SSブログ

200511読んだ本

1981年発売のLPレコードは持ってたが、2010年限定生産販売のCD、先日も約2万円で出品された中古品が
すぐに買われてしまったけど、昨日新品のが出品されて98000円だとぉ∑( ̄ロ ̄|||)ニャンですと!?
と「200227読んだ本」に書いた名作アニメのCDが昨日買われちゃった(゚ロ゚;) 10万円効果かな(@_@;)
以前6000円程度で「良い」が出てた本なのに「書込み有」の「可」を54600円で昨日出品した古本屋が
いるけど、10万円で財布の紐が緩むと見込んだぼったくりとしか思えん(ノ ̄皿 ̄)ノナメルナ!┫:・’

【読んだ本】

君塚直隆『肖像画で読み解くイギリス王室の物語』(光文社新書,2010)所蔵本

読了(^o^)丿 前に図書館で借りて読了したのを購入し、今回は付箋を貼りながら再読した次第(^_^;)

中野京子『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』(光文社新書,2008)に刺激されて上梓された
本書だけど、「近現代イギリス政治外交史・ヨーロッパ国際政治史」が専門ゆえ、勉強になった(^^)

第1章の扉絵は「作者不詳『ヘンリ七世』」で、「・・・煮ても焼いても食えないような、老獪そうな
ヘンリの顔・・・」として、中野京子『名画で読み解くイギリス王家12の物語』(光文社新書,2017)
も挿絵で同じ「『イングランド王ヘンリー七世』伝ミケル・シトウ画、1505年」を取り上げ、「肖像
がその抜け目なさを語っているかに見える」と全く同じような印象批評をしている(^_^;) 「しかし
この肖像画には[ハプスブルク家の]マルガレーテとの結婚を真剣に考えていた、ヘンリの気持ちが
秘められていた。その秘密を解く鍵が、彼の首飾りにある。」云々と、本書は書名に恥じぬ読み解き
をしてたよv( ̄∇ ̄)ニヤッ 他方で、中野京子・前掲書は名画の読み解きが薄っぺらいことは先日詳述
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-05-08 )した通りなり( ̄ヘ ̄)y-゚゚゚

ただ、第9章の扉絵は「ルーク・ファイルズ『国王エドワード七世』」で、その作者を次のように説明
している(@_@;)

    ・・・/描いた画家は、十九世紀後半に労働者階級むま悲惨な生活をリアルに描いた、
    風俗画の巨匠ルーク・ファイルズ。『家もなく食べ物もなく』(一八六九年)や
    『救貧院臨時宿泊所の入所希望者たち』(一八七四年)など、題名を聞いただけで
    落ち込んでしまいそうな、下層階級の生活に密着した風俗画を得意とした。/
    そんな画家がなぜ国王陛下を? 実はファイルズは、あまりにもリアルなそのタッチが、
    当時の美術界から受け入れられず、不当に低い評価をされていた。ついに堪えきれ
    なくなり、一八八〇年代からは肖像画家に転身してしまったのである。/・・・

おそらく本書の「主要参考文献」として挙げられてる高橋裕子『イギリス美術』(岩波新書,1998)の
次の記述に依拠したものだろう(@_@;)

    ・・・/だが、版画では好評を博した社会派リアリズムも、油彩画で試みられると
    批評家には概して不評だった。「書物と違って閉じて片づけることができない」
    絵画には、悲惨な主題、醜い現実の断面は不適切だというのがその理由である。
    ファイルズらの作品は、「風俗画」の通常の可能性をこえて、[フォード・マドックス・]
    ブラウンとは違った意味で「現代生活の叙事詩」を描いたものといえるのだが、
    当人たちは不評に耐えかね、八〇年代には肖像画に転向してしまった。・・・

高橋裕子の同書は啓蒙的だけど記述をコンパクトに纏め過ぎてるところもあり、君塚直隆も中野京子も
小生イチオシ( https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-05-03 )の高橋裕子&高橋達史
『ヴィクトリア朝万華鏡』(新潮社,1993)も参照すれば良かったのに(+_+) 『ヴィクトリア万華鏡』
から引くC= (-。- ) フゥー

    ・・・/ところで、ファイルズの《入所希望者たち》は観衆には人気があったが、
    批評家の反応は必ずしも好意的ではなかった。・・・/ファイルズの作品に対する
    批評家の批判は、伝統的な絵画観と十九世紀特有の状況の双方に由来している。
    アクチュアルな主観、ことに下層階級の悲惨な生活などを扱えば、ルネサンス以来の
    芸術論において最も重視されてきた理想美や普遍的価値の表現から遠ざかることになる。
    加えて、この時代には、絵が置かれる場所から見た主題の適・不適という新しい問題が
    生まれていた。つまり、従来のように絵画制作が主として教会や王侯貴族の注文で
    なされるのであれば、作品は買い手の生活の場を離れたところに置かれることが多い
    はずだ。その場合、しかるべき理由があれば「不快」な表現や主題も許されるだろう。
    教会の祭壇画の血なまぐさい殉教場面や、宮殿を飾る死屍累々の戦争画などである。
    ところが、十九世紀には、裕福な市民個人が絵画の主要な買い手になるという変化が
    起こった。美術館という新たな公的パトロンも出現したものの、「現代絵画」の購入者は
    第一に資産家、または彼らと画家の仲立ちをする画商であって、お金持ちの家庭を
    彩ることが、絵画の最大の役割だったのである。とすれば、あまりに悲惨だったり
    残酷だったりする情景がふさわしくないと考えられたのも一理ある。もちろん、
    貧困とか死、あるいは家庭崩壊のような主題がまったく取り上げられなかったわけでは
    ない。が、その場合は感傷的な味つけがなされたり、美化が施されたり、いずれにしても
    生々しい表現は避けられるのが、この時代の常識というものだった。/ところが、
    ファイルズは同時代の悲惨をルポルタージュ風に描いた。一八七〇年代には他に
    同傾向の画家としてフレデリック・ウォーカー、ヒューバート・ハーコマー、
    フランク・ホルらがいて、現在「社会派リアリスト」と呼ばれている。彼らには
    画風だけでなく、経歴の点でも共通性があった。いずれも最初は挿絵画家として
    版画の下絵を制作、その後、油彩画家に転身しているのだ。・・・十四、五世紀に
    発明されて以来、版画は一貫してマイナーな芸術分野と考えられていたから、
    主要分野である壁画や油彩画に要求される「理想美」「品位」「普遍性」等に縛られる
    必要がなかった。安価に大量の複製を作れる版画は、むしろ「際物」であるところに
    意味があり、のちに報道写真が肩代わりするような時事的なテーマが恰好の対象に
    なったのである。・・・[ファイルズら]イラストレイター出身の画家たちは、
    「閉じて片づけることのできる」書物挿絵で培った態度で油彩画の領域に進出し、
    「現代」の悲劇を直截に描いた新しい歴史画を制作しようとしたのである。/・・・

    ・・・/英国の社会派リアリズムは、結局わずかの優れた作品を生んだだけで
    途絶えてしまう。後継者も育たず、ファイルズやハーコマー自身、否定的批評に
    抗しかねて、また、主題の構想、場所の設定、モデルの調達など手間ひまのかかる
    リアリズム絵画の制作にうんざりして、より描きやすく、実入りもよく、受けもよい、
    上流階級の肖像画の制作に転向した(ファイルズは王室御用達となり、死の床の
    ヴィクトリア女王の姿も描いている)。・・・

こーゆー「根本的問題」を背景とした「転身」だったわけだが、本書の上記記述は的確かしら(@_@;)

「・・・イギリス王室の五百年の歴史を、王侯たちの肖像画を読み解きながらたどっていくのが本書
の目的である。」とあるように、イギリス王室の歴史が本書の主題だから望蜀の不満だけどね(^_^;)

本書は巻頭に「イギリス王室系図(抄)」を載せて、ノルマン王朝のウィリアム1世からウィリアム
&ヘンリーの両王子(エリザベス2世の孫)まで繋がってる系図なのに対し、中野京子・前掲書では
「テューダー家系図」「ステュアート家系図」「ハノーヴァー家系図[←今のウィンザー朝も含む]」
の3枚が載ってて、前者も役に立ったけど、後者の方が使えた場面も(^_^;) ともに系図には在位期間
しか記されてないけど、本書の巻末の「イギリス国王一覧表」には「生没年」も記されてて便利(^^)
本書の巻末の「イギリス王室関連年表(主に本文で触れた項目のみ)」は中野京子・前掲書の巻末の
「年表(本書に関連した事項のみ)」より詳しい(^^) イギリス王室の歴史を知るには両書をともに
読むのがいいかと(^^) 本書の歴史記述で気になった点を1つだけ引いておくオホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!

    /エリザベス一世は即位するや早々に、姉[メアリ一世]によって乱された
    宗教政策を是正した。イングランド国教会を再建し、カトリックを再び抑圧
    するようになったのである。・・・

こう記してる本書に対して、中野京子・前掲書は次のような記述である〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

    ・・・/二十五歳で女王となったエリザベスの手には、宗教争いで疲弊した
    貧しい国があった。幸いにも前女王メアリへの反動でエリザベス人気は高く、
    枢密顧問官ウィリアム・セシル(後にはその息子ロバート)をはじめとした
    有能な重臣の支えもあって、最初の関門たる宗教問題はどうにか決着をつける
    ことができた。国教会は基本的にはプロテスタントだが、カトリックの排斥もなし
    という玉虫色の中道策で国内を安定させたのだ。/・・・
タグ:歴史 絵画
コメント(14) 
共通テーマ:

コメント 14

ニッキー

6000円で「良」だった本が「書き込みありの可」で
54600円(°_°)
うわぁ、本の世界って怖いです(*_*)
「家もなく食べ物もなく」をリアルなタッチで描かれると
それはもう見るだけで暗くなる作品としか思えないのですが(ー ー;)
by ニッキー (2020-05-11 19:59) 

middrinn

やたらと高い値を付ける某古本屋でも楽天市場には15000円で出品してますから、
相場を無視した値段の付け方かと(^_^;) それでも観衆には人気だった由(^_^;)
by middrinn (2020-05-11 20:29) 

YURI

昨年だったか、「怖い絵」展というのを上野でやってて、すごい行列でした。中野さんの本を元にした企画かと。私は行列が苦手なので見なかったのですが(^^;

by YURI (2020-05-11 22:37) 

tai-yama

社会派リアリズムが続いたとしても、結局は写真に取って変わられ
たのかも。日本の戦争絵画は錦絵なんですよね。ある意味直接的な
表現を避けていたとも言えたり。
by tai-yama (2020-05-11 23:41) 

ナベちはる

新品で98,000円とはとんでもない価格ですね(((゚д゚; )))
プレミア価格、怖いです…
by ナベちはる (2020-05-12 00:58) 

Rose

ハプスブルク家って、オーストリアを統治し美術品を集めまくったんだよね(スペインもだよね)
で、国立西洋美術館へは観に行ったの?
マリー・アントワネットの肖像は観てみたいと思うけど、もう少し美人だったらと思う(笑)
でも、本のお話の内容は知らないけど、この肖像画の光線と捉え方や物の質感は最高に綺麗だよ
手と花瓶の薔薇はERのヘリテージに似てるけど、改良前の花だったりして
まぁ、ERがある場所と時代に描かれたんだろうね
花瓶の葉はユーカリみたいな感じなんだし、何だろう?
何か書いてあった?
by Rose (2020-05-12 04:29) 

middrinn

「怖い絵」展なら、芸術新潮2017年8月号に〈「怖い絵」展ができる
までの本当にあった怖い話〉という記事があり、その中の座談会で、
YURI様、「怖い絵」展企画者・藤本聡が東京会場として各美術館に
打診するも軒並み断られた、という苦労話を披露してました(^_^;)
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2017-07-26
by middrinn (2020-05-12 08:11) 

middrinn

社会派リアリズムの画家たちは、そうなってたら、
tai-yama様、カメラマンに転身してたり(^_^;)
by middrinn (2020-05-12 08:22) 

middrinn

限定生産販売で新品とはいえ、98000円という値には、
ナベちはる様、誰も買わないと思ってましたが(^_^;)
by middrinn (2020-05-12 08:25) 

middrinn

ハプスブルク家は大ブームでしたね(^_^;)
混雑が嫌いなので、大ブームになった後は、
ほとんど行きませんでした(^_^;) 画家に
よってはアントワネットも美人かも(^_^;)
Rose様、「手と花瓶の薔薇」云々は本書の
『ヘンリ七世』『国王エドワード七世』の
話ではなくアントワネットの話かな(@_@;)
by middrinn (2020-05-12 08:33) 

yokomi

報道写真ならぬ報道油彩画でしたね。草分けはいつも大変ですね(>_<)
by yokomi (2020-05-12 21:00) 

middrinn

( ^o^)ノ◇ 山田く~ん 特製草分けはいつも大変ですね座布団1枚 ♪
yokomi様、それはまさに至言ですねキタヨキタヨヽ(゚∀゚=゚∀゚)ノキチャッタヨ-!!!!!!
by middrinn (2020-05-12 21:03) 

Rose

アントワネットの話だよ
調べもの好きなmiddrinnさんの事だから、あれこれ調べたの?
そんな事、何処にも書いてないよ(笑)
by Rose (2020-05-13 01:43) 

middrinn

本書と関係のない話なので調べませんでした(^o^)丿
by middrinn (2020-05-13 05:24) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。