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210914読んだ本

読書の厄介なところは、何故その日は猫になったのか、という謎である〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
ところで、猫に生まれ変わりたい、猫に化けたい、という人は多いのかしら〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)

【読んだ本】

多田一臣(校注)『日本霊異記 上』(ちくま学芸文庫,1997)

『日本霊異記』の上巻30話の「非理に他[ひと]の物を奪ひ、悪行を為し、報[むくい]を受けて、
奇[あや]しき事[わざ]を示しし縁[えに]」は、膳臣広国が頓死するも、三日後に生き返って、
地獄の様相を語ったもので、広国自身は罪が無かったので地獄で責めを受けなかったが、広国の父は
熱銅の柱を抱かされており、広国に生前の自らの罪などを次々と告白する((;゚Д゚)ヒィィィ! 広国の父が
語った内容で気になった件を本書217~218頁の現代語訳で引く(@_@;)

    ・・・/私が、飢えて、七月七日に大蛇となってお前の家に行き、家の中に入ろうと
    したところ、お前は杖に私を引っかけて棄ててしまった。また、五月五日に赤犬に
    なってお前の家に行ったところ、ほかの犬を呼んでけしかけ、追い打ったので、
    ひどく飢え疲れたままで[冥界に]戻ってきた。それから正月一日に猫になって
    お前の家に入ったところ、今度は前夜の魂祭りに供えてあった肉やいろいろのご馳走
    を腹一杯に食べることができた。それで冥土に堕ちてからの三年来の飢えをいやすこと
    ができたのだ。・・・

なお、wikiの「日本猫」の項は「文献史料においても『古事記』や『日本書紀』などにもネコの記述
は見られず、『日本霊異記』に、705年(慶雲2年)に豊前国(福岡県東部)の膳臣広国(かしわでの
おみ ひろくに)が、死後、ネコに転生し、息子に飼われたとあるのが最初である。」とし、典拠の
文献も2つ注記するが、「ネコに転生」したのは広国の父だし、「息子に飼われ」てないヾ(`◇´)ノ
地下水を汲んだバケツから盗み飲みしてる近所の猫たちもウチに「飼われた」ことになるのか(^_^;)

多田一臣は本話の語注で「七月七日」について次のように説明している(本書213~214頁)(⌒~⌒)

    /以下、五月五日、正月一日に亡父が動物の姿になって広国のもとにやってきたとある。
    これらの日は、三月三日、九月九日とあわせていわゆる五節句の日にあたる。これらは
    古く農耕神の来訪を迎える特別な日だった。農耕神には祖霊的な性格がつよく見られる。
    そのために、節句ごとに祖霊が戻ってくるという観念が成立したらしい。もっとも、
    農耕神は共同体(村落)全体の神だが、祖霊はむしろ家ごとの神として意識されている。
    本書では、十二月の大晦日に祖霊を迎える魂祭りをおこなっている例(上一二縁、
    下二七縁)が見られるが、本話の正月一日と同様に考えてよいだろう。日付の差は、
    一日の始まりをどこに置くかの違いだろう。七月七日は盆に対応する。魂祭りには
    ご馳走が食べられたから、動物と化した亡父の霊は、それを食べにやってきたのである。
    ・・・

小生が気になるのは、「七月七日に大蛇」「五月五日に赤犬」「正月一日に猫」とした理由(@_@;)

出雲路修(校注)『新日本古典文学大系30 日本霊異記』(岩波書店,1996)46頁脚注8を引く(@_@;)

    ・・・七月七日ヘビ、五月五日イヌ、一月一日ネコ、という叙述が、どのような信仰
    や習俗を背景にもつのかは不明。六八七年七月七日「巳」、六八八年五月五日「戌」、
    六八九年一月一日「寅」、といった十二支の配列に関係あるか。/

こーゆーのをよく思い付いたり、見付け出したりするよね( ̄◇ ̄;) まるで探偵による謎解き(^_^;)

多田一臣は本話の語注で、「大蛇」については未言及も、「赤き狗」は〈いわゆる赤犬だが、これに
化したというのは何か特別な意味があるのだろう。後文にも、来世で「赤き狗」に生まれ変わること
が確信されている。〉とし、「赤き狗に成るべし」は「なぜ来世で赤犬になるのかの理由は不詳。」
と記しており(ともに本書214頁)、広国の父は、どうして蛇や犬に化けたのか、「どのような信仰や
習俗を背景にもつのかは不明」ということか(@_@;) ただ、多田一臣は本話の補説で「猫について」
と題して次のように論じている(本書221~222頁)(@_@;)

    /広国の父親は、七月七日に大蛇となって、五月五日に赤犬となって、また正月一日に
    猫になって広国のもとを訪れたとある。前二回は追い返され、猫になってやってきた時
    だけご馳走を腹一杯食べることができたという。それは、当時猫が貴重な動物とされた
    からである。猫はもともと南方系の動物で、わが国では大陸から伝えられた珍獣とされた
    らしい。『万葉集』にも猫は登場しないから、奈良時代にはまず見かけることのできない
    ほどの大切な動物だったのだろう。猫が平安中期頃まで特別な動物とされたことは、
    『枕草子』の翁丸の段(『小右記』にも関連記事がある)、『源氏物語』若菜上・下巻、
    『更級日記』の侍従の大納言の姫君の記事などからうかがうことができる。/

「当時猫が貴重な動物とされたから」、広国が猫による盗み食いを容認したかのように読めるけど、
広国が猫の盗み食いを見逃したような描写は無いし、また、いくら「貴重な動物」だったとしても、
「魂祭りに供えてあった肉やいろいろのご馳走」の盗み食いが許されるとは思えないのだが(@_@;)
広国の父は「ある時は八両の重さの真綿を人に貸し、それを無理に十両の真綿として返済させた。」
(本書217頁)云々と生前の罪を告白しており、『日本霊異記』中巻38話には金銭に執着した僧が大蛇
に転生した話が載っている(@_@;) 『日本霊異記』中巻41話には「そもそも魂はすべて前世の善悪の
行為の因縁に支配されるものなのだ。ある者は、蛇・馬・犬・鳥などに転生し、・・・」(多田一臣
[校注]『日本霊異記 中』[ちくま学芸文庫,1997]308頁)と記されているんだから、猫も例示列挙
されている(大)蛇や(赤)犬と同様に前世の悪行で転生した畜生にすぎないと思うのだが(@_@;)

中田祝夫(校注・訳)『新編日本古典文学全集10 日本霊異記』(小学館,1995)98頁の本話の頭注8に
つい笑ってしまった(^_^;)

    /大晦日は、祖先の魂祭りであった(上巻十二話参照)。しかしその夜は魂祭りの人々
    がいて実際には食べられず、その翌日の正月一日にこっそり食物を猫の姿で盗んだので
    ある。みじめさが出ている。/

猫の狡賢さも示唆・・ヘ(__ヘ)☆\(^^; 食べられたのは、猫だからではなく、「日付の差」かな(^_^;)
タグ:古典 説話
コメント(4) 
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コメント 4

tai-yama

赤い犬と言うことは、通常の犬より3倍速いのかも(笑)。
息子の猫ではなく、キレイなお金持ちのお嬢様の猫になりたひ。
by tai-yama (2021-09-14 23:32) 

ナベちはる

猫になりたい…までは行かずとも、猫のように自由に生きたいとはたまにたまに思います。
とはいえ、野生で生きて行かないといけない可能性もあるので、それを考えると人間が一番だなとも思うのですが…(^^;
by ナベちはる (2021-09-15 01:19) 

middrinn

( ^o^)ノ◇ 山田く~ん 特製通常の犬より3倍速い座布団1枚 ♪
tai-yama様は、バイクの横でポーズをとるなめ猫がお似合い(^_^;)
by middrinn (2021-09-15 06:11) 

middrinn

たしかに、自由気ままなイメージですよねぇ(^_^;)
ナベちはる様、やっぱり人間が一番ですよね(^o^)丿
by middrinn (2021-09-15 06:12) 

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