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190303読んだ本

3/3が元来は「上巳[じょうし]の節句」という話から始まり、「巳」と似た字の「已[すでに]」
と「己[おのれ]」という三つの字に話を進めている金田一春彦『ことばの歳時記』(新潮文庫,1973
→1992改版)だが、文庫本の字は小さすぎて区別つかんっ!(ノ;ω;)ノ ~┻┻ (/o\) ミドリン ナカナイデー!!
今一番欲しい本は7万円以上もする上に信頼できない出品者だから諦めるとしても、二番目に欲しい本も
6000円するから、まだ新しい月になって3日しか経っていないのに注文していいのか悩ましい(ノ_-;)ハア…

【読んだ本】

保坂都『大中臣家の歌人群』(武蔵野書院,1972)所蔵本

馬淵和夫&国東文麿&稲垣泰一(校注・訳)『新編日本古典文学全集37 今昔物語集③』(小学館,2001)
371~373頁の巻第二十四の「祭主大中臣輔親郭公読和歌語第五十三」は大中臣輔親の三つのエピソード
から成るが、その最初の和歌説話の一部(371頁)を同書の現代語訳で引くよ(^^) なお、当時の暦では
一月から三月が春で四月から六月は夏だから四月「朔[ついたち]」は要注目ポイントなのに(´ヘ`;)

    今は昔、御堂殿(藤原道長)がまだ大納言で一条殿に住んでおられた時のこと、
    時は四月初め[ ← 原文は「四月朔」]のころ、日暮れ方になったので、
    男どもを呼び、「御格子を下ろせ」と仰せなさると、祭主の三位輔親は当時
    勘解由使の判官(第三位)であったが、やってきて御簾の内に入り、御格子を
    下ろした。その時、南面の木の梢で、珍しく郭公[ほととぎす]が一声鳴いて
    飛び過ぎた。殿はこれをお聞きになり、「輔親、お前はいまの鳴き声を聞いたか」と
    お尋ねになると、輔親は御格子を下ろしかけてひざまずき、「聞きましてございます」と
    申し上げた。殿が、「それにしては歌ができるのが遅いではないか」と仰せられるや、
    輔親はこう詠んだ。/・・・

藤原道長から催促されて大中臣輔親が詠んだ歌とその大意を小町谷照彦(校注)『新日本古典文学大系7
拾遺和歌集』(岩波書店,1990)から引く(〃'∇'〃)

    あしひきの 山郭公[ほととぎす] 里馴れて たそかれ時に 名のりすらしも

     山時鳥が、人里にすっかり馴染んで、夕暮れ時に名のりをしているらしいよ。

この新体系本は「たそかれ時」を〈「誰そ彼時」の意。夕暮時。「彼は誰時」の対。〉と脚注し、また
全集本371頁頭注二九は「名のり」を「・・・[道長邸の]宿直人の名のりに見立てたもの。」とす(^^)

で、真打の保坂都『大中臣家の歌人群』(武蔵野書院,1972)の出番ウキウキ♪o(^-^ o )(o ^-^)oワクワク♪

    郭公[ほととぎす]は夏を告げる鳥として、平安朝人は特に愛玩した鳥である。
    昨日(三月三一日)までは、山に鳴いていた郭公も、四月朔日には、いよいよ
    里にやってきて夏を知らせる、その一声を聞くことが、都人にはどんなに
    待ち遠く思われたであろうか。「山ほととぎすさとなれて」と、故郷にでも
    帰り来る気安さを郭公に見、「たそかれときになのりすらしも」と、
    郭公の一声を聞いた直感は、名告りしたとまでに感じられて、郭公を動物と見るには
    余りにも寂しく、彼我同視の境地にまで達した感激の高潮である。

以上で、この歌が秀歌とされている所以も理解できるはずだよねv( ̄∇ ̄)ニヤッ 実際、『後十五番歌合』
(樋口芳麻呂[校注]『王朝秀歌選』[岩波文庫,1983]所収)や『八代抄』(樋口芳麻呂&後藤重郎
[校注]『定家八代抄 続王朝秀歌選(上)』[岩波文庫,1996])等の秀歌撰にも選ばれてる(⌒~⌒)
勿論、藤原道長も絶賛し、即詠した大中臣輔親に直ちに御褒美を与えたよヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪

昨日たった54円で購入してきた阪倉篤義&本田義憲&川端善明(校注)『新潮日本古典集成 今昔物語集
本朝世俗部一』(新潮社,1978)の同説話においても歌を催促する藤原道長の台詞「然[さ]ては遅き」
(それにしてはおそい)に付されている頭注は次のように説明している(@_@;)

    時鳥を聞いたにしては、歌を詠むのが遅いではないかという意。そういう言葉を
    きっかけにして、すでに作られていた歌を直ちに輔親が披露したというところに、
    この話の中心がある。

頭注部分に「輔親、即興に時鳥の歌を詠むこと」と同説話の見出しを付けているから、鳴き声を聞いた
直後には輔親の頭の中で「すでに作られていた歌を直ちに輔親が披露した」との意ではないかと(^_^;)

即詠と言えば、やはり、昨日に引き続き、伊勢大輔タン(*'ε`*)チゥ 浅見和彦(校注・訳)『新編 日本
古典文学全集51 十訓抄』(小学館,1997)にも、「伊勢大輔の速詠[ママ]」と見出しを付けた一節が
あり、その一部を現代語訳で引いておく(⌒~⌒)

    上東門院[彰子]に仕えていた伊勢大輔が、墨をすっている間に、「今日九重に」
    という[『詞花和歌集』や『百人一首』などにも入っている秀]歌を思いつき、
    また、差し入れられた山吹の花に、一間をすべって行く間に、

      こはえもいはぬ花の色かな
       (これは口では何とも言い表せない、
        くちなし色の見事な山吹の花の色だこと)

    という末の句を付けてしまったという、・・・

「いにしへの奈良の都の八重桜今日九重に匂いぬるかな」という秀歌を「墨をすっている間に」詠作し、
「こはえもいはぬ花の色かな」という下句を「一間をすべって行く間に」付けちゃった伊勢大輔タンは
実は大中臣輔親の娘v( ̄∇ ̄)ニヤッ 優れた歌人を輩出した家系で、血は争えないと言うべきか(⌒~⌒)

・中宮・彰子が最終兵器・伊勢大輔タンに「アレを取れ」と出撃命令キタ━━━━(゚д゚;)━━━━!!

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.so-net.ne.jp/2019-01-10
タグ:和歌 説話
コメント(10) 
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コメント 10

センニン

こんばんは。
元々は三月の最初の巳の日だったとか。
この三つの感じは書くときもちょっと迷いますね。
節句は一月から九月までの奇数月のぞろ目の日ですね。
なお、チコちゃんによれば最上段の二人が「お内裏様」それ以外が「お雛様」だそうで、サトウハチローの『うれしいひなまつり』はハチローが誤解に基づいて詩を書いたため誤解が広まってしまい、本人は後でそれに気づいたとか。その歌のレコードをかけると不機嫌だったそうです。
by センニン (2019-03-03 20:24) 

middrinn

この三つの字、ワープロ等が勝手に変換してくれるのが有難いです(^_^;)
そのチコちゃんの話、どなたかのブログ記事で読んだ記憶はあるのですが、
どなたのだったかが思い出せません(ノ_-;)ハア… 訪問先は少ないのに(+_+)
by middrinn (2019-03-03 20:34) 

ニッキー

本1冊が70000円(°_°)
専門書って本当に高いですねぇ(°_°)
一間をすべって行く間に末の句をつけることが出来るなんて
才能ある方はやっぱりスゴいですねぇ=(^.^)=

by ニッキー (2019-03-03 21:10) 

middrinn

定価は一万円台なんですが、品切で、古本に付けられた値です(+_+) 医学とかの専門書は
新品の定価でもっと高いのありそう(^_^;) 伊勢大輔タンをもっと褒めて下さ~い(^o^)丿
by middrinn (2019-03-03 21:20) 

tai-yama

文庫本の字が小さいのは、渡辺謙さんも怒っているので
歳のセイではないのかも・・・
by tai-yama (2019-03-03 23:31) 

ナベちはる

もう少し待っても、値段が上がるか下がるかさえ分からないうえに、もしかしたら「他の人に買われてしまう」なんてこともあるので、買い時はなかなか掴めないですね…(-_-;)
by ナベちはる (2019-03-04 00:12) 

middrinn

俺の胸で泣け!と言って慰めて、
tai-yama様、頭ポンポンして!
by middrinn (2019-03-04 07:29) 

middrinn

そうなんですよねぇ(´ヘ`;) 他に買う人いないと思ったら無くなってたり(ノ_-;)ハア…
ナベちはる様、東京は満喫されましたかね(〃'∇'〃) 雨だったのが残念でしたね^_^;
by middrinn (2019-03-04 07:32) 

Rifle

ナナマンエンとは凄い額、しかも出品者が?だと難しいですねぇ。
何気無く聞いているホトトギスにも、昔はそういう意味があったとは...勉強になりまして御座候。
by Rifle (2019-03-04 08:40) 

middrinn

その出品者はあらゆる古本にチョー高い値を付ける上に状態が良くないという
福徳業者なんですよ(-"-) 古今集の夏の部は、ほとんどがホトトギスを詠んだ歌
とか^_^; フツー4月は山にいて5月に里に下りてくる、と詠まれてますね^_^;
by middrinn (2019-03-04 08:52) 

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