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220202読んだ本

28日発売の『ギャラリーフェイク』第36集を一円でも安く買ってみせるオホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)

【読んだ本】

ゼップ・シェラー(関楠生 訳)『フェイクビジネス 贋作者・商人・専門家』(小学館文庫,1998)所蔵本

毎度お馴染みの芸術新潮だが、同誌の1990年7月号の大特集「万国贋作博覧会」と2018年1月号の特集
「世にも奇妙な贋作事件簿 21世紀ブラック・レポート」、ともにジョヴァンニ・バスティアニーニの
贋作事件の紹介記事が掲載されているけど、まるで約30年の間に新事実が出てこなかったかの如く、
両記事の内容はほぼ同一である(+_+) 1990年7月号の記事から引く(@_@;)

    /フィレンツェの古美術商の店先に転がっていた《ベニヴィエニの胸像》が
    約一万四千フランでルーヴルに入り、ミケランジェロの傑作と並んで展示
    されたのは一八六五年のこと。しかし、ルネサンスの傑作とされたこの像は、
    「贋作者の貴族」と称されるバスティアニーニの作だった。真相を暴露したのは、
    古美術商のフレパで、自分の売った胸像が二十倍もの高値で転売されたことを憤った
    ためとも言われる。一方あわてたルーヴルは自らの権威にかけてこれを否定する。
    ジャーナリズムを舞台に喧々囂々の論争が巻き起こり、もしバスティアニーニが
    真の作者なら、一生彼のために土をこねてやるという言う彫刻家、《ベニヴィエニ》
    に匹敵する作品を再制作できたら一万五千フランを与えようという者まで現れる。
    バスティアニーニはその挑戦を真っ向から受けてたつが、決着のつかぬまま
    三十七歳で急死、胸像は展示室からいつのまにか撤去された。/・・・

その後はバスティアニーニの他の作品も高く評価されている事実を両号は伝えてるが、2018年1月号は
自分が贋作者だと名乗り出た者に対し作品を本物と信じる者が「なら、描いてみろ」と挑発するのが
「贋作者あるある」として、この事件について1990年7月号の記事と同様に次のように記す(@_@;)

    ・・・/ルネサンス風彫刻の名手バスティアニーニ(62頁)は、「本当にできるのなら、
    1万5000フランで、彼に新作をつくらせてみよう」とパリの帝室美術館長から挑発
    され、その挑戦を受けると表明した後、急死してしまった。彼が確かに贋作者であった
    と証明されたのは、死後しばらく経ってからのことだった。/・・・

15000フランの「挑戦」「挑発」が「パリの帝室美術館長」によるものだったことが判ったわけだが、
本書の「バスティアニーニの胸像事件」という章は同事件の経過も詳述していて、ソレは芸術新潮の
両記事から得られる印象とは全く異なるものだった( ̄◇ ̄;) 先ず呆れたのは、この胸像が「約一万
四千フランでルーヴルに入」ったのは本書によると「競売」の結果だった由(@_@;) 「オーマル公爵
の代理人であるド・トリケッティ男爵と、首都の帝室博物館の代表であるド・ニューヴェケルケ伯爵
とが、この神秘に包まれた肖像彫刻を手に入れようとして、頑強に争った。」由、値が高くなっても
おかしいことではなく、2018年1月号の記事にこの胸像を「《ミロのヴィーナス》を上回る価格で購入
した」とあるのも仕方がないかと(〈一八二〇年に発見された「ミロのヴィーナス」にフランス政府
の払った金がただの六〇〇〇フランだった・・・」と本書)(^_^;) 問題はこの胸像を高値で落札した
ド・ニューヴェケルケ伯爵で、本書から引く(^_^;)

    ・・・/世間は専門家たちの争いを面白がっていたが、こうなってはルーヴル当局も
    この真贋論争を回避するわけにはいかなくなった。ド・ニューヴェケルケ伯爵は、
    作品がほんものであることとその年代とを確信しているように見えた。彼は何度も
    繰り返して、十九世紀のいかなる芸術家といえども、ベニヴィエーニ胸像のような
    完成した傑作を生むことはできない、バスティアニーニのごとき者がその作者だなんて
    とても問題にならない、と言明した。そして友人たちの間で、一万五〇〇〇フラン
    奮発して胸像の自称製作者に挑戦し、対[つい]になる同価値の新作を作らせてみよう、
    と言明した。/新聞でこの計画を知ったバスティアニーニは、係争問題を解決する
    ために喜んで賛意を表した。彼が[友人である]フォレシ博士にあてた手紙は
    「ラ・ナチオーネ」紙に発表されたが、その中で彼は、公式に申し出ることを
    ためらっている博物館長に、自分のほうから挑戦しようとした。彼は、この手紙が
    着いたら、ド・ニューヴェケルケ伯爵をアトリエに招待する前に、次のように報告
    しようと言明したのである。

     あなたの一万五〇〇〇フランを確実なところに供託しておいてください。それから、
     構成をフランス人に限らない審査委員会を選びましょう。私は三〇〇〇フランで
     ベニヴィエーニのと同じ程度の胸像を一つ作ることを引き受けます。残りの一万
     二〇〇〇フランに関しては、現在第二帝政の柱石の一人でいらっしゃるあなたを
     お迎えし、一二人の皇帝の胸像を、一個あたり一〇〇〇フランで作る用意があると
     申し上げるものです。

      フィレンツェにて、一八六八年二月十五日
                          ジョヴァンニ・バスティアニーニ

    ド・ニューヴェケルケ伯は、この言明によって名誉回復の最後の機会を与えられたわけ
    だが、沈黙を守りつづけた。・・・

口は禍のもととはいえ、ド・ニューヴェケルケ伯爵、お前はサイテーだヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! ヘタレガァ!!
本書が「ほかの論拠も、バスティアニーニの故意の詐欺をはっきりと否定する。なかでも、収益の
問題が決定的な重要性を持っている。彼の売値はまったく、当時の新作の標準以内であった。ニュー
ヴェケルケ伯の誘惑的な申し出に対する返事からも、彼のりっぱな態度がうかがえる。」と評してる
ように、ホント「りっぱな態度」だよね(〃'∇'〃) 贋作者どころか真の芸術家かと( ̄ヘ ̄)y-゚゚゚
また「古美術商アントニオ・フレッパも、贋作者とは考えられない。・・・はばかるところなくベニ
ヴィエーニ胸像の歴史を暴露したということも、この商人の誠実さと正しさを証明する。」と本書は
主張(^^) 本書冒頭の「贋作者・商人・専門家」の章では「意志に反する贋作者」を〈自分は何も手を
くださないのに、自分の作品が他人のものにされて、「贋作者」になってしまう芸術家である。〉と
し、〈「意志に反する贋作者」ジョヴァンニ・バスティアニーニの話も伝えられた。商人は専門家の
あやまちを発見した。専門家は、現代の工場労働者の肖像彫刻を、十六世紀の哲学者ベニヴィエーニ
の像と同時代に作られたものときめて、それを贋作にしてしまう結果を生んだのである。〉と事件の
構造を提示するが、2018年1月号は「・・・古美術商が暴露したのだ。・・・自分の売った20倍もの額
で買い上げられたこと知り、くやしまぎれに告発したらしい。」、芸新の両記事こそフェイク(^_^;)
本書は原著が1959年刊で翻訳は1961年に河出書房新社から『贋作者・商人・専門家』という題で(^^)
タグ:アート 歴史
コメント(8) 
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コメント 8

tai-yama

「贋作者」と言うストーリーができていたので、知っていたけど
無理矢理改変したのかも(笑)。
一円でも安く買った「ギャラリーフェイク」は偽物の可能性も!
by tai-yama (2022-02-02 23:50) 

ナベちはる

『ギャラリーフェイク』第36集、1円でも安く買えますように!
by ナベちはる (2022-02-03 01:07) 

middrinn

一円でも安くと思って、
tai-yama様、海賊版を
つかまされると(^_^;)
by middrinn (2022-02-03 07:16) 

middrinn

一円も払わずに買えるのが、
ナベちはる様、理想(^_^;)
by middrinn (2022-02-03 07:25) 

df233285

通貨単位のフラン。懐かしいですねぇ。一兆二兆(円)が
当たり前(?)の世の中なら。インフレしているとはいえ、
15000フラン(≒2500ユーロ?)じゃ、いまでは
新車一台の値段なので、あんまりピンとこないかもしれない
ですねぇ。ところで`それらの損失'は。どこをどうして、
つじつまを合わせるんでしょ?
by df233285 (2022-02-03 07:41) 

middrinn

ド・ニューヴェケルケ伯爵は責任を問われたんですかね(^_^;)
同時代の専門家も本物と評価したので、過失は無さそう(^_^;)
ルネサンス期の作品でないと判っても、バスティアニーニの作品
は高い評価を受けるようになったので損失は無いのかも(^_^;)
by middrinn (2022-02-03 09:37) 

ぽ村

ギャラリーフェイク、まだ続いてたんですねーw
ヲレも昔19巻くらいまで集めてましたが、近所の書店が新刊入荷しなくなったのを機に友人に提供してしましました;
by ぽ村 (2022-02-03 11:33) 

middrinn

文庫版を古本で集めて全23巻コンプリート(^o^)丿ウラー!
と思ったら、「11年ぶりに復活」とかで単行本が第33集
から出始めて既に既刊3冊も一緒に並べられない(^_^;)
by middrinn (2022-02-03 11:58) 

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