読書の厄介なところは、関連する本も次々と読み始めてしまうことである〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

【読んだ本】

戸板康二『あの人この人 昭和人物誌』(文春文庫,1996)所蔵本

続けて、「川口松太郎の人情」を読んだが、「濃い人情味があ」って「魅力」的な人物と思えてくる
一篇(^^) 第一回直木賞を受賞した川口松太郎の(「風流深川唄」と「明治一代女」も収録している)
『鶴八鶴次郎』(中公文庫,1979)は、高校か大学の頃に買って、いい作品だなぁと思ったことだけは
憶えているが、それ以来一度も読んでないので、この機会に再読してみようかという気に(〃'∇'〃)

    ・・・/川口さんはもうひとつ、パーティーでの挨拶がじつに上手であった。
    頭の廻転の早さもよくわかったが、祝賀会だの婚礼の披露宴だので、マイクの前に
    立つと、その席の雰囲気、主賓あるいは新郎新婦の人柄などをよく見て当意即妙の
    挨拶をした。/演劇人や映画人が多く出席してテーブルについているような場合、
    当然、川口さんはメーン・テーブルにすわるのだが、婚礼の時にも、かならず
    指名されて立ち上る。/私は一度それを聞いたが、「きょう結ばれた新郎は、
    この席にいる森岩雄さん(東宝の重役)のような男性になって下さい。そして
    新婦は(とひと息入れて)私の隣にいる愛子のような女性になって下さい」
    というのであった。/もちろん、みんなドッと笑うが、ノロケでも何でもなく、
    川口さんは愛妻である三益愛子を、理想的な女として見ていたのである。/・・・

「ひと息入れ」るのが絶妙(^^) 私を例に挙げるかも!?と一瞬ドキドキした女性もいたりして(^_^;)

川口松太郎は戸板康二と同じ久保田万太郎門下でも最古参だし、戸板康二の直木賞受賞時の選考委員
であり、その「銓衡の時」の「発言」を紹介しているけど、同時受賞が司馬遼太郎なので大村彦次郎
『時代小説盛衰史(下)』(ちくま文庫,2012)が選考会の審議経過を詳述してて、川口松太郎の戸板
康二作品に対しての発言内容は異なっているが、ニュアンスの違いと解せなくもない(@_@;) だが、
本書の次の記述はどうなんだろう(@_@;)

    ・・・/川口さんは万太郎文学に心酔して、弟子にしてもらいたく訪ねた時、初対面で、
    予想していた繊細なやさ男とはまるでちがうイメージで驚いたそうだが、その日、
    天ぷらそばを御馳走になり、二度目の訪問の時、浅草の草津(料理屋)の隣の共遊軒で、
    一緒に球を突いたという。/・・・
    
「弟子にしてもらいたく訪ねた時、初対面」と戸板康二は記してるが、大村彦次郎『時代小説盛衰史
(上)』(ちくま文庫,2012)を披くと、川口松太郎が深川森下町の講釈師・悟道軒円玉の許へ通って
講談速記の手伝いをしてた頃の話として次のように描かれている(@_@;)

    ・・・円玉は口やかましい老人だったが、江戸の知識や漢籍の素養があったから、
    身近にいて学ぶことが多かった。また円玉の家には、彼の博識を乞うて、訪問客が
    絶えず、とくに新聞各社の芸能欄担当の記者が出入りした。ときに岡村柿紅、岡鬼太郎、
    久保田万太郎といった劇作家も顔を見せた。川口は書生よろしく円玉のうしろにきちんと
    坐って、彼らの話す片言隻句も聞き洩らすまい、と耳を傾けた。/とくに十歳年上の
    久保田万太郎が訪ねて来たときには緊張した。万太郎が小説「今戸橋」を書いて以来、
    同じ土地の先輩として早くから憧れ、駒形の久保田家の前をウロウロ歩いたりしたこと
    もあった。久保田の帰りがけに円玉が、「この男は、あなたの小説ばかり読んでいるん
    ですよ」と言って、川口を紹介した。それが縁で、川口は浅草三筋町に引っ越した
    久保田家を訪れるようになり、まもなく弟子入りまでさせて貰った。その頃、久保田は
    名作「末枯[うらがれ]」を発表、三田系の新鋭作家として注目されていたが、まだ
    文筆家として独立するまでの暮らしにはなっていなかった。袋物商を営む父親に寄食
    していた。久保田の父親勘五郎は息子に文学上の弟子がいる、と聞いて、驚いた。
    「うちの万太郎に弟子が出来たそうだ。世の中には、下には下があるもんだ」と、
    あきれたように言った。/・・・

やはり大村彦次郎の『時代小説盛衰史』は面白いなぁ(〃'∇'〃) また読みたくなっちゃうなぁ(^_^;)

・「江戸川乱歩の好奇心」は御愛想と思ってたところ「翌日」「速達」なのが〈ちょっといい〉(^^)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-01-07

・「徳川夢声の話術」は古川ロッパが夢声の声帯模写をしてラジオ聴取者が気付かなかった話(゚ロ゚;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-01-11

・「有吉佐和子の笑い声」は彼女の推理小説の書評を頼まれるも「なぜこんなに下手なのだろう」(゚ロ゚;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-01-18

・「菊田一夫の博愛」は新聞社から公職追放についての情報が伝えられ菊田一夫の名前もあった(゚ロ゚;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-01-20

・「芥川比呂志の酒席」は初版本「羅生門」の末行が「下人の行方は、誰も知らない」に非ずと(゚ロ゚;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-01-24

・「小泉喜美子の博識」では歌舞伎にも詳しい推理小説家の才気煥発ぶりも巧みに描かれる(〃'∇'〃)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-01-29

・「三島由紀夫の哄笑」では戸板康二による解説の「これは三島氏の若書きであるが」に誤植( ̄◇ ̄;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-02-03

・戸板康二の「ちょっといい話」シリーズ4冊から〈真・ちょっといい話〉を選りすぐってみた(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-12-27