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231227読んだ本

毎日こうやって読書をして休まずにブログを更新してるけど、今年読了した本の冊数は漫画を除くと
現時点で13冊ヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪ 量より質だからオホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)ヾ(-_-;)ニシテモ…

【読んだ本】

田中善信『芭蕉の学力』(新典社選書,2012)所蔵本

      早行 早行[そうこう]

    垂鞭信馬行 鞭を垂れ 馬に信[まか]せて行[ゆ]く
    數里未鷄鳴 数里 未だ鶏鳴ならず
    林下帶殘夢 林下[りんか] 残夢[ざんむ]を帯び
    葉飛時忽驚 葉[は]飛びて 時に忽[たちま]ち驚く
    霜凝孤鶴迥 霜凝[こ]りて 孤鶴迥[はる]かに
    月曉遠山横 月[つき]暁[あかつき]にして 遠山[えんざん]横たわる
    僮僕休辭險 僮僕[どうぼく]よ 険[けん]を辞するを休[や]めよ
    時平路復平 時平[たい]らかなれば 路[みち]も復[ま]た平らかなり

      未明の旅立ち

    鞭を下げたまま、馬の歩みにまかせて進みゆく。/数里進んでも、まだ夜明けを
    告げる鷄の声がしない。/馬の背に揺られて、うとうとしながら林の中を進めば、
    /落葉の飛びかう音に、時おりはっと我にかえる。/白い霜がいちめんに置く
    野のかなたに、一羽の鶴の姿が見え、/有明[ありあけ]月の沈みゆくあたり、
    遠い山なみが横たわる。/僮僕[しもべ]たちよ、道の険しさを厭[いと]っては
    ならない。/今は泰平の世。進みゆく路[ろ]も平坦なはずなのだ。/

松浦友久&植木久行(編訳)『杜牧詩選』(岩波文庫,2004)118~119頁から杜牧「早行」とその訳
を引いたが、例に如く一部の漢字は字体が異なる(^_^;) 同書119~120頁の語釈の中から、「信馬」
の「この信は、信筆・信歩・信手などと同じく、まかせるの意。」、「帯残夢」の「残[くず]れし
夢を帯[むす]ぶ。残夢は、明け方近く、目ざめ前の、浅い眠りのなかで見る夢。ここでは、眠けを
催し、うつらうつらとするさま。」、「僮僕」の「召使、供人[ともびと]。貧書生の旅でさえ、二
人の下僕(雑用係と荷物かつぎ)を従えた。」、「路」の「眼前の道路と人生行路(世路)の両意を
含む。不遇な人生を歩み続ける作者の、強い憤懣をこめた、辛辣な皮肉。」はメモ_φ( ̄^ ̄ )メモメモ

『大和物語』の平兼盛の歌(『後撰和歌集』ではよみ人しらず)の「駒にまかせて」の典拠を通説は
『蒙求』『韓非子』に出ている管仲の「老馬」の故事、今井源衛は白居易(白楽天)の「長恨歌」を
挙げるのに対し、岑参の「西掖省即事」の「薄暮垂鞭信馬歸」(薄暮 鞭を垂れ馬に信せて帰る)の
可能性を小生は指摘したが(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2023-11-27 )、
杜牧の「垂鞭信馬行」(鞭を垂れ馬に信せて行く)は岑参のを念頭に置いての表現なのかな(@_@;)
岑参が「薄暮」=夕暮れに「帰る」のに対し、杜牧は「未明」に「行く」んだから対称性が(@_@;)

    ・・・/二十日余りの月かすかに見えて、山の根ぎはいとくらきに、馬上にむちを
    たれて、数里いまだ鶏鳴ならず、杜牧が早行の残夢、小夜の中山に至りてたちまち
    驚く。

     馬に寐て残夢月遠しちやのけぶり

    ・・・

    ・・・/二十日あまりの月が、空にかすかに見えて、山の根際はまだたいへん
    暗かった。杜牧の「早行」の詩に、「鞭を垂れて馬に信せて行く、数里未だ鶏鳴
    ならず、林下残夢を帯ぶ」とあるが、自分も夢の名残りがまだ消えないような
    気持ちで、とぼとぼと馬を歩ませて来るうちに、小夜の中山の辺まで来て、急に
    意識がはっきりした。

     朝早く旅に出る。ねむいので馬上でうとうとする。昨夜の夢がまださめきれず、
     うつらうつらと夢を結んでいる。ふと気がつくと、はるか遠くの方に二十日
     あまりの月がほのかに傾いて、村からは茶をにる煙がたちのぼっている。

    ・・・

麻生磯次(訳注)『現代語訳対照 奥の細道 他四編』(旺文社文庫,1970)から『野ざらし紀行』の
一節とその訳を引いたが、この訳にもある通り、杜牧「早行」を踏まえていることは富山奏(校注)
『新潮日本古典集成 芭蕉文集』(新潮社,1978)や今栄蔵(校注)『新潮日本古典集成 芭蕉句集』
(新潮社,1982)等々の諸書がモチ揃って指摘しているところであるよ〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

小宮豊隆『芭蕉句抄』(岩波新書,1961)は「その一一」の「馬に寝て残夢月遠し茶の煙」において
次のように読み解いている(同書111頁及び112頁)(@_@;)

    ・・・──ただこの句で最も注意すべきは、「茶の煙[けぶり]」という下五である。
    「馬に寝て残夢月遠し」までは杜牧の『早行詩』が背景になって居り、芭蕉は「小夜の
    中山」に来るまでは、絶えずこの『早行詩』のことを頭の中で繰り返し思い浮べていた
    ことと想像されるのではあるが、しかし「茶の煙」となると、光景は全然日本の光景で、
    茶を沸かしたり、飯を炊いたりする、日本の田舎家の明け方の特色が、実に見事に
    把[とら]えられているのである。その点でこの句は、「茶の煙」で時間の経過がよく
    現わされてもいるのだから、芭蕉のオリジナリティーがはっきり表現されているという
    ことができる。/・・・

    ・・・そのあとにすぐ、「数里いまだけいめいならず」が続いているのは、杜牧の
    『早行詩』の句を、そのまま用いていることは確実であるが、しかしこれもこの句が、
    芭蕉の実感を表現するのに、極めて適切だったから、芭蕉は敢てこれを用いるとともに、
    すぐそのあとに、「とぼくが早行の残夢」という言葉を附け加えたものに相違ないので
    ある。/

ちなみに、中山義秀『芭蕉庵桃靑』(中公文庫,1975)は、美濃大垣の船問屋の主人である木因こと
谷久太夫と芭蕉に次の対話をさせている(@_@;) ちなみにのちなみに、竹内玄玄一(著)雲英末雄
(校注)『俳家奇人談・続俳家奇人談』(岩波文庫,1987)の「木因坊」の項には「・・・当時美濃
の木因坊は俳道の物識[ものしり]なればとて、・・・」という人物評〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

    ・・・/木因は芭蕉が文にひいた、杜牧の「早行」の詩を、そらで口ずさみ、/
    「『鞭をたれて馬にまかせて行く、・・・いづれの時か世路平かならん』この情景が
    お好きで、句をよまれたのはわかりますが、漢詩の風景をそのまま、あの辺りに
    はめこまれるのは、なんとなくこうぴったりとしない気がするけれども、こんなことは
    余計な推量でしょうな」/木因は東海道をのぼり下りして、大井川をわたった後、
    金谷の宿をすぎ日坂の小夜の中山にいたる地理につうじているので、実景にそぐわぬ
    不自然さを感じたものとみえる。/芭蕉はうなずいて、/「なるほど、お説のとおり
    かもむしれませんよ」/「しかし、先の捨児の一句同様、漢詩を巧に換骨奪胎された、
    入念のお作と拝見しました」/芭蕉は微笑をもらしながら、/「それほど、細工した
    わけではない。心に浮び情の動くところ、私には実景となって写るのです」/・・・

さて、さて、さ~て!芭蕉は『おくのほそ道』で杜甫の「国破れて山河あり、城春にして草木深し」
を「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」と記してるので、「・・・芭蕉は引用を間違えたの
ではないか・・・」(本書)と田中善信は芭蕉の「漢詩や漢文を読解する能力」を疑問視してるけど
(底本には無い鉤括弧=「 」を勝手に付けて杜甫の詩句の「引用」と解していることが、そもそも
間違いかと⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2023-12-16 )、『野ざらし紀行』
の上記件からは芭蕉の「漢詩や漢文を読解する能力」に特に問題は無さそうに思えるのだが(@_@;)
ただ、「早行」の第八句に着目すると、これは単なる叙景詩ではないような気もするけどね(@_@;)
コメント(4) 
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コメント 4

tai-yama

小夜の中山って煙すら見えないすごい山の中なのに・・・
馬なら居眠りも酒気帯びも大丈夫と。老馬すごい。
バイクなら間違いなくOUTっ。
by tai-yama (2023-12-27 23:01) 

middrinn

当時の地形と同じかどうか(@_@;) た~か~ら~老馬とは限らないと(^_^;)
by middrinn (2023-12-28 05:41) 

df233285

今年は私も休まずブログを書いた。その過程で、ブログを書く道具
に通例なっているパソコン自体の、webに接続する技術の未来が、
今までと違って、自分なりに見えて来た年になったような気がする。
マイクロソフトの当初の主張だと、「windowsは10が最後」
だったはずだが。西暦2030年代には今の空気と違って、「確か
にそうだった」と、皆が感じる世界が来そうな気が、現2023年末
現時点で既にするように、私にもライフに深みの出た1年だった。
by df233285 (2023-12-28 07:08) 

middrinn

実り多き一年になった由、御同慶の至りです(^^)
by middrinn (2023-12-28 10:25) 

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