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220102読んだ本【バカチン歴史家③】 [バカチン歴史家]

捏造や間違いをどれだけ見付けられるか読み手の教養と知識を試す本ヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!!

【読んだ本(バカチン歴史家③)】

角田文衞『承香殿の女御 復原された源氏物語の世界』(中公新書,1963)所蔵本

本書49頁が紹介している藤原顕光に関するエピソード、読んでて切なくなってくるよ(´;ω;`)ウッ…

    ・・・/長徳二年か三年の晩秋のことと思われるが、公任は桂殿で静養中の顕光夫妻を
    訪れたことがあった。顕光が乙訓郡の桂に荘園を領し、そこに小さな山荘をもっていた
    ものとみえる。顕光は庶民に稲刈りをさせ、[顕光の妻の]盛子内親王がちょうど
    それを眺めているときであった。公任は早速これを歌に詠んだり、また夫妻と歓談したり
    したのち、顕光の乗物に同車して京にもどったことであった。のちに顕光を襲った
    さまざまの悲運を思えば、このころが顕光にとってもっともたのしいときであったろう。
    ・・・

藤原顕光と藤原公任が「歓談」エッ(゚Д゚≡゚Д゚)マジ? チョー意外な感じがするのは小生だけかな(^_^;)
藤原顕光は大臣なのに政務や儀式を先例通りに執り行なえず失態ばかりで藤原実資や藤原道長からも
再三罵倒されており、藤原公任は儀式書『北山抄』を著したほどの人物ゆえ気が合わなさそう(^_^;)

この典拠を知りたくて付された注8を見ると「『前大納言公任卿集』」とあるだけ(155頁)(@_@;)
伊井春樹&津本信博&新藤協三『私家集全釈叢書7 公任集全釈』(風間書房,1989)から関連する歌を
訳と一緒に引く( ̄ヘ ̄)y-゚゚゚

     八月廿八日、桂殿に右の大殿の北の方などおはして、稲刈らせて見たまひけるに

    ちよをへて刈りつむ宿の稲なればおほくの年をあたる君かな

      八月二十八日、桂殿に右大臣の北の方などがおいでになり、稲を刈らせてそれを
      御覧になった折に、

     千年もの間刈り取っては積み続けてきたこの家の稲だから、それを見るあなたは、
     これからも多くの歳月を過ごすことですね。あなたの寿命は限りなく長いものですよ。

    山里の紅葉はときもわかぬかな秋のなかばに色深く見ゆ

     山里の紅葉は時節をわきまえないものであるよ。まだ秋の半ばだというのに、
     もうすっかり色濃く見えることです。

     とやいはましと思ひて、ふところ紙に書きてもたせたまへるを、大殿の御ひとつ車にて、
     おとしたまへりければ、帰りたまひて、またのあしたに、かくやいはましとなむ
     おぼえしとて、きこえたまへりける

    山里にまだき散りけることのはを宿のあるじやかきとどめけむ

      とでも詠もうかと思って、懐紙に書いてお持ちになっていたのだが、大臣と同車
      なさって、その懐紙を落してしまわれたので、お帰りになって翌朝、このような
      歌を詠もうかと思っていましたと言って、一首つけ加えて、申し上げなさった歌、

     山里で差し上げる前に早々と落してしまった歌を、宿の主のあなたは掻き集めて、
     手許にとどめておいてくれたのでしょうか。     
 
長徳2年(996年)7月20日に道長の左大臣と同時に顕光は右大臣になったから「長徳二年か三年」には
たしかに顕光は「右大臣」で公任の上記歌の詞書の「右の大殿」に当てはまるように見えるが、この
「右の大殿」とは〈道長。「右」は「左」の誤りか。〉と同書の語釈にあるオホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)
要するに、公任が桂の山荘に訪ねたのは道長であって顕光じゃねーよヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!!
角田文衞は例によって「顕光にとってもっともたのしいとき」を捏造してるオホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)

後藤祥子(校注)『公任集』(犬養廉&後藤祥子&平野由紀子[校注]『新日本古典文学大系28 平安
私家集』[岩波書店,1994]所収)も〈諸本「右」とするが、道長は長徳二年(九九六)七月二十日、
右大臣より左に転じている。誤写か。〉と脚注に記し、それに小町谷照彦『王朝の歌人7 藤原公任』
(集英社,1985)も「八月二十八日、道長は倫子とともに桂の山荘におもむき、公任も同行して和歌を
詠んだ。」云々として上記の歌を紹介してるv( ̄∇ ̄)ニヤッ 詞書の「右」は「左」の「誤り」「誤写」
とする根拠として諸書が挙げているのは、道長の日記『御堂関白記』と実資の日記『小右記』(^o^)丿
倉本一宏(全現代語訳)『藤原道長「御堂関白記」(下)』(講談社学術文庫,2009)から長和4年
(1015年)8月28日条を引くオホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!

     二十八日、乙巳。 桂に行く

    桂の山荘に到った。女方[源倫子]と共に行った。中宮大夫[藤原道綱]・
    四条大納言(藤原公任)・権大納言(藤原頼通)・源中納言[源俊賢]・
    左衛門督[藤原教通]・権中納言(藤原頼宗)・新中納言(源経房)・
    宰相中将(藤原兼隆)・左大弁[源道方]・三位中将(藤原能信)・
    藤宰相(藤原公信)・右大弁[藤原朝経]、殿上人十余人が、一緒に来た。
    夜に入って、還った。

倉本一宏編『現代語訳 小右記7 後一条天皇即位』(吉川弘文館,2018)136頁から長和4年(1015年)
8月28日条と同29日条を引くオホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)

     二十八日、乙巳。 道長、源倫子と桂山荘に遊ぶ/上野勅旨御馬、牽進せず

    「今日、左相国は北方(源倫子)を引率して、桂山荘に向かわれます。
    卿相や殿上人は、首を挙げて追従します」と云うことだ。資平朝臣は、
    布衣を着し、馬に騎って前駆を勤めた。・・・

     二十九日、丙午。

    資平が云ったことには、「昨日、左府は北方を随身し〈車二両。〉、桂山荘に
    向かわれました。大納言道綱・頼通・公任、中納言俊賢・(藤原)教通・(藤原)
    頼宗・経房、参議道方、三位中将能信、参議(藤原)公信・(藤原)朝経が
    追従しました。殿上人も、同じく追従しました。殿上人以上は和歌を詠みました」と。    

角田文衞は叙述の典拠に両日記を再三挙げてるのに両条を見落すなんてありえぬから故意か(¬。¬ )
故意ではなく過失によるものなら、角田文衞は歴史学の研究者として無能だろオホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!

なお、桂の山荘の「小さな」という形容は、根拠が無いし、「顕光にとってもっともたのしいとき」
の印象を強くするための詐術かと(^_^;) 倉本一宏(全現代語訳)『藤原道長「御堂関白記」(中)』
(講談社学術文庫,2009)の長和2年(1013年)10月13日条に「二条第に到って、造作すべき有様を、
(菅野)文信と(伊香)豊高に指示した。すぐに桂の山荘に行った。造営すべき有様を、(源)雅通
朝臣に指示した。・・・」とあり、道長は力を入れている感じだし、前掲『藤原道長「御堂関白記」
(下)』の長和4年(1015年)8月22日条の「桂の山荘に到った。夜に入って、還った。・・・」を経、
その6日後の長和4年(1015年)8月28日に上記の如く「殿上人十余人」に披露したぐらいなんだから、
「小さな」も「顕光にとってもっともたのしいとき」ほどではないけど〝小さな〟捏造じゃん(^_^;)
その一ヶ月後の長和4年(1015年)9月29日条にも「雨が降った。桂の山荘に行った。春宮大夫[藤原
斉信]・四条大納言[藤原公任]・源中納言[源俊賢]が来て同行した。他の公卿も、何人かいた。
夜に入って、還って来た。」(同書)とあるので道長は藤原斉信にもぜひ見せたかったのかも(^_^;)

[追記230722]

公任の歌が道長の山荘を訪ねた際の作であるとする解釈を補強する証拠が『定頼集』にv( ̄∇ ̄)ニヤッ

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2023-07-22

タグ:歴史 伝記 和歌
コメント(8) 
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コメント 8

tai-yama

顕光さんでネタを書こうとしたけど資料がないので、道長さんを
使ったのかも・・・・。某、戦国の前田慶次さんのほとんどの逸話は
前田利家さんと言う。
by tai-yama (2022-01-02 22:23) 

ナベちはる

複数回同じ出典を出しているなら隅まで読んでいるはずなので、故意的に条を省いている可能性が非常に高いですよね…なぜでしょう…
by ナベちはる (2022-01-03 00:30) 

ネオ・アッキー

明けましておめでとうございます。
佳いお正月をお迎えのことと思います。
本年も、何卒よろしくお願い致します。
by ネオ・アッキー (2022-01-03 04:11) 

middrinn

中公新書として刊行するにはそれなりに原稿も、
tai-yama様、分量が必要でしょうしね(^_^;)
by middrinn (2022-01-03 06:20) 

middrinn

ですよねぇ(^_^;) 両日記とも通読してそうなのに、
ナベちはる様、マジで不思議に思いましたよ(^_^;)
by middrinn (2022-01-03 06:35) 

middrinn

明けましておめでとうございます(^^) 今年も宜しくお願い申し上げますm(__)m
ネオ・アッキー様にとって今年が昨年以上に素敵な一年になりますように(^o^)丿
by middrinn (2022-01-03 06:40) 

Cazz

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします!
by Cazz (2022-01-03 11:11) 

middrinn

明けましておめでとうございます(^o^)丿
今年も宜しくお願い申し上げますm(__)m
可愛いゴン様&ハナ様にも宜しく(^o^)丿
by middrinn (2022-01-03 11:27) 

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