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210104買った本&読んだ本

増刷されなかった(っぽい)初版の古本をネットで購入する際に、特に気を付けていることがあって、
それは正誤表があるかないか、そして付いてるかどうかのチェックなり〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

【買った本&読んだ本】

川村晃生(校注)『和泉古典叢書5 後拾遺和歌集』(和泉書院,1991)

Amazon出品者「古書よかばい堂(全古書連加盟店)」に2000(1800+送料等500-ギフト券300)円で
1日注文し4日届く(^^) コンディション等は「中古品 - 良い - 1991年3月初版。函付。正誤表付き。
ページ内は概ね良好。※注!ユーズド品につき万全ではございません。わずかな書込みなどの軽微の
ダメージについて、稀に見落としや記載漏れがある場合がございます。ご了承の上お求め下さい。」
という説明で、ざっと見たところ、巻末の「補注」の歌番号77の「訪れた」という文字を鉛筆で丸く
囲んだのがあった程度で、全くの問題ナシオン主権ウラー!(^o^)丿 梱包はプチプチ等もせず、そのまま
ビニール袋に入れられて発送されてたが、「なにわのブラックダイヤモンド」こと橋本梨菜のように
函がメチャ焼けちゃってたから、許容範囲かな(^_^;) 500円も取りながら!と驚かれちゃうかもしれ
ないけど、正確には「配送料・手数料」だし、追跡可能な「ゆうパケット」だった点も好印象(^_^;)

さて、「正誤表」だが、「『後拾遺和歌集』「作者略伝」補遺(四一一頁上段)」が前の見返しに、
「『後拾遺和歌集』正誤表」が後の見返しに、それぞれ(元から?)綴じ込まれていたよ( ̄◇ ̄;)

本書は巻末に「付録」として、「後拾遺和歌抄目録序」(注釈と口訳もある)、源経信による論難書
『難後拾遺』、顕昭による注釈『後拾遺抄註』、読み応えある「補注」ヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪
「作者略伝」「詞書人名索引」「和歌初句索引」もモチ付いているよん〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

『後拾遺和歌集』の注釈書は、これで手元に4冊目、てゆーか、実質的には3冊揃ったことにv( ̄∇ ̄)

橋本梨菜の名前も出たし、本書から能因法師の歌を詞書と頭注に載る歌の大意とともに引く(⌒~⌒)

      正月ばかりにつのくににはべりけるころ、人のもとにいひつかはしける

    こころあらむ人にみせばやつのくにのなにはわたりのはるのけしきを

     情趣を知るあなたになら見せたいものよ、この津の国難波の春の光景を。

手元の藤本一恵(全訳注)『後拾遺和歌集(一)』(講談社学術文庫,1983)の同歌の〔参考〕欄は、
「心あらむ人に見せばや」という表現は『大江嘉言集』に入っている「心あらむ人に見せばや朝露に
ぬれてはまさるなでしこの花」が「初出である」とした上で、次のように論じていた(⌒~⌒)ニコニコ

    ・・・能因が[藤原]長能[←『蜻蛉日記』作者の兄弟]に弟子入りする契機は、
    能因がかねて認めていたらしい[大江]嘉言の「山深みおちてつもれるもみちばの
    かわける上にしぐれ降るなり」[←『詞花和歌集』入集歌]を範歌として長能が
    示したに依る(『袋草紙』「雑談」)という[←ただ、この口伝に『袋草紙』の著者
    藤原清輔は疑問を呈す]。能因は畏友、歌の先達として嘉言を目[もく]しており、
    嘉言の「心あらむ人に見せばや」の句が気に入って、自歌に借用したのかとも
    おもわれる。嘉言は対馬守として赴任の途次、「命あらばいまかへりこむ津の国の
    なには堀江の葦のうら葉に」[←『後拾遺和歌集』入集歌]と能因に贈っている
    [同歌への返歌が家集『能因集』にあり、対馬で客死した大江嘉言を哀悼する歌も
    能因は詠んでる]。この[歌番号]43番[の「心あらむ」の歌]は、これら一連の
    ことから、[詞書の]「人のもとに」とは、大江嘉言ではないかと推察される。
    相手の秀句を堂々と自歌に詠みこんで贈るということも、相許すことのあかしに
    なるのではなかろうか。/
    
先日コレを読んだ時、大変興味深かったのだが、本書の同歌の「補注」は五つもあるヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ

詞書の「人のもとに」に付された本書の頭注一は「公任か」と記し、その補注三は次の通り( ̄◇ ̄;)

    能因集に、「秋、人のもとへいひやる/ひたぶるに山田もる身となりぬれば
    我のみ人をおどろかすかな」の一首があり、この「人」は詞花集によって
    藤原公任とされるが、家集内における詞書の類同性によって、ここも公任かと
    言う(久保田淳氏『王朝秀歌選』、尚学図書、昭57)。
    
久保田淳ゆえ間違いなさそうだが、目崎徳衛「能因の伝における二、三の問題」同『平安文化史論』
(桜楓社,1968)所収の指摘が気になる(@_@;) 曰く、能因法師は「古曾部入道」と呼ばれたけど、
「私が[摂津国の]古曾部と能因との関係に疑問をさしはさむのは、古曾部で詠まれたという詞書を
附して勅撰集に収められた彼の歌が、ことごとく家集[『能因集』]では別個の詞書で記されている
からである。」(ただ、古来から牧馬の盛んな古曾部で馬の飼養・交易に携わったと仮説)として、
『後拾遺和歌集』の歌番号167の歌の詞書にある「古曾部」は正しくないことを論証してる( ̄◇ ̄;)
『詞花和歌集』の当該歌の詞書も工藤重矩(校注)『詞花和歌集』(岩波文庫,2020)だと「津の国に
古曾部といふ所に籠りゐて、前大納言公任のもとへいひつかはしける」なのに、『能因集』の詞書は
「秋、人のもとへいひやる」で(目崎は「・・・別個の資料から採ったものと思われるが、この場合
に古曾部というのは当っているであろう。」)、勅撰集たる事を以て無条件に信じるのもね(@_@;)

他にも藤本一恵・前掲書には無い指摘が本書の補注にはあって情報が盛り沢山なんだけど、頭注欄に
この歌は「後代に影響」と記し、それに付された補注五を引いておこう〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

    「心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮」(新古今、秋上、西行)
    に代表される「心なき身」の把握の方法の遠因となり、また「津の国の難波の春は
    夢なれや蘆の枯葉に風わたるなり」(新古今、冬、西行)の本歌ともなった。なお
    この歌前後に顕著に認められる難波という風土の発見は、後拾遺歌人による面が多い
    (→渡辺輝道氏「名所歌枕からみた後拾遺」(高知大国文、11号)[)]。
 
深沢眞二&深沢了子編『芭蕉・蕪村 春夏秋冬を詠む 秋冬編』(三弥井古典文庫,2016)は松尾芭蕉の
辞世吟「旅に病で夢は枯野をかけ廻る」(下五は「かけめぐる」ではなく「かけまわる」の可能性大
と深沢眞二は注す)は西行「津の国の難波の春は夢なれや蘆の枯葉に風わたるなり」が念頭にあり
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-03-10 )、西行の同歌は能因法師「心
あらむ」と『古今和歌集』の紀貫之「津の国のなにはの葦のめもはるにしげきわが恋人しるらめや」
を踏まえてると指摘(⌒~⌒) 芭蕉のは更に「後代に影響」してそうだから、能因法師の凄いね(゚o゚;)

手元の久保田淳&平田喜信(校注)『新日本古典文学大系8 後拾遺和歌集』(岩波書店,1994)だと、
前述の大江嘉言の「心あらむ」の歌を引く以外には、藤本一恵のや川村晃生の本書に出ている指摘や
情報は無いけど、次の「参考事項」は藤本一恵のにも川村晃生の本書にも載ってなかった(〃'∇'〃)

    ▽[鴨長明の]無名抄ではこの作を「限りなく遠白くなどはあらねど、優深く
    たをやかなり。例へば、能書のかける仮名のし文字のごとし」と賞讃する。

さて、さて、さ~て! 最後は久保田淳&平田喜信(校注)『後拾遺和歌集』(岩波文庫,2019)だが、
再三指摘してきたように、この「参考事項」は削除されてる(ノ`m´)ノ ~┻┻ (/o\) ミドリン ヤメテー!!

朝日朝刊の〈1行目に「光秀ハ鳥羽ニヒカエタリ」とある〉、「ヒカヘ」を「ヒカヱ」と書いてたの?

[追記210105]

いやぁ~手元にある犬養廉&後藤祥子&平野由紀子(校注)『新日本古典文学大系28 平安私家集』
(岩波書店,1994)に『能因集』が収録されていることをすっかり失念(^_^;) 「ひたぶるに」の歌の
詞書の「秋、人のもとへいひやる」の「人」の脚注に〈底本傍注「公任」は、少なくとも詞花集撰進
以前から存したらしい(清水文雄)。〉とありましたm(__)m ただ、この歌は「正月ばかりに、津の国
にありて、人のもとにいひやる」という詞書の「心あらむ」の歌とは離れた位置にあるけど( ̄◇ ̄;)
タグ:和歌
コメント(8) 
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コメント 8

ニッキー

確かにmiddrinnさんの買われる本は
正誤表がある方が断然良いですもんねぇ=(^.^)=
追跡可能な配送方法を選んでくれるとは
ポイント高い店ですねぇ( ^ω^ )
by ニッキー (2021-01-04 21:09) 

middrinn

ゆうメールで追跡とか出来ない方法を
安上がりだからと選択されると(+_+)
by middrinn (2021-01-04 21:25) 

yokomi

一つの歌に補注が五つもあるとは....。全体でいくつあるのでしょうか(^_^;)
by yokomi (2021-01-04 22:06) 

tai-yama

昔は正月=春なので、
「こころあらむ人にみせば箱根駅伝の観客の景色を(そしてコロナ)」
と今風に詠んでみたり。
by tai-yama (2021-01-04 22:27) 

middrinn

流石に数えられません(^_^;) 文献名
を挙げるだけの補注もありましたけど、
yokomi様、読み応えある補注も(^^)
by middrinn (2021-01-05 05:47) 

middrinn

字余りじゃないですか(^_^;)
tai-yama様、「心あらむ人」
は視たくないでしょう(^_^;)
by middrinn (2021-01-05 05:49) 

そら

「古書よかばい堂」!
名前が気に入った(^^)
やっぱり中古品は買った状態のまま全て揃っていた方が良いですよね
私もなんでもかんでも箱やビニール袋など結束紐までとってあります(^^;
by そら (2021-01-05 06:09) 

middrinn

好感度高い店名ですよね(^^) 福岡とすぐ判るし(^_^;)
引き取ってもらう時に、それらはあると便利ですね(^^)
by middrinn (2021-01-05 06:14) 

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