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171031読んだ本

クリスマスローズの代りにホトトギスの鉢が書斎の前に置かれたが庭の至る所で咲いてるから(´・_・`)

【読んだ本】

杉本苑子『今昔物語ふぁんたじあ』(講談社文庫,1978)所蔵本

朝日新聞の先月の月岡芳年「月百姿」を取り上げた記事にも呆れたけど、今日の夕刊の長沢芦雪の
「虎図襖」についての記事「卓越した眼力 何を見た」(編集委員・大西若人)は酷すぎるね(^。^;)
この絵についてはyahantei様のブログ「俳諧と美術」も紹介してたけど、芸術新潮2017年10月号で
美術史家の山下裕二が「襖の中から飛びかかってきそうな大迫力の虎図は芦雪の代表作ですが、
[その襖の]裏にまわってみると、魚を狙う猫の図が描かれていて、なるほど、あの虎は魚の眼に
映った猫の顏だったのか・・・・・・!と合点がいく。面白い趣向でしょう?表を見ただけでは、
本当にこの絵を見たことにならないんですよ。芦雪の絵には、人を楽しませるためのこういった
〝仕掛け〟がたくさんあるんです。」と解説しているのに、この〝仕掛け〟のことを朝日の記事は
全く言及してないぞ(゚ロ゚;)マジ!? それなのに「圧倒的な迫力と、猫のようなかわいらしさの同居が、
よく指摘される。」、「瞳が細く描かれているのは、猫を参考にしていたからとみられる。」等と
猫との類似を指摘してるけど、その正体は猫なんだからねぇ^_^; 更に続けて、〈誇張された体や脚、
毛羽立つ筆の跡は、跳びかかる虎に「速度」の表現を与えている。一方で、直接的には墨のにじみの
ためだろうが、顔やしま模様はどこかぼけている。/でもこれ、カメラ的な視覚といえないだろうか。
素早く動いているものをカメラで撮れば、被写体は流れて尾をひき、細部はぼやけて見える。/芦雪
には片目を失明したという伝説もあり、ますますカメラアイの持ち主だったのではないかと思えて
くる。〉∑( ̄ロ ̄|||)ナンデスト!? 水の中の魚は水を通して猫を見ているわけだから(魚眼レンズ?)、
「誇張」や「ぼけて」見えるんじゃないかしら^_^; 新聞記者なのに調べもせず、見たままの感想を
記事にするなんて、小学校低学年レヴェル(+_+) 「カメラアイの持ち主」云々は芦雪の全ての作品を
鑑賞・分析した上で指摘するのならともかく、そもそも、この記者は「虎図襖」すら、この襖絵の
「表を見ただけで」、それでは「本当にこの絵を見たことにならない」わけだからねぇ^_^; なお、
「・・・猫と魚の睨み合いは、[この襖絵のある無量寺の]室中之間におけるトラと鑑賞者の関係に
置き換えることができるだろう。」と山下が指摘してるような〝仕掛け〟まである(゚o゚;) さてさて、
本書の「白い蓮[はちす]」を読んだ(^^) 村はずれの阿弥陀堂で老人たちに混じって堂守り法師の
説教に耳を傾けていた病弱で右腕のない若者・左近丞が、法師の話術が下手で説教の内容も退屈な
ことから舟を漕ぎかけた矢先、現われたのが近隣きっての土地持ち・屋敷持ちで暴れん坊の「多度の
源太夫」で、彼こそが左近丞の右腕を斬り落とした張本人だったのだが、彼は法師に絡み始め・・・
予想外の展開となって結末はジーンと来るものがあるよ(;_;) なーんて、ストーリーの核心部分は
海音寺潮五郎の短篇「極楽急行」(『海音寺潮五郎全集 第十四巻 短篇一』[朝日新聞社,1970]、
『海音寺潮五郎短篇総集(四)』[講談社文庫,1978]、『剣と笛 歴史小説傑作集』[文春文庫,
2002]等に所収)と全く同じじゃん(^。^;) 磯貝勝太郎が両文庫の「解説」で「この作品の種本は、
鎌倉時代初期の浄土教思想の事情を知ることができる仏教説話集『宝物集』で、その中に源太夫の
往生説話がある。・・・『宝物集』の源太夫説話と同工異曲の説話は多い。『新著聞集』には、
上総(現在の千葉県の中央部)のじゃじゃ庄右衛門という大悪人が、・・・」云々と種明かし(^^)
ネットで検索すると、今昔物語にも同じ説話があるようだけど、杉本苑子のは登場人物を増やして
話も付け加えることでストーリーに深みと、そして何よりも説得力をもたらしたと小生は思う(^^)

買ったばかりのマウスだが何回も床に落しちゃうからかクリックしても反応しなくなってきた(+_+)
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コメント 4

そらそら

いつも拙ブログにお越しいただき&nice頂きまして有り難うございます。
名古屋で開催中の長沢芦雪展は先日見に行きましたが、可愛らしすぎる虎は実は裏側の屏風図に描かれた子猫を魚の眼から見たものだ、との解釈がパネル展示に書かれていました。
それならば反対の龍図屏風の裏に描かれた唐子遊図屏風にも何か仕掛けが?と見てみましたが、哀しいかな凡人の頭では何か仕掛けがあったのか、そうではないのかちょっと判らず残念…。(小さな龍の細工が付いた花器が描かれていたこと位しか判りませんでした)

美術品の解釈も学芸員の方によって同じ作品でも微妙に異なるのはなかなか面白いところだと思っています。
個人的には府中市美術館の学芸員の方の解釈が面白くて好きなのですが、今回の芦雪展の図録の解釈も面白い事を書いているなぁ、と思いながら読んでいたら、何と府中市美術館の学芸員の方が一部執筆されていました。
by そらそら (2017-10-31 21:41) 

middrinn

そらそら様の「はぐれ鳥うろちょろ記」は愉しく拝読拝見しております(^^)
そらそら様が名古屋まで遠征されて芦雪展を御覧になった記事も
yahantei様に閲覧を推奨してしまったぐらい興味深い内容で、
特に画中の仔犬への「この観念した様な顔つきが何とも…w」という
そらそら様の秀逸なコメントには読んでてニヤニヤしてしまいました(^。^;)
なお、同展とタイアップしてると思われる上記芸術新潮誌で、
山下裕二は〈龍図の裏の唐子図(上右、下右)にも、そこここに
龍を想わせる形状の花瓶や水差が描きこまれている。芦雪は襖の表と裏の関係を
念頭に置き、裏側にまわった人が「なるほど、そうだったのか」と思う仕掛けを
施しているのだ。これぞまさしくエンターテイナー精神!〉と指摘してますね(^^)
府中市美術館の学芸員についてのお話は面白いですね(^^)
その名前を図録の執筆者に見付けた時はさぞ昂揚されたことと推察します(^^)
by middrinn (2017-10-31 22:05) 

ぽちの輔

最近のマウスは昔のマウスより根性が無くなってますね。
私が買うマウスもどんどん交換頻度が上がってます^^;
by ぽちの輔 (2017-11-01 06:37) 

middrinn

そんなマウスは猫さんに退治してもらいたいものです^_^;
by middrinn (2017-11-01 07:15) 

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