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221031読んだ本【バカチン】

「老舗」に「ろうほ」という読み方があることをネットで知って、びっくりしたな、もう!(ノ゚ο゚)ノ

【読んだ本(バカチン)】

川口久雄(全訳注)『和漢朗詠集』(講談社学術文庫,1982)所蔵本

『和漢朗詠集』を毎日チンタラ読んでるが、川口久雄が『白氏文集』に目を通していない疑惑ありと
指摘だけした(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-10-29 )( ̄ヘ ̄)y-゚゚゚

そこで、白居易(白楽天)の作品を本書の訓み下し文&現代語訳で引く〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

    琴詩酒の友皆我を擲[なげう]つ 雪月花の時に最も君を憶[おも]ふ

    殷氏たちと江南で五年も生活して琴詩酒を楽しんでいたのに、今はもう、
    あの時の琴の友、詩の友、酒の友は、みな私を見すてて散り散りになって
    しまいました。/年を迎えて、雪のとき、月のとき、花のときがめぐって
    来るたびに、多くの友の中でも、ことに君のことがせつに憶いおこされます。

川口久雄の本書は訓み下し文に無くても漢詩文全体から語句や文章を補って現代語訳していることは
先日指摘した(^_^;) この白居易の漢詩文に関しては、菅野禮行(校注・訳)『新編日本古典文学全集
19 和漢朗詠集』(小学館,1999)の巻頭の「古典への招待 和漢朗詠集をどう読むか」が重要な指摘を
行なっているv( ̄∇ ̄)ニヤッ

    ・・・/従って、作者[白居易]が「雪月花の時」と詠じたのは、単なる自然の風流な
    情趣をうたうにとどまらず、そこにまつわる人事への追懐こそが主眼なのであった。
    ところが「琴詩酒……雪月花……」の聯のみを切り取って、佳句麗章の集の中に配列
    されると、王朝的な自然美のみが強調されがちである。このような断章取義的な受容は、
    当然ながら部分的な理解にとどまること、もしくは、その理解がひとり歩きをして
    原作の真意をゆがめた形で詠まれるようになることなどを引き起こしてもやむを得ない
    であろう。/問題は、それで果たして『[白氏]文集』がわかったことになるのか、
    ということである。あるいは、そういうわかり方がよしとされるのか、ということでも
    ある。さらには、撰者[藤原]公任自身が、そういう読まれ方、あるいは、うたわれ方を
    予測して『[和漢]朗詠集』を撰したか、また、すでに彼が断章取義的な佳句麗章の
    修辞的受容をよしとしていたのかが問題となるはずである。ここで忘れてならないのは、
    『朗詠集』は佳句麗章を部立によって配列した集であるということである。「雪月花」の
    この詩句は、「交友」の部立の冒頭に掲げられている。そのことから、友情という人間的
    な心情の美しさをこの聯から読みとってほしいという、撰者のメッセージを察知すべき
    なのだろう。・・・

断章取義とは「詩文の一部だけを切り離して、自分に都合よく解釈して使うこと。」(『大辞林』
第一版第一刷)で、菅野禮行は別の論稿でも「白楽天の日本文学への影響のあり方は、・・・総じて
その佳句麗章を主とした断章取義的なものであった。」と(^^) 母親の喪に服してる真っ最中に白居易
が女を家に連れ込もうとしたかの如く白詩を解した藤原定家らの作意無視のレトリック摘み食い和歌
なんかもそう(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-04-03 )C= (-。- ) フゥー

さて、さて、さ~て!川口久雄は本書の語釈で次のように記していた∑( ̄ロ ̄|||)ニャンですと!?

    〇琴詩酒の友 琴と詩と酒の上での友人。『源平盛衰記』二、清盛息女ノ事に
    「昔唐白居易ハ琴詩酒ノ三ヲ友トシテ、常ハ琴ヲ引テ心ヲ養給ケリ」とある
    ように楽天の三友というふうに意味がずれてきた。

この「琴詩酒友」とは「琴と詩と酒の上での友人」という意味なのに〈琴と詩と酒は白楽天の三友〉
という風に「意味がずれて」『源平盛衰記』では用いられている、と川口久雄は指摘しているけど、
「後に白居易は琴、詩、酒そのものを三友と称した(文集・巻六十二「北窗三友」〈二九八五〉)。」
(菅野禮行・前掲書の頭注)作品を詠んでいることも知らないのかよヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!!

岡村繁『新釈漢文大系107 白氏文集 十一』(明治書院,2015)が、「北の窓の下で。琴と酒と詩を友
として楽しんでいることを述べた詩。大和八年(八三四)、洛陽で太子賓客分司となっていた六十三
歳の作。」(同書51頁)と解題する「北窓三友(北窓[ほくさう]の三友[さんいう])」(2985)
を同書51~52頁から、通釈を同書52頁から引くが、返り点は省略し、一部の字体は異なるし、訳注稿
は松浦崇が担当している由(^^)

  今日北窗下 自問何所爲  今日 北窗の下、自ら問ふ 何の爲す所ぞと。
  欣然得三友 三友者爲誰  欣然として三友を得たり、三友とは誰とか爲す。
  琴罷輒擧酒 酒罷輒吟詩  琴罷[や]みて輒[すなは]ち酒を擧げ、酒罷みて輒ち詩を吟ず。
  三友遞相引 循環無已時  三友 遞[たが]ひに相引き、循環して已む時無し。
  一彈愜中心 一詠暢四肢  一彈 中心に愜[かな]ひ、一詠 四肢を暢[の]ぶ。
  猶恐中有閒 以醉彌縫之  猶ほ中に閒[かん]有らんことを恐れ、醉ひを以て之を彌縫す。
  豈獨吾拙好 古人多若斯  豈に獨り吾のみ拙にして好むならんや、古人も多く斯くの若し。
  嗜詩有淵明 嗜琴有啓期  詩を嗜なむ 淵明有り、琴を嗜なむ啓期有り。
  嗜酒有伯倫 三人皆吾師  酒を嗜なむ 伯倫有り、三人は皆吾が師なり。
  或乏儋石儲 或穿帶索衣  或いは儋石の儲へに乏しく、或いは帶索の衣を穿つ。
  絃歌復觴詠 樂道知所歸  絃歌して復た觴詠し、道を樂しみて歸する所を知る。
  三師去已遠 高風不可追  三師 去ること已に遠し、高風 追ふべからず。
  三友遊甚熟 無日不相隨  三友 遊甚だ熟し、日として相隨はざるは無し。
  左擲白玉巵 右拂黄金徽  左に白玉の巵を擲ち、右に黄金の徽を拂ふ。
  與酣不疊紙 走筆操狂詩  興酣にして紙を疊まず、筆を走らせて狂詞を操る。
  誰能持此詩 爲我謝親知  誰か能く此の詞を持し、我が爲に親知に謝する。
  縦未以爲是 豈以我爲非  縦ひ未だ以て是と爲さざるも、豈に我を以て非と爲さんや。

  今日北の窓の下で、お前は何をしているのかと自分に尋ねてみた。すると三人の友を
  得たのを喜んでいると答えるであろうが、では三人の友とは誰か。琴を弾き終ったら
  酒を飲み、酒を飲み終わったら詩を吟じる。琴と酒と詩の三人の友は互いに引き合い、
  ぐるぐると果てしなく回って終わる時がない。琴をひとたび弾くと心に満足感がひろがり、
  詩をひとたび詠ずると手足が伸び伸びしてくる。その中に隙間ができるのを恐れて、酒の
  酔いをもって埋め合わせる。私だけがこうした愚拙を好んだわけではなく、古人の多くも
  そうだった。詩をたしなんだのは陶淵明、琴をたしなんだのは栄啓期、酒をたしなんだのは
  劉怜であり、この三人は皆私の師である。ある者[=陶淵明?]はわずかの蓄えもなく、
  ある者[=栄啓期]は縄の帯をしめるほど貧しかった。しかし、彼らは音楽や詩歌を
  たしなみ、道を楽しんで人間の本来あるべき姿を知っていた。三人の師はすでに遠い昔に
  この世を去って、その偉大な風格を追うことはできない。けれども、三人の友との交遊は
  たいへん親しさを増し、一日として一緒にいない日はない。左手で白玉の杯をなげうち、
  右手で黄金の琴柱をはらう。興がたけなわになれば紙をたたまずに、筆を走らせて
  思うままの詞を書きつける。誰か私のためにこの詞を持って、親友の所へ見せに行って
  ほしい。たとえ是としないまでも、非とする者はいないだろうから。

〈・・・ちなみに、唐の元結は「丐論」で雲山・松竹・琴酒を、北宋の蘇軾は梅・竹・石を、明の
馮応京は「月令広義」で松・竹・梅を三友とする。〉と同書53頁の「三友」の語釈_φ( ̄^ ̄ )メモメモ

藤原克己『菅原道真 詩人の運命』(ウェッジ選書,2002)が、菅原道真の若い頃の作品「弾琴を習う
ことを停む」(『菅家文草』巻一)について「かの白居易も、詩と琴と酒を三友と称したのですから、
琴が弾けなかったことは、道真にとってどんなにか残念だったでしょう。」云々と指摘し、〈・・・
謫居での暮らしが始まって間もない頃の詩「楽天の北窓三友の詩を読む」のなかで、次のように歌って
いたのでした。白楽天は、詩と琴と酒の三つを北窓(書斎の窓)の三友と呼んだが、自分は琴も弾け
ないし、酒も飲めない。「詩友独り留まりて真に死友」。自分にとってはただ詩だけが、生涯の最後
の時までの道連れである、と。まことに道真は、その死の直前まで詩を手放しませんでした。〉云々
と記述しているが、川口久雄(校注)『日本古典文学大系72 菅家文草 菅家後集』(岩波書店,1966)
は、この菅原道真の両作品に対してどのような注釈をしたんだろうねぇ〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
タグ:古典 中国
コメント(6) 
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コメント 6

ぽ村

え、マジすかろうほ?

しかしアレですよね漢字の読みや送り仮名とかって「偉い人が間違って読んだり使ったから無理矢理正解にしたのかな?」ってのありますよね?

by「短い」を「短かい」と書いたら定規で殴られて修正されたのに、近年ではオッケーになってることに腹立たしさを感じる男、ぽ村
by ぽ村 (2022-10-31 23:23) 

tai-yama

楽天に"白"がついていないと、モバイル・カード・ポイントな
イメージが(笑)。道真は一友だったと・・・・
by tai-yama (2022-11-01 00:08) 

ナベちはる

「ろうほ」…老舗、変換したら出てきました。
漢字をそのまま読んでも変換できるとは、同じく知りませんでした。
by ナベちはる (2022-11-01 01:00) 

middrinn

偉い人が間違って読んだから正解になった例なんてあるんですか(@_@;)
ぽムたん、「未曽有」は首相が「みぞうゆう」と読んでも不正解(^_^;)
by middrinn (2022-11-01 07:32) 

middrinn

「酒も飲めない」とあるのに、菅原道真は、
tai-yama様、よく宴席に出てます(^_^;)
坂本太郎『歴史随想 菅公と酒』(中公文庫,
1982)所収の「菅公と酒」の主題(^_^;)
by middrinn (2022-11-01 09:58) 

middrinn

たしかに「ろうほ」と打ち込んでみたら、
ナベちはる様、変換されますね(^_^;)
『大辞林』第一版第一刷でも立項されて
ますし、辞書に出てるからかも(^_^;)
by middrinn (2022-11-01 10:34) 

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