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210913読んだ本

読書の厄介なところは、帝の好色譚が巻頭に置かれているという謎である〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
どんな謎でも研究者は合理的に説明しようとするから読む側には痴的愉しみ・・ヘ(__ヘ)☆\(^^;知的!

【読んだ本】

多田一臣(校注)『日本霊異記 上』(ちくま学芸文庫,1997)

『日本霊異記』と『古事談』は、ともに巻頭話が天皇の好色譚を含んでいるが、その『日本霊異記』
上巻一話「雷を捉へし縁」の冒頭部分の訳を本書32頁から引く〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

    /小子部栖軽[ちいさこべのすがる]は、泊瀬の朝倉の宮で二十三年間天下をお治めに
    なった雄略天皇〈大泊瀬稚武天皇と申し上げる〉の側近で、なくてはならない従者だった。
    天皇が磐余の宮に住んでいらっしゃった時、ちょうど天皇が皇后と大安殿で同衾なさって
    いたさ中に、栖軽はそれに気づかず参入してしまった。天皇は恥じて行為を中断された。
    まさにその時、空で雷鳴がした。そこで天皇は栖軽に「お前は、雷神をお迎えすることが
    できるか」と尋ねられた。「お迎え申しましょう」と栖軽は答えた。そこで栖軽は天皇の
    命を受けて宮中から退出した。・・・

仏教説話集とされる『日本霊異記』だが、仏教説話とは思えぬ話も含まれてて、この上巻一話も仏教
伝来以前の話だし仏教説話らしからぬという論点があるが今回はスルー〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

本書の同話の補説は「天皇の性交と雷神信仰」と題して次のように論じる(本書34~35頁)(@_@;)

    /天皇の性交は神の来臨を仰ぎ、農業生活を促進するための秘儀であったという(集成)。
    昼間の交合は落雷を招くという俗信があったのではないかともいう(体系)。イナヅマ
    (稲妻)・イナツルビ(稲つるび)ということばがあるように、落雷は天と地の性交と
    考えられ、ために稲の穂孕みがもたらされると信じられていた。天皇の性交を説く本話
    の場合にも、雷神信仰にかかわるこのような意義が感じ取られていたに違いない。本話
    では栖軽が参入したあと雷鳴が響いたことになっている。が、実際には反対だろう。
    雷鳴がすると衛府の官人たちは弓箭を帯して天皇のもとに参上し、警護の態勢をとること
    が定められていた。これを雷鳴の陣と呼んだ。『北山抄』などに細かな次第が見えている。
    栖軽が参上したのも雷鳴のためだっただろう(丸山顕徳説)。『万葉集』に、天皇の側近
    たちが春日野で打毬[だきゅう]の遊びに興じていたたる、雷鳴の折に天皇のもとに参上
    することができず、あとで外出禁止の処分を受けたことを嘆いた歌(六・九四八~九)が
    残されている。/

ナルホドと思うのだが、「神の来臨を仰ぎ、農業生活を促進するため」にヤってたのなら、「天皇は
恥じ」る必要は無いかと(@_@;) 引用文中の「体系」とは岩波書店の「日本古典文学大系」の方で、
出雲路修(校注)『新日本古典文学大系30 日本霊異記』(岩波書店,1996)ではない(@_@;) 本書の
「凡例」に「・・・新体系は、本書の脱稿間際に刊行されたため、下巻の後半部分にかぎり参照する
を得た。」(本書18頁)とあり、その所為かチト恥ずかしい語注が本書上巻にはあるC= (-。- ) フゥー

ちなみに、その新体系本においてはこの謎について次のような指摘がなされてた(同書6頁)(@_@;)

    /「王と愛欲」のイメージを含む説話が冒頭に置かれるのは、より古い段階の
    物語的伝承が「王と神との結婚」のイメージを含む冒頭部を有していた伝統に
    のっとっているのであろう。・・・

中田祝夫(校注・訳)『新編日本古典文学全集10 日本霊異記』(小学館,1995)の巻末の「解説」も
次のように指摘してて(同書415頁)、ともに神話の普遍性を探究する比較神話学的な発想か(@_@;)

    ・・・/雷神信仰が水を媒介として強く農耕に結びつくことは上巻三話でも
    見られるごとくであるが、農耕に関する信仰は、また多く男女の性的な祭儀
    ほ伴いやすい。これは大地母神の信仰に基づくもので、アフロディテ(ギリシャ)・
    デメテル(同上)・イシス(エジプト)など世界の大地母神の祭儀を見れば
    枚挙にいとまがない。日本の神話で直接的な例証を見いだすことはできないが、
    もし天皇の同衾を雷神とともに記すところが、豊饒を祈る性的な祭儀の残影
    であると解釈するならば、『[日本]霊異記』は『[日本]書紀』よりさらに古い、
    もしくはより民俗学的な口頭伝承の型を残していることになる。/・・・

つい笑っちゃったのが新編日本古典文学全集本24頁の頭注2で、それなら「天皇は恥じ」るわな(^_^;)

    /時間の上では、雷が鳴ったので同衾婚合の行為があったのであろう。雷鳴のとき
    恐怖から寄り添い、情欲行為に移ること。下巻十八話などその例か。・・・
タグ:説話 古典
コメント(6) 
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コメント 6

tai-yama

落雷が元で火災とかもあるので、まぁ護衛さんは警護につくのは
自然かも・・・。女性天皇だと解釈が変わるのかな?
道鏡は雷神だったのかも(笑)。
by tai-yama (2021-09-13 23:22) 

ナベちはる

全部が全部を合理的に説明されるとあまり面白くないですが、知的好奇心をくすぐられるならそれはそれでアリかもしれないですね。
by ナベちはる (2021-09-14 01:36) 

middrinn

雷が鳴ったら怖がる女性に寄り添おうとする
tai-yama様の姿が見え・・ヘ(__ヘ)☆\(^^;
by middrinn (2021-09-14 06:14) 

middrinn

合理的に説明が出来ているかどうか考えるのも、
ナベちはる様、頭の体操になりますよ(^_^;)
by middrinn (2021-09-14 06:15) 

そら

その辺は歴史に残さなくてもいいような気がしますが(^^;
by そら (2021-09-14 06:44) 

middrinn

だからこそ逆に何か深~い意味があると考えて、
研究者の皆さんも、頭を捻ってるかと(^_^;)
by middrinn (2021-09-14 06:55) 

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