210716読んだ本
読書の厄介なところは、ネット上では見当たらぬゴシップ等が出てることである〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)
【読んだ本】
百目鬼恭三郎『新聞を疑え』(講談社,1984)所蔵本
戸板康二『あの人この人 昭和人物誌』(文春文庫,1996)の「岩田豊雄の食味」に次の件が(@_@;)
・・・/岩田さんはことに男性的なつよさがあったと思う。人を評する時でも、
人の不徳義を嫌う場合でも、大声で叱咤はしないまでも、キッパリと男らしく
発言した。/朝日新聞の「折り折りの人」を読むと、[同じ「文学座」の三幹事
の一人である]久保田[万太郎]さんについて、じつに痛烈な筆をとっている。/
芸術院会員になるすこし前に、列車の中で久保田さんと会った。すると、会員の
候補になっていると耳打ちして、「もうトバ口まできているんです」といった時、
じつに不愉快だったと書いているのだ。/私が芸術院の会員をえらぶのが、
文化庁ではなく、会員の互選だということを知ったのは。或る年候補に指名された
詩人が、私のところに電話をかけて来て、「推薦してくれるように、あなたの
知っているSさんに、あなたからたのんでもらえませんか」といったからだ。
私は詩人ともあろう者の俗物すぎるのにおどろいたのだが、岩田さんが久保田さんに
いわれて、「ヌケヌケと、なぜこんなことを」と思ったというのが、いかにも
雄々しく思われる。/久保田さんが、ボスとか、ドンとか、かげでいわれたのは、
こんなことをきわめて無邪気に発言したからで、私は特に反撥はしなかったが、・・・
戸板康二は「美しい女性」による盗作事件を「ちょっとした失敗」と本書に書くような御仁だから
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-07-09 )、この一件も「ちょっとした」
ことという程度の認識なのかも(@_@;) この岩田豊雄が「書い」た「折り折りの人」なのだろうか、
百目鬼恭三郎が取り上げている「随筆」というのは(@_@;)
・・・/マスコミの、芸術院会員の選出とか、芸術院賞の受賞についての姿勢も
[文化勲章の受章を取り上げた提灯もち記事と]同様である。芸術院会員の選出は
会員の選挙によるために、ほとんど日展系で占められている美術部門では、日展系
の年功序列によって新会員が選出されている観を呈していることは、周知の事実
である。また、かつて獅子文六が久保田万太郎とおなじ列車に乗り合わせたとき、
雑談の末、久保田が急に声をひそめ、「芸術院会員になりたくないか。その気が
あるなら、これこれの資金を用意してくれれば、まちがいなくしてあげるよ」と
いった、という話を獅子は随筆に書いている。ふつうなら、これはマスコミにとって
願ってもない格好の攻撃材料のはずだ。が、不思議にも、いつも芸術院の新会員が
きまるたびに、マスコミは一片の批判もなしに、[文化勲章の受章の時と同様に]
提灯もちの報道をするばかりなのである。/この不思議はどう考えたらいいのだろうか。
私はかねて、マスコミは文化的な事物についての価値判断ができないことが原因
ではないかと考えている。自分で判断できないからには、権威が示した価値判断に
盲従するほかはないということだ。こういっては何だが、一般的に、マスコミの
文化的な知識の程度の低さはおどろくほどで、たとえば、・・・
「志賀直哉だって、弟子の網野菊を芸術院会員にするために選挙運動をしたではないか」云々という
話も本書には出てるが、同じく志賀直哉の弟子の阿川弘之が芸術院会員になった際の経緯を丹羽文雄
が回顧したのをゴシップとして報じた週刊朝日の記事でも網野菊の件は言及されてた記憶が(@_@;)
丹羽文雄が高齢か病気のために記憶違いをしてるのではないかとの指摘も週刊朝日の記事にはあった
ような(@_@;) この週刊朝日の記事についてサンケイ新聞(当時)の「マスコミ論壇」の週刊誌評で
松原正が取り上げてて、次のように評してる(同『續・暖簾に腕押し』[地球社,1985]から引くが、
一部の漢字は改めざるをえなかった)(@_@;)
・・・/週刊朝日[1984年]十一月二十三日號によれば、丹羽文雄氏は阿川弘之氏が
「藝術院會員になったいきさつを暴露」し、阿川氏の反論に對しては「いろいろあるんだ、
ひとことではいへない。阿川君の問題、もうしゃべりたくない」としか答へないといふ。
丹羽氏はまた、大岡昇平氏が「藝術院會員推薦を辭退したいきさつ」についても書き、
大岡氏は「たいへん感情を害してゐる」といふ。「レイテで捕虜となつたこと」及び
「女の問題」ゆゑに大岡氏は辭退したらしいと、丹羽氏は書いたのださうだが、同業者
についてさういふ愚にもつかぬ事を書き綴る事に、一體何の意味があるのか。けれども
それを、丹羽氏はもとより週刊朝日も疑つてはゐないのである。/・・・
日本芸術院の「会員は年間250万円の年金を亡くなるまで受けられる優遇もある」(2021年5月11日付
朝日新聞デジタル)から、会員選考方法の見直しが検討されているようだが、外部有識者で構成する
推薦委員会を新設したとしても似たような問題が起きるのではないかと愚考(@_@;) それにしても、
志賀直哉と網野菊、阿川弘之と丹羽文雄、有名な話なのにネット検索しても見付からないね(@_@;)
[追記210716]
せめて外部有識者で構成された推薦委員会が現会員をも改めて審査して選考し直すべきかと(@_@;)
【読んだ本】
百目鬼恭三郎『新聞を疑え』(講談社,1984)所蔵本
戸板康二『あの人この人 昭和人物誌』(文春文庫,1996)の「岩田豊雄の食味」に次の件が(@_@;)
・・・/岩田さんはことに男性的なつよさがあったと思う。人を評する時でも、
人の不徳義を嫌う場合でも、大声で叱咤はしないまでも、キッパリと男らしく
発言した。/朝日新聞の「折り折りの人」を読むと、[同じ「文学座」の三幹事
の一人である]久保田[万太郎]さんについて、じつに痛烈な筆をとっている。/
芸術院会員になるすこし前に、列車の中で久保田さんと会った。すると、会員の
候補になっていると耳打ちして、「もうトバ口まできているんです」といった時、
じつに不愉快だったと書いているのだ。/私が芸術院の会員をえらぶのが、
文化庁ではなく、会員の互選だということを知ったのは。或る年候補に指名された
詩人が、私のところに電話をかけて来て、「推薦してくれるように、あなたの
知っているSさんに、あなたからたのんでもらえませんか」といったからだ。
私は詩人ともあろう者の俗物すぎるのにおどろいたのだが、岩田さんが久保田さんに
いわれて、「ヌケヌケと、なぜこんなことを」と思ったというのが、いかにも
雄々しく思われる。/久保田さんが、ボスとか、ドンとか、かげでいわれたのは、
こんなことをきわめて無邪気に発言したからで、私は特に反撥はしなかったが、・・・
戸板康二は「美しい女性」による盗作事件を「ちょっとした失敗」と本書に書くような御仁だから
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-07-09 )、この一件も「ちょっとした」
ことという程度の認識なのかも(@_@;) この岩田豊雄が「書い」た「折り折りの人」なのだろうか、
百目鬼恭三郎が取り上げている「随筆」というのは(@_@;)
・・・/マスコミの、芸術院会員の選出とか、芸術院賞の受賞についての姿勢も
[文化勲章の受章を取り上げた提灯もち記事と]同様である。芸術院会員の選出は
会員の選挙によるために、ほとんど日展系で占められている美術部門では、日展系
の年功序列によって新会員が選出されている観を呈していることは、周知の事実
である。また、かつて獅子文六が久保田万太郎とおなじ列車に乗り合わせたとき、
雑談の末、久保田が急に声をひそめ、「芸術院会員になりたくないか。その気が
あるなら、これこれの資金を用意してくれれば、まちがいなくしてあげるよ」と
いった、という話を獅子は随筆に書いている。ふつうなら、これはマスコミにとって
願ってもない格好の攻撃材料のはずだ。が、不思議にも、いつも芸術院の新会員が
きまるたびに、マスコミは一片の批判もなしに、[文化勲章の受章の時と同様に]
提灯もちの報道をするばかりなのである。/この不思議はどう考えたらいいのだろうか。
私はかねて、マスコミは文化的な事物についての価値判断ができないことが原因
ではないかと考えている。自分で判断できないからには、権威が示した価値判断に
盲従するほかはないということだ。こういっては何だが、一般的に、マスコミの
文化的な知識の程度の低さはおどろくほどで、たとえば、・・・
「志賀直哉だって、弟子の網野菊を芸術院会員にするために選挙運動をしたではないか」云々という
話も本書には出てるが、同じく志賀直哉の弟子の阿川弘之が芸術院会員になった際の経緯を丹羽文雄
が回顧したのをゴシップとして報じた週刊朝日の記事でも網野菊の件は言及されてた記憶が(@_@;)
丹羽文雄が高齢か病気のために記憶違いをしてるのではないかとの指摘も週刊朝日の記事にはあった
ような(@_@;) この週刊朝日の記事についてサンケイ新聞(当時)の「マスコミ論壇」の週刊誌評で
松原正が取り上げてて、次のように評してる(同『續・暖簾に腕押し』[地球社,1985]から引くが、
一部の漢字は改めざるをえなかった)(@_@;)
・・・/週刊朝日[1984年]十一月二十三日號によれば、丹羽文雄氏は阿川弘之氏が
「藝術院會員になったいきさつを暴露」し、阿川氏の反論に對しては「いろいろあるんだ、
ひとことではいへない。阿川君の問題、もうしゃべりたくない」としか答へないといふ。
丹羽氏はまた、大岡昇平氏が「藝術院會員推薦を辭退したいきさつ」についても書き、
大岡氏は「たいへん感情を害してゐる」といふ。「レイテで捕虜となつたこと」及び
「女の問題」ゆゑに大岡氏は辭退したらしいと、丹羽氏は書いたのださうだが、同業者
についてさういふ愚にもつかぬ事を書き綴る事に、一體何の意味があるのか。けれども
それを、丹羽氏はもとより週刊朝日も疑つてはゐないのである。/・・・
日本芸術院の「会員は年間250万円の年金を亡くなるまで受けられる優遇もある」(2021年5月11日付
朝日新聞デジタル)から、会員選考方法の見直しが検討されているようだが、外部有識者で構成する
推薦委員会を新設したとしても似たような問題が起きるのではないかと愚考(@_@;) それにしても、
志賀直哉と網野菊、阿川弘之と丹羽文雄、有名な話なのにネット検索しても見付からないね(@_@;)
[追記210716]
せめて外部有識者で構成された推薦委員会が現会員をも改めて審査して選考し直すべきかと(@_@;)
そういえば「銀行家が集まれば芸術の話をする。
芸術家が集まれば金の話をする」というジョークが
ありましたね。どちらも自分達に無いものを話題にする。
by 爛漫亭 (2021-07-16 22:09)
「会員は年間250万円の年金を亡くなるまで受けられる優遇」、本当であれば羨ましくさえ思います…
by ナベちはる (2021-07-17 00:33)
芸術院会員になれれば、金の話も、
爛漫亭様、しなくなるかも(^_^;)
by middrinn (2021-07-17 05:32)
毎月20万円の年金が終身ですから、
ナベちはる様、誰もが羨む(^_^;)
by middrinn (2021-07-17 05:33)
webは結局100%、昔を知らない若者の住処のようですね。
「1ポンド1080円は百科辞典でしか見たことない」というサイト
記事を見て、個人的にオドロキました。約数が多いから、円周の
弧度法表記を参考に1ドル360円にした説に、個人的には賛成。
日本の当時の経済政策が、交易関係に関して米英さんの指示盲従
は、状況から見て明らかですから。更には英は米の3倍で良いの
どんぶり勘定が、当時のグローバル経済の姿という事でしょうね。
by df233285 (2021-07-17 08:05)
ナルホド!( ̄◇ ̄;) ただ、かなり御高齢な方もネットに
書き込んだりしてるので、検索の仕方が悪いのか、または
検索エンジンの問題のような気も(@_@;) 例えば、書名を
検索しても上位で表示されるのは販売サイトばかり(+_+)
by middrinn (2021-07-17 08:23)
外部有識者も内部の意見で御用有識者にされてしまったり(笑)。
日本芸術院ってそんなに儲かっているのか・・・
もしくは税金が投入されているのか・・・
by tai-yama (2021-07-17 18:50)
そもそも「有識者」は専門家ではないので芸術性を判断するだけの見識は無いし、
現会員からの働きかけ=選挙運動で、たしかに「御用有識者」になりそう(^_^;)
by middrinn (2021-07-17 19:02)
芸術院会員、大岡昇平だけでなく昔は永井荷風とか、内田百閒、武田泰淳、木下順二などときどき辞退者がいたと記憶していますが、最近はいませんね。井上ひさしとか、別役実、秋山駿あたりはなんとなく辞退するのかなと思っていたのですが。
大岡昇平への丹羽発言は、「生きて虜囚の辱を受けず」なんていう戦陣訓の「亡霊」によるものなんでしょうか。「野火」「レイテ戦記」など読んだ感じでは(作品と作者は別人格であることは承知の上)、丹羽発言は下衆の与太話にしか思えませんが。(@_@;)
by アニマルボイス (2021-07-17 19:07)
「噂の真相7月別冊 日本の文化人 日本をダメにするタレント文化人を斬る!」
(1998年)の対談で、佐高信から「最近、[猪瀬直樹に]会ったことあるの?」
と訊かれた田中康夫が「ない。誰にも会わないって、俺。そういうパーティとか
行かないから。だから秋山駿なんてクソって話だよ。路傍の石ころを書くんだとか
言ってた奴がだよ、芸術院の会員に喜々としてなって、それを誰も批判しない。
・・・」と批判してました(@_@;) 小生の記憶では、週刊朝日の記事は大岡昇平
に対する件がおかしいので、丹羽文雄の高齢・病気の所為にされてたかと(@_@;)
by middrinn (2021-07-17 20:55)