巻末解説、ネタバレも論外だし作品理解に必要と思しき情報を提供しないのも論外(ノ ̄皿 ̄)ノ┫:・

【読んだ本】

井上靖『ある偽作家の生涯』(新潮文庫,1956→1970改版)所蔵本

森田悌(全現代語訳)『日本後紀(上)』(講談社学術文庫,2006)の中で一番驚き印象に残ったのは
行賀の卒伝(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-02-20 )で、「僧行賀の涙」
という短篇小説を井上靖が書いてるのを知り、同作品を収録している本書を購入して読んだところ、
漢文の訓読は疑問も満足(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-02-24 )(^_^;)
今谷明『信長と天皇 中世的権威に挑む覇王』(講談社現代新書,1992)に「因みに、この松姫[武田
信玄の娘]の生涯については、故井上靖氏の短篇『信松尼記』に美しく描かれている」とあり、本書
で「信松尼記」も読んだ(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-06-13 )(^_^;)
烏孫公主について調べた(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-06-19 )流れで
本書所収の短篇小説「漆胡樽[しつこそん]」も読んでみたが、二千年前の大陸へタイムトラベルに
連れて行かれたような感(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-07-08 )(^_^;)
んで、今回は表題作「ある偽作家[ぎさくか]の生涯」を読んだけど、面白い上に興味深い作品(^^)
興味深いというのは芸術新潮1991年4月号の追悼特集「井上靖 美への眼差し」の「仰げば懐かし 有縁
の人々」の「人見知りな達人 橋本関雪」に〈・・・後に井上は、関雪の贋作を描いていた実在の人物
をモデルに「ある偽作家の生涯」を書く。・・・〉、同特集の福田宏年「井上靖、その美術的側面」
にも〈・・・また「ある偽作家の生涯」は、橋本関雪の実在した偽作家をモデルとしたもので、美術
記者時代の体験に根ざしている。・・・〉とあったから、その虚実が気になりながら読んだ次第(^^)
井上靖『忘れ得ぬ芸術家たち』(新潮社,1983)に収録されてる「橋本関雪」(初出は1953年6月)に
次の件(同書55~56頁)があった(^^)

    ・・・/私は[昭和]二十二年の春、[故関雪の長男]節哉氏と一緒に、兵庫県、
    岡山県下の瀬戸内海に沿った町々を、関雪の初期の大作を見るために廻ったことが
    ある。その大部分が町の素封家の土蔵に仕舞われてあった。戦後の混乱期に、初期
    の展覧会の出品作が四散しないとも限らなかったので、一応、名前だけ聞いている
    作品を見ておこうと思ったのである。/そこで、関雪の偽作の何点かにぶつかった。
    殆ど原某という一人の人の筆になるもので、/「これも原関雪だ、これも怪しいな」
    /節哉氏はそんな事を言って、その度に所蔵家に気の毒そうな顔をした。節哉氏には
    直ぐ偽作と判るらしかった。私には、それと判るものもあれば、判定のつかぬものも
    あった。驚くほどうまく似せて描いてあり、中にはそれはそれなりで、特殊な風格を
    造り出しているものもあった。/偽作家原某は関雪の友人で、若い頃は関雪と一緒に
    絵の勉強をしていたらしいが、途中からぐれて、度々関雪の世話になっていたが、
    偽作をやったことがばれて、ついに関雪から絶交を申し渡された人物らしかった。
    私は、「ある偽作家の生涯」という小説を書いたが、そのモティフは、この時得た
    ものである。/・・・
    
本書巻末の神西清「解説」、本作品に関して「昭和二十六年」発表としか書いてないヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ

・もしも橋本関雪がTwitterとかをやっていたなら即炎上しそうだわな〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-07-09