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230923読んだ本【承前】

涼しくなったので寝床での読書を再開しようと、「なにから読むか、バルザック」で推奨されている
オノレ・ド・バルザック(小西茂也訳)『暗黒事件』(新潮文庫,1953)をチョイスし読み始めるも
「圓廣場」とか漢字がチト古すぎて頭にスッと入ってこない(^_^;) 小林信彦は上記論稿(同『読書
中毒 ブックレシピ61』[文春文庫,2000]所収)で『谷間の百合』『「絶対」の探究』『知られざる
傑作』等々の「つまらない作品」からではなく、「バルザックのすばらしい世界に入る門として」、
『従妹ベット』(「わざと説明をしない」)、『従兄ポンス』(同)、『暗黒事件』(「一種のミス
テリ」)、『ゴリオ爺さん』(「モームのすいせん」)の4冊を挙げている(^_^;)

    ・・・/右にあげた四冊がつまらなかったら、あなたはバルザックとは縁がない。
    〈新世界の小説〉(とヨーロッパからの某帰国子女がアメリカ小説を表現していた)
    でも読んで、映画「バットマン」でも観ていなさい。/四冊が面白かったら、次には
    長いものへゆくといい。/『幻滅』/『ラブイユーズ』/なんてのがおススメである。
    /・・・

『暗黒事件』は330頁もあるけど「長」くないのか(@_@;) 映画「バットマン」も好きだし(@_@;)
行きも帰りも尾根道を歩き、お墓をきれいにし、お寺にお金を納めて、2時間後にクタクタになって
帰宅すると、「お買いものパンダぬいぐるみ」(230907読んだ本【バカチン】)が届いていた(^_^;)

【読んだ本(承前)】

竹鼻績(校注・訳)『私家集注釈叢刊1 小大君集注釈』(貴重本刊行会,1989)所蔵本

     実方の中将、人のがりやらんとて、為任の君にかくいはんはいかがといひける歌

    いかでかは思ひありとも知らすべき室の八嶋の煙ならでは

     をかしなどいひて、為任の君、わが懸想する人のがりやりてけり。女の聞きて
     笑ふほどに、前を渡りければ、をんな

    このごろは室の八嶋もぬすまれて

     といひければ

    えこそは言はね思ひながらに

      [藤原]実方中将が女のもとに詠み送ろうとして、[藤原]為任の君に、
      このように言おうと思うがどうかと尋ねました歌

     どうして恋い慕う気持があるとあなたに知らすことができるだろうか、
     室の八嶋の煙でなくては。

      これは興趣があるなどと言って、為任の君は、自身が思いをかけている
      女のもとにこの歌を送りました。女がこの話を聞いて笑っているときに、
      (実方中将が)女の部屋の前を通りましたので、女が

     このごろは室の八嶋の歌も横取りされてしまって

      と言いましたところ(実方中将が)

     恋い慕っているものの、口に出して言うことはできないよ。

『小大君集』は「小大君の関与しない歌」も含んでるので(本書巻末「解説」)、松野陽一(校注)
『和泉古典叢書7 詞花和歌集』(和泉書院,1988)も「このごろは室の八嶋もぬすまれて」と言った
「女」について「第三者(と解しておく)」としてるのに、片桐洋一『歌枕 歌ことば辞典 増訂版』
(笠間書院,1999)の「むろのやしま【室八島】」の項は「実方と小大君との贈答」とする(@_@;)
「いかでかは」の歌が為任に盗まれたことを同「女」も知ってるぐらいゆえ『詞花和歌集』は実方作
としたのかな(@_@;) 実方は陸奥守としての赴任時に室の八嶋を見ることができたのかね(@_@;)
タグ:海外 小説 和歌
コメント(6) 
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コメント 6

tai-yama

「歌枕を見てこい」と言われて左遷された実方は途中下野にある
室の八島をみなかったとは。そして任地で事故・・・。
陸奥守ではなく、下野守にすればよかったのに。
by tai-yama (2023-09-23 19:32) 

middrinn

「承前」と記したように、『袋草紙』『十訓抄』の説話から室の八嶋が
「実は気付かれ難い場所」なのではないかと前回指摘したことを承けて、
実方は「室の八嶋を見ることができたのかね(@_@;)」とC= (-。- ) フゥー
犬養廉&後藤祥子&平野由紀子(校注)『実方集』(犬養廉&後藤祥子&
平野由紀子[校注]『新日本古典文学大系28 平安私家集』[岩波書店,
1994]所収)を披いても、室の八嶋を詠んだ歌は上記の2首しか載って
いないことも、小生の前回の指摘を裏書きするのではないかと(^_^;)
目崎徳衛『平安文化史論』(桜楓社,1968)所収の「源重之について──
摂関期における一王孫の生活と意識──」は、その史料性に留保しつつも
『今昔物語集』の記述を引いて「国守が風流行脚にのみふけりうるほど、
当時の現地情勢は平穏ではなかった」と論じてますから、実方の陸奥守
任命には、歌枕探訪よりも軍事的使命があったのではないかと(^_^;)
by middrinn (2023-09-24 05:29) 

df233285

下野国分寺や国分尼寺にお参りすれば、藤原実方は
室の八嶋に居て、彼には大神神社を拝んだのと同等
の御利益が有ると、神仏が習合していた10世紀頃
には、当然考えられたのではないかと私は思います。
寺では「煙の祈祷」も、当然のように当時行れてい
て、藤原実方は見物出来たのでは。陸奥守下向の旅
のとき、近くの国府へは当然滞在するでしょうしね。
当時はここが、今の宇都宮県庁界隈のようなものか。
by df233285 (2023-09-24 06:58) 

そら

そうそう、本ってストーリーがスッと頭に入ってくるものと
そうでないものがありますよね、あれ不思議です。
by そら (2023-09-24 07:14) 

middrinn

この歌の「煙[けぶり]」は、本物の煙ではないですよ(^_^;)
長さん様、室の八嶋とは「現在の栃木市国府町にあった池。池
の水が蒸発して煙が立ち上るように見えたところから、歌では、
いつも煙の立つところとして詠まれた。」と本書の語釈(^_^;)
by middrinn (2023-09-24 14:58) 

middrinn

書き手の問題か、読み手の問題か、
そら様、どちらもありそう(^_^;)
by middrinn (2023-09-24 14:59) 

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