210906読んだ本
読書の厄介なところは、常識的な人間であれば気付くような誤読である〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
【読んだ本】
宮元啓一『日本奇僧伝』(東京書籍,1985)所蔵本
前にも引用した件だけど、「(『日本霊異記』上の二八、『三宝絵詞』中、『今昔物語』一一の三、
『本朝神仙伝』三)」に基づいて本書が紹介している役小角(役行者)の説話、ヘンだよね(^_^;)
・・・/さて、こうして役小角にこっぴどくやられた一言主神は、役小角を怨み、
人に憑き、託宣のかたちで、「役小角は謀反の下心があり、天皇(文武天皇)を
倒そうと企んでおる」と讒言した。・・・/天皇はただちに勅令を発し、役小角
を捕える役人を派遣した。しかし、役小角は当代随一の恐るべき験力の持ち主で
ある。とうてい尋常な手段では捕えることができない。そこで捕縛吏たちは、
役小角の母を捕えるという、いささか姑息な、しかしまことに効果的な手段に
訴えた。/これには、さすがの役小角も対抗することができず、母を解き放って
もらうためにみずから縛に就いた。朝廷の沙汰は伊豆への島流しであったが、
役小角は、まるで陸を走るように、海上をすたすたと走って伊豆に赴いたという。
伊豆にあって、役小角は、昼間は沙汰通りおとなしくしていたが、夜になると
空を飛び、富士山に上って修行に励むという日々を送った。/・・・
常識的に考えて「伊豆への島流し」には奈良の都から役人が連行しているはずなのに、「役小角は、
まるで陸を走るように、海上をすたすたと走って伊豆に赴いた」というのは、おかしいよねぇ(^_^;)
中田祝夫(全訳注)『日本霊異記(上)』(講談社学術文庫,1978)の当該件の現代語訳を引く(^^)v
・・・すると、優婆塞[=役小角]は、母を許してもらいたいために、自分から
出て来て捕われた。朝廷はすぐに彼を伊豆の島に流した。/伊豆での優婆塞は、
時には海上に浮かんでいることもあり、そこを走るさまは陸上をかけるようで
あった。・・・
同書の訓み下し文は「・・・即ち之を伊図の嶋に流しき。/時に、身は海上に浮かびて、・・・」と
なってるが、『日本霊異記』の原文は漢文ゆえ句読点が付されてないため「伊図の嶋に流しき時に、
身は海上に浮かびて」という風に宮元啓一(本書の「序」に『日本霊異記』の「典拠」としたのは
「板橋倫行校注、角川文庫」とあるが)は繋げて読んじゃったわけだ(^_^;) だけど、中田祝夫(校注
・訳)『新編日本古典文学全集10 日本霊異記』(小学館,1995)は勿論、小泉道(校注)『新潮日本
古典集成 日本霊異記』(新潮社,1984)、出雲路修(校注)『新日本古典文学大系30 日本霊異記』
(岩波書店,1996)のどれもが同書と同じように切っている(^^) 常識的に考えれば、切るわな(^_^;)
ちなみに、石井良助『刑罰の歴史』(明石書店,1992)に〈流[刑]にも、「三流」が存したことは、
同じ[「天武紀」5年8月壬子の]詔に見えているが、おそらく、遠、中、近の三流のことであろう。
配流地としては、土佐、因幡、伊豆、伊豆島、血鹿島が見えている。〉とあり、「刑事判決の執行」
については瀧川政次郎『日本法制史(上)』(講談社学術文庫,1985)に「流刑及び加役流、移郷は、
太政官が刑部省に移牒して、適宜に配所を定め、配流状を流囚の居る官司に送って、これを配所に
逓送せしめる。」とあるけど、流刑囚の移送・連行を担当した役所が分からん(@_@;) これより後の
時代に設置された令外の官である検非違使庁に(衛府、弾正台、刑部省、京職などの職掌を吸収した
後だと思われるが)「下部 シモベとよむ。盗賊、奸徒などを逮捕し、獄囚を拷問し、罪人を配所に
押送することを掌る。」と和田英松(所功校訂)『新訂 官職要解』(講談社学術文庫,1983)に出て
いるので、どこかの役所が担当してたのは間違いないと思うけど、調べる時間がナシオン主権(^_^;)
本書はなかなか面白い良書で、ちくま学芸文庫に収録されたのも然もありなんという感じだが、西行
について誤記(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2016-06-29 )や誤謬がある上に
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2016-07-01 )、この役小角の説話の解釈でも
おかしなことを書いてる(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-08-25 )(^_^;)
【読んだ本】
宮元啓一『日本奇僧伝』(東京書籍,1985)所蔵本
前にも引用した件だけど、「(『日本霊異記』上の二八、『三宝絵詞』中、『今昔物語』一一の三、
『本朝神仙伝』三)」に基づいて本書が紹介している役小角(役行者)の説話、ヘンだよね(^_^;)
・・・/さて、こうして役小角にこっぴどくやられた一言主神は、役小角を怨み、
人に憑き、託宣のかたちで、「役小角は謀反の下心があり、天皇(文武天皇)を
倒そうと企んでおる」と讒言した。・・・/天皇はただちに勅令を発し、役小角
を捕える役人を派遣した。しかし、役小角は当代随一の恐るべき験力の持ち主で
ある。とうてい尋常な手段では捕えることができない。そこで捕縛吏たちは、
役小角の母を捕えるという、いささか姑息な、しかしまことに効果的な手段に
訴えた。/これには、さすがの役小角も対抗することができず、母を解き放って
もらうためにみずから縛に就いた。朝廷の沙汰は伊豆への島流しであったが、
役小角は、まるで陸を走るように、海上をすたすたと走って伊豆に赴いたという。
伊豆にあって、役小角は、昼間は沙汰通りおとなしくしていたが、夜になると
空を飛び、富士山に上って修行に励むという日々を送った。/・・・
常識的に考えて「伊豆への島流し」には奈良の都から役人が連行しているはずなのに、「役小角は、
まるで陸を走るように、海上をすたすたと走って伊豆に赴いた」というのは、おかしいよねぇ(^_^;)
中田祝夫(全訳注)『日本霊異記(上)』(講談社学術文庫,1978)の当該件の現代語訳を引く(^^)v
・・・すると、優婆塞[=役小角]は、母を許してもらいたいために、自分から
出て来て捕われた。朝廷はすぐに彼を伊豆の島に流した。/伊豆での優婆塞は、
時には海上に浮かんでいることもあり、そこを走るさまは陸上をかけるようで
あった。・・・
同書の訓み下し文は「・・・即ち之を伊図の嶋に流しき。/時に、身は海上に浮かびて、・・・」と
なってるが、『日本霊異記』の原文は漢文ゆえ句読点が付されてないため「伊図の嶋に流しき時に、
身は海上に浮かびて」という風に宮元啓一(本書の「序」に『日本霊異記』の「典拠」としたのは
「板橋倫行校注、角川文庫」とあるが)は繋げて読んじゃったわけだ(^_^;) だけど、中田祝夫(校注
・訳)『新編日本古典文学全集10 日本霊異記』(小学館,1995)は勿論、小泉道(校注)『新潮日本
古典集成 日本霊異記』(新潮社,1984)、出雲路修(校注)『新日本古典文学大系30 日本霊異記』
(岩波書店,1996)のどれもが同書と同じように切っている(^^) 常識的に考えれば、切るわな(^_^;)
ちなみに、石井良助『刑罰の歴史』(明石書店,1992)に〈流[刑]にも、「三流」が存したことは、
同じ[「天武紀」5年8月壬子の]詔に見えているが、おそらく、遠、中、近の三流のことであろう。
配流地としては、土佐、因幡、伊豆、伊豆島、血鹿島が見えている。〉とあり、「刑事判決の執行」
については瀧川政次郎『日本法制史(上)』(講談社学術文庫,1985)に「流刑及び加役流、移郷は、
太政官が刑部省に移牒して、適宜に配所を定め、配流状を流囚の居る官司に送って、これを配所に
逓送せしめる。」とあるけど、流刑囚の移送・連行を担当した役所が分からん(@_@;) これより後の
時代に設置された令外の官である検非違使庁に(衛府、弾正台、刑部省、京職などの職掌を吸収した
後だと思われるが)「下部 シモベとよむ。盗賊、奸徒などを逮捕し、獄囚を拷問し、罪人を配所に
押送することを掌る。」と和田英松(所功校訂)『新訂 官職要解』(講談社学術文庫,1983)に出て
いるので、どこかの役所が担当してたのは間違いないと思うけど、調べる時間がナシオン主権(^_^;)
本書はなかなか面白い良書で、ちくま学芸文庫に収録されたのも然もありなんという感じだが、西行
について誤記(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2016-06-29 )や誤謬がある上に
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2016-07-01 )、この役小角の説話の解釈でも
おかしなことを書いてる(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-08-25 )(^_^;)
一番遠い流罪はやはり、八丈島とか喜界島、隠岐の島かな?
日本じゃないけどナポレオンのセントヘレナも絶望感は凄そう。
by tai-yama (2021-09-07 00:02)
読んでいれば普通に分かる誤読でも、物語となると「何か意味があって、あえてそうしているのでは」と思ってしまいそうです(^^;A)
by ナベちはる (2021-09-07 01:32)
たとえ近くても、脱出不可能なら、
tai-yama様、セントヘレナ並みの
絶望感を感じちゃうのでは(^_^;)
by middrinn (2021-09-07 05:51)
おっしゃる通り、もしかしたら、伏線かもと、
ナベちはる様、深読みしちゃいますね(^_^;)
by middrinn (2021-09-07 05:52)