確認なので谷沢永一が紹介する「学者馬鹿の珍解釈」との関係も気になる(@_@;)

ちなみに、『新古今和歌集』の秋歌下の藤原公継の「もみぢ葉の色にまかせて常盤木も風にうつろふ
秋の山かな」は「風に散る本当の紅葉のために、常盤木までも紅葉したように見えるという、一種の
目の錯覚のまま歌った」由(前掲『新古今和歌集全注釈 二』)、色づいて「見える」こともある(^^)
タグ:和歌
コメント(9) 
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コメント 9

tai-yama

「気になるあいつ」になったら勝ちですね(笑)。
常盤木で調べると女子高が出て来ると言う・・・
by tai-yama (2021-11-14 23:11) 

ナベちはる

笑点の司会だけでなく落語協会の会長就任というのは、同じく驚きました。
笑いを提供する世界である「落語」の協会でも、トップになるには「面白さ」だけではなれないということですね(^^;
by ナベちはる (2021-11-15 01:21) 

middrinn

「気になるあいつ」で調べると渡辺徹が出て来て、
tai-yama様、おっしゃることがイミフ(^_^;)
by middrinn (2021-11-15 07:10) 

middrinn

落語家の団体ですから、トップはモチ面白い人の気が、
ナベちはる様、しますけど、たしかに、団体を率いる
わけですから、別の何かが必要なんでしょうね(^_^;)
by middrinn (2021-11-15 07:14) 

爛漫亭

 丸谷才一『新々百人一首』では、後鳥羽院の「わたつうみの波の花をば染めかねて八十島とほく雲ぞしぐるる」の項に、「時雨と真木」の話も「新じま守」の件も出てきます。この項はそもそも、『岩波講座文学3 言語』(1976年)所収を再録したものです。
 『新々ー』はこのように、色々のところに書いたエッセイ百篇から成っています。読み応えのある、議論を誘う刺激的な本です。
by 爛漫亭 (2021-11-15 10:45) 

middrinn

いつも文献情報を御教示下さって、大変助かりますm(__)m
分厚くなるわけで、たしかに読み応えありそうです(^_^;)
他の歌の解釈も含めて、作者のイメージを先に創ってソレに
解釈を合わせる、研究者からは史実に反する等の理由で否定
されている中世の注を援用する等々のパターン(手口?)が
判ってきました(^_^;) 「新じま守」の歌に関しては、当時
の用例を基にして丸谷の解釈が成り立たないことを批判した
桐原徳重論文も解り易く紹介するなど、井上宗雄・前掲書は
図書館や古本屋で立ち読みされる価値はありますよ(^_^;)
by middrinn (2021-11-15 11:19) 

U3

万葉集の原本は漢字仮名読み文だから、注釈がないとまったく読めないよね。
by U3 (2021-11-15 15:03) 

美美

こんにちは
子供たちは課外活動で地域のために何かするという課題だったようです。たまたま汚れ、水も流れることのない小便小僧が目についたのでしょう。いくつかのグループに分かれての活動の一つで
大人に言われて、ではなかったようです(^^)
by 美美 (2021-11-15 15:45) 

yokomi

人気取りも技量の内...なのでしょうか。真相が知りたいです(^_^;)
by yokomi (2021-11-16 00:56) 

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