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210410読んだ本

読書の厄介なところは、アンソロジーがオリジナルと別物になることである〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
人気漫画の最終回だけ集めた『いきなり最終回』みたいなアンソロジーがまた出ないかな~と思ったら
『いきなり最終回 昭和・平成「傑作マンガ」スペシャル!』(宝島社,2018)が出てた_φ( ̄^ ̄ )メモメモ

【読んだ本】

犬養廉&平野由紀子&いさら会『笠間注釈叢刊18 後拾遺和歌集新釈 上巻』(笠間書院,1996)所蔵本

斎宮女御(承香殿女御とも)こと徽子女王の歌を平安文学輪読会『斎宮女御集注釈』(塙書房,1981)
から訳も一緒に引く(⌒~⌒)

     うへひさしうわたらせ給はぬ秋のゆふぐれに、きむをいとをかしうひき給に、
     上、しろき御ぞのなえたるをたてまつりて、いそぎわたらせ給て、
     御かたはらにゐさせ給へど、人のおはするともみいれさせたまはぬけしきにて、
     ひき給をきこしめせば

    秋の日のあやしきほどのゆふぐれにをぎふくかぜのおとぞきこゆる

     とききつけたりしここちなむせちなりしとこそ御日記にはあなれ。

      帝が、長い間女御の御殿におこしあそばさなかったころの秋の夕暮れに、
      女御が琴[きん]のことを大層お上手にお弾きになるので、主上[おかみ]は
      白いお袿[うちき]のなよやかなのをお召しになって、急いでおこしあそばして、
      傍[かたわら]にお坐りなさるけれども、女御は、どなたかいらっしゃるとも
      お目にもとめぬご様子で、一心にお弾きになるのを、お聞きあそばすと

     秋の日の、無性に人恋しい夕暮れに、主上のお心の遠のいたと知らせる萩の風が吹く

      と歌うのが分ったときの気持といったら、たまらなかったと、帝の御日記には
      書かれていたということです。

同書の充実した注釈では、同歌を読み解く上でのポイントと思しき次の指摘がなされている(⌒~⌒)

    上の句、古今集恋一、[歌番号]五四六、読人しらず「いつとてもこひしからずは
    あらねども秋のゆふべはあやしかりけり」による。下の句、萩の葉に吹く風の音に
    まず秋(「飽き」に掛ける)を知ると詠まれることを踏まえる。・・・

長~い詞書&左注から、まるで物語の一場面のようだが、橘健二&加藤静子(校注・訳)『新編日本
古典文学全集34 大鏡』(小学館,1996)382頁の「承香殿の女御 斎宮の女御」と題された一節の訳を
(歌を補って)引くv( ̄∇ ̄)ニヤッ

    /重木は、また話を継いで、/『本当に身にしみて優雅に感じられましたことは、
    この同じ村上天皇の御代のことです。承香殿の女御と申しあげた方は、世にいう
    斎宮の女御(徽子)のことです。その女御が、帝が長くおいでにならなかった
    ある秋の夕暮に、琴をたいそうおもしろくお弾きになりましたから、その音に
    ひかれて、天皇が急いで女御のお部屋においでになりました。すぐおそばに
    いらっしゃったのですが、女御は、人がいるともお気づきにならず、一心に
    お弾きになるのを、天皇がお聞きになると、

      「秋の日のあやしきほどの夕暮に萩吹く風の音ぞ聞こゆる(秋の日の怪しい
       までに人恋しいこの夕暮に、ただ訪れるものは萩の葉を吹く風の音だけで
       あることよ)

    と口ずさみながら、弾いていたのは実に哀切に堪えなかった」と、『御集』に
    ございますのは、まことにもって優雅なことでございますよ』/と語りますが、
    後宮の話とは、あまりにも恐れ多いことですよ。/

同書の頭注4(383頁)も〈・・・「萩吹く風」とは、待つ人はおとずれず、ただ萩を吹きこす風の音
だけがそよと聞えてくる、の意。〉としている(⌒~⌒)

この歌は、語句は一部異なるが、『後拾遺和歌集』に入ってて、藤本一恵『後拾遺和歌集全釈 上巻』
(風間書房,1993)の訳(≒藤本一恵[全訳注]『後拾遺和歌集(二)』[講談社学術文庫,1983])
も一緒に引く(@_@;)

     村上御時八月ばかりにひさしうわたらせたまはでしのびてわたらせ給ひけるを
     しらずがほにてことひき侍りける

    さらでだにあやしきほどのゆふぐれに萩ふく風の音ぞ聞こゆる

      村上の御時、八月時分に、天皇が久しい間お来しにならなくて、(ある時)
      こっそりと渡御されましたが、そしらぬ顔をして琴をひいておりまして
      (詠みました歌)

     ただでさえ、不思議なほど人の恋しい夕暮れ時に、萩吹く風の葉ずれの音が
     聞こえています。

この『後拾遺和歌集』の歌は、詞書に「しらずがほにて」(「そしらぬ顔をして」)とあるためか、
村上天皇がこっそりと傍に来ているのを女御は知っているのに知らぬふりをして琴をひいていること
になってるねぇ(@_@;) なお、久保田淳&平田喜信(校注)『新日本古典文学大系8 後拾遺和歌集』
(岩波書店,1994)と久保田淳&平田喜信(校注)『後拾遺和歌集』(岩波文庫,2019)の訳を見ても
「そうでなくても不思議なほど心引かれるこの夕暮時に、萩を吹く風の音がしているよ。」とあり、
ともに「萩吹く風」の語釈は「萩の上葉をそよがせて吹く風。」と説明されてるだけである(@_@;)

川村晃生(校注)『和泉古典叢書5 後拾遺和歌集』(和泉書院,1991)の訳は『斎宮女御集注釈』の訳
とは正反対の内容となってて、もはや全くの別人のように思えてくる(@_@;)

    ただでさえ不思議に人恋しい夕暮に、萩の葉風の音が聞こえること、
    (お見えなのですね)。

頭注は「萩吹く音は人の訪れの比喩・・・人を待つ女性は微かな音に敏感である。」としてる(@_@;)

犬養廉&平野由紀子&いさら会『笠間注釈叢刊18 後拾遺和歌集新釈 上巻』(笠間書院,1996)では、
平野由紀子が同歌を担当していて、次の訳であるv( ̄∇ ̄)ニヤッ

     村上天皇の御代に、八月頃(その頃主上は久しく訪問なさらなかったが、ある時)
     ひそかにいらっしゃったのを、気がつかぬ様子で、特に素晴らしく(琴[きん]の
     琴を)弾じまして(歌いました歌)

    そうでもなくともあの古歌にいう不思議なほど恋しくてたまらない秋の夕暮に、
    萩の葉をそよがせて秋風の音が聞こえる、あの方のおとづれかしら。いえ、
    やはり空耳だった、あれは。

【補説】に次の一文キタ━━━━゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚━━━━!!!! キタヨキタヨヽ(゚∀゚=゚∀゚)ノキチャッタヨ-!!!!!!

    帝の訪れを気付いたと川村注では解釈するが、いかが。・・・

ちなみに、当時の歌壇の第一人者である源経信が『難後拾遺』を著して、『後拾遺和歌集』の詞書の
誤り等を論じているけど、この歌は取り上げていない〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
タグ:和歌 古典
コメント(8) 
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コメント 8

tai-yama

自分の願望と幻聴を歌にしたと・・・・(笑)。
今の時代なら、「萩の葉風」より「ハゲの肌風」の方が秋の情景
にぴったりだったり。
by tai-yama (2021-04-10 19:52) 

middrinn

存在せぬ彼女とタンデムツーリングしてるつもりの
tai-yama様と、どこか似てる・・ヘ(__ヘ)☆\(^^;
by middrinn (2021-04-10 20:09) 

ナベちはる

アンソロジーといわれると、同人誌のような二次創作的なものを個人的には強く感じます(^^;
by ナベちはる (2021-04-11 01:14) 

middrinn

『いきなり最終回 昭和・平成「傑作マンガ」スペシャル!』には
『頭文字D』の最終回も収録されているみたいですよ~(^o^)丿
by middrinn (2021-04-11 05:28) 

そら

いきなり最終回とはびっくり仰天!
初回を読めば完璧(^^;
by そら (2021-04-11 08:55) 

middrinn

人気作で長く続いたため最終回を見逃した人もいるだろうから、
こーゆーアンソロジーもニーズがあるんだと思われます(^_^;)
by middrinn (2021-04-11 09:33) 

ネオ・アッキー

middrinnさんこんにちは。
「女性は微かな音に敏感である」と、ありますが、平安時代は違うのかも知れませんが、現代の女性は、とても、音に敏感な人が多いような気がします。
話は変わりますが、今日のプリキュアのお話は、本を読む事の大切さが伏線になっていました。
by ネオ・アッキー (2021-04-11 12:38) 

middrinn

小生も同感ですが、小生の知る女性がたまたまそうだっただけの可能性も(^_^;)
プリキュアで本を読む人が増えてくれるといいですねヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪
by middrinn (2021-04-11 14:25) 

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