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240403読んだ本

実作者が自ら偽作に手を染めたり、住民による偽作の誘引になったり力を貸したりする、と(^_^;)

【読んだ本】

目崎徳衛(日本歴史学会編集)『西行』(吉川弘文館人物叢書,1980→1989新装版)所蔵本

森銑三『偉人暦(上)』(中公文庫,1996)の4月2日は一条兼良で、応仁の乱で奈良に疎開していた
一条兼良が弟子の一人だったらしい斎藤妙椿(美濃国守護代)に招かれて美濃へと旅行した時の紀行
『ふぢ河の記』(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2024-02-05 )の美濃から
奈良への帰路の件を読んでてチト笑ってしまった(^_^;) 鶴崎裕雄&福田秀一(校注)『藤河の記』
(福田秀一&岩佐美代子&川添昭二&大曾根章介&久保田淳&鶴崎裕雄[校注]『新日本古典文学
大系51 中世日記紀行集』[岩波書店,1990]所収)から引く(^_^;)

    ・・・/[近江国の]磨針[すりはり]峠[彦根市中山町]を南へ下るとて、
    ・・・左の方には、聳[そび]えたる岩に松一木ある、その下に石塔あり。
    西行法師が塚と言ひ伝へたるとなむ。/・・・

「西行法師が塚」について「不詳。西行(一一一八-九〇)の墳墓は、亡くなった河内弘川寺(大阪
府河南町)にある。」と脚注(^_^;) 笑ったのは西行が「願はくは花のもとにて春死なんその如月の
望月の比[ころ]」と詠んだことを思い出したとして一条兼良が次の歌を本文に記してたから(^_^;)

    いかにして 松の陰には 宿るらん 花のもととか 言ひし言の葉

     なぜ松の木陰に宿る(三九八頁の塚を指す)のだろう、花のもととか歌に詠んだのに。

『ふぢ河の記』の「西行法師が塚」が出てくる件を目崎徳衛は本書で紹介して次のように指摘(^_^;)

    ・・・いまも全国至る所に見られる西行塚の早い例として、注目を引く。戦国時代に、
    乱世にもかかわらず活溌となった連歌師の遊歴は、このような遺跡の発見、あるいは
    事によると遺跡作りを促進した。・・・

蛇足だけど、西行は「全国至る所」を旅したわけではない(^_^;) 西行が行ってもいないところにも
「塚」=墓があるわけで、伝説・伝承もまた同様である(^_^;) 本書から引く(^_^;)

    ・・・/『今物語』によれば、陸奥に修行していた西行は、『千載集』が勅撰された
    と聞き、自作の首尾を知りたくて急いで都へ上ったが、道中で行き逢った知人から
    自信作の「鴫立沢」の歌が入らなかったと聞き、「さては上りて何にかはせん」とて
    陸奥へ引き返したいう。・・・

    ・・・いまも全国各地にのこる「西行戻り」「西行返し」の遺跡らしいもの・・・

『今物語』の説話が伝播・拡散した「全国各地」に、ここが「西行戻り」「西行返し」の地である、
とする「言ひ伝へ」があるんだろうね(^_^;) 元ネタの『今物語』の説話が忘れられて「西行戻り」
「西行返し」といった言葉だけが残っていると無知な住民が西行とは無関係な昔話・民話を付会して
新たな地名伝説・伝承誕生(^_^;) なお、「修行」とは「ここのように旅の意に用いることも多い。
・・・」と三木紀人(全訳注)『今物語』(講談社学術文庫,1998)の語釈が例を挙げて説明(^_^;)
コメント(4) 
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コメント 4

tai-yama

「西行戻し」の最北端は松島みたいで・・・・
弘法大師伝説よりはましかな?。なお、埼玉には修行で来た(笑)。
by tai-yama (2024-04-03 23:12) 

middrinn

『今物語』の説話を逸脱していなければ、平泉と京の間になりますものね(^_^;)
『今物語』説話の「修行」を誤読し『後鳥羽院御口伝』を知らぬ埼玉住民(^_^;)
by middrinn (2024-04-04 05:22) 

df233285

新興宗教の教祖著作モノの世界では、そのケースはアルアルですね。
教祖著作本しか、仮に権威が無いとして。教祖がゴーストライター
を多数雇って、やたらに自身著と信者に思わせる為の、「関連
シリーズ著作本」を、膨大なコンテンツ量、生きている間に残そう
と図った場合に、この記事の冒頭の類の行為をする可能性が有ると私
は思います。
by df233285 (2024-04-04 11:46) 

middrinn

某宗教団体指導者のチョー有名な代表作にも実はゴーストライターがいるとして
その実名までも当該宗教団体ウォッチャーのジャーナリストが雑誌連載で書いて
ましたし、その指導者の名前を〝代作〟と記していることもありました(^_^;)
by middrinn (2024-04-04 15:06) 

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