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240322読んだ本

久保田早紀「異邦人─シルクロードのテーマ─」は詞もメロディーもいい(〃'∇'〃) 何が吃驚って
wikiの「久米小百合」の項に「国文学者の久保田淳は叔父。」と書かれていたことヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ

【読んだ本】

駒田信二『漢詩名句 はなしの話』(文春文庫,1982)所蔵本

今回(前回⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2024-03-14 )は王翰「涼州詞」
二首のうちの其一で、「古来征戦幾人か回る」(⌒~⌒) 本書は「明・清の文人たちには、この詩を
唐の七言絶句の絶唱として挙げている人が多い。」と〆てて、たしかに名作と素人も得心(〃'∇'〃)


    葡萄美酒夜光杯 葡萄の美酒夜光の杯
    欲飮琵琶馬上催 飲まんと欲すれば琵琶馬上に催[うなが/もよお]す
    醉臥沙場君莫笑 酔って沙場に臥す君笑う莫[なか]れ
    古來征戰幾人囘 古来征戦幾人か回[かえ]る

    ・・・/盛唐時代の貴族や士大夫階級には異国趣味がさかんであった。この詩の第一句
    (起句)と第二句(承句)とには、いわばたっぷりとそれが盛られている。/葡萄の
    美酒を、夜光の杯につぐ。/いざ飲もうとすると、誰かが馬上で琵琶をかき鳴らした
    [←「・・・当時は胡人が馬上でかき鳴らした簡単な楽器だったようである。」由]。
    さあ飲みたまえとうながすかのように──。/この詩は起・承・転・結のお手本のような、
    みごとな手並みを見せる。異国情緒が第三句(転句)であざやかに一転する。そして
    第四句(結句)で、きびしく、しかも余韻嫋嫋と一篇を完結させるのである。/葡萄の
    美酒に酔って沙場(戦場の砂漠)に寝てしまったが、笑わないでくれ。/むかしから、
    戦争に出たものはめったに生きて帰れはしないのだ。/・・・

「夜光杯」に「琵琶」、そして「・・・ぶどうもぶどう酒の醸造法も西域から伝わったもので、唐代
では高級な酒・・・」(前野直彬[注解]『唐詩選 (下)』[岩波文庫,1963])ということから、
宇野直人&江原正士『漢詩を読む 2 謝霊運から李白、杜甫へ』(平凡社,2010)は「たぶん下級兵士
の一人一人にまでは回らなかったんじゃないかな。また夜光杯も・・・前線の兵士たちが実際に使っ
ていたかどうか疑問です。」と指摘も、そもそも同書によると王翰は「・・・西域に行ったことのな
い官僚詩人・・・」らしいし、それでも「・・・辺塞詩のお手本とされる名作・・・」(同書)(^^)

    ・・・/七絶的な辺塞詩の特色が、集約的に表われている。葡萄の美酒、夜光の杯、
    琵琶、沙場、さらに、それらを統一する「涼州詞」という楽府題。──いずれも、
    西北の異域を連想させる詩語であり、中国の伝統文化との異質性を含むことによって、
    辺塞詩・塞外詩にふさわしい強いエキゾチシズムを生んでいる。/こうした素材と
    背景のなかで、やがて戦死すべき運命におかれた兵士の心情が、深い絶望と瞬間的な
    歓楽との対比をつうじて、鮮やかに描きだされる。とくに、最終句「古来征戦幾人回
    ──古来征戦、幾人か回る」は、遠征の悲惨さと望郷の哀切さを包みこんで、限り
    なく痛切である。「葡萄の美酒、夜光の杯」という華やかな第一句とひびきあうこと
    によって、いっそう痛切である。明の文芸批評家王世貞は、この詩を「無瑕之璧──
    瑕[きず]なきの璧[たま]」と評した(『芸苑巵言』巻四)。/・・・

松浦友久『中国詩選 三 唐詩』(社会思想社現代教養文庫,1972)から引いたけど、松浦友久の批評
はいつも素晴らしい(⌒~⌒) 松浦友久『唐詩の旅 黄河篇』(社会思想社現代教養文庫,1980)では
次の如く評してて、かぶってないところも凄い(⌒~⌒)

    ・・・/無限に広がるゴビ[=「沙場」]の夜の闇に、ひときわ白く浮き出す夜光の杯、
    そこに注[つ]がれた赤い葡萄酒、軍馬、琵琶、闇を流れる異国ふうのリズム。視覚的な
    ものと聴覚的なものが鮮やかに重なって、イメージの構成そのものが、再読三読に堪える
    厚みをもっている。とりわけ結びの一句「古来、征戦、幾人か回る」には、厳然たる事実
    の指摘から生まれる強い説得力がある。それはただちに、王昌齢(出塞)の「万里長征人
    未還──万里長征して人いまだ還[かえ]らず」(二八三ページ)を思い起こさせよう。
    戦争なるものの本質が、美しい七言の韻律のなかに集約され、それゆえにいっそう冷厳な
    事実として心に沁みるのである。・・・

なお、駒田信二が〈ある雑誌に「唐代の詩について」という解説文を書いた〉時にも〈「夜光の杯」
は夜も光る杯で、ガラス製の器〉と記したら、「ガラス製では絶対にない。おれは現物を持っている
んだ。ガラスじゃないんだ」という葉書が雑誌社経由で届いたので、藤堂明保の『学研漢和大辞典』
を引いて「返事」を出した話が駒田信二『漢字読み書きばなし』(文春文庫,1994)に出てる(^_^;)
タグ:中国 古典
コメント(4) 
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コメント 4

美美

異邦人、子供たちが~♪
懐かしい歌ですね。今どきの歌は覚えられないんですが
昔の歌は覚えています(^^;
by 美美 (2024-03-22 22:55) 

middrinn

歌詞の一部に岑参「碩中作」に通じるものが(^^)
作詞というより作詩で、ドラマのようです(^_^;)
by middrinn (2024-03-23 05:19) 

tai-yama

冬の砂漠だとかなり気温も低いので酔って寝てしまうと
尾崎豊状態に・・・。今の時代ならガラスの杯ではなく
ペットボトルだったり(笑)。
by tai-yama (2024-03-23 19:23) 

middrinn

「ペットボトル」が「西北の異域を連想させ」ますかね(^_^;)
by middrinn (2024-03-24 04:31) 

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