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210830読んだ本

読書の厄介なところは、アニメの言葉を日常生活でもフツーに使う人である〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

【読んだ本】

浅見和彦(校注・訳)『新編日本古典文学全集51 十訓抄』(小学館,1997)所蔵本

本書から「梅の貞節」なる見出しが付いた節の訳を和歌&漢詩文の訓み下し文を補って引く(⌒~⌒)

    菅原道真公が大宰府に思い立たれた頃、

     東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ

      東風[こち]が吹いたなら、私の所まで匂いを届けてほしいな。
      梅の花よ、主人がいなくても、春を忘れてはならないぞ

    と詠みおかれ、都を後にし、筑紫の地にお移りになったのだが、その紅梅殿の
    梅の一本の枝が、筑紫まで飛んで行き、そのまま生えついたという。/ある時、
    道真公が、この梅に向って、

     ふるさとの 花のものいふ 世なりせば いかに昔の ことをとはまし

      故郷の、花が物言う世であれば、いかばかり、花と昔を語り合おうぞ

    とお詠みになった時、この梅の木が、

     先人故宅に於いて         先人の旧宅において
     籬[まがき]、旧年に廃[すた]る 籬は毀[こぼ]ち壊れ
     糜鹿[びろく]、猶棲む所     はや鹿たちの臥所と化し
     主無くして独り碧天[へきてん]  主の姿はなく、ひとり青空のみが澄みわたる

    と返事を申し上げたのだった。なんともはや、驚くばかり不思議なことで、
    想像もつかないことではないか。

西尾光一&小林保治(校注)『新潮日本古典集成 古今著聞集 下』(新潮社,1983→2019新装版)に、
漢詩文が一部異なるも、ほぼ同話が抄入されてて、両書とも「ふるさとの」の歌が『後拾遺和歌集』
に入ってて、その作者は出羽弁であり、その詞書から世尊寺の桃の花を詠んだものであると注記(^^)

さて、鹿ケ谷の山荘での平家打倒の謀議が発覚して九州の孤島・鬼界が島へと流された丹波少将こと
藤原成経が赦免されて帰京の途中に立ち寄った父の新大納言藤原成親(同事件で処刑)の鳥羽の山荘
が荒廃していたという『平家物語』巻三の「少将都帰」のシーンを杉本圭三郎(全訳注)『平家物語
(三)』(講談社学術文庫,1982)の訳で引く(⌒~⌒)

    ・・・家はあるが、羅文は破れ、蔀も遣戸もなくなっている。/「ここで大納言殿は、
    こうしておられた。この妻戸も、このようにして出入りなさっていた。あの木は、
    御自身で植えられただ」/などと、一言ごとに、父のことを恋しそうに言われる
    のであった。三月もなかば、十六日なので、桜花もまだ散り残っている。楊梅
    [やまもも]、桃、李[すもも]の梢は、いまが季節だとばかり、色とりどりに
    花ざかりである。昔の主人はいないけれど、春を忘れず咲く花である。少将は
    花の下に立ち寄って、

     桃李ものいはず 春いくばくか暮れぬる 煙霞跡なし 昔誰か栖[す]んじ

      (桃や李は昔のままに咲いても、何も語らないから、幾度春がめぐり来たか
       知ることができない。たなびく霞は跡がのこらないので、昔ここにだれが
       住んでいたかわからない)

     ふるさとの花の物いふ世なりせばいかにむかしのことを問はまし

      (郷里の花が、もし、ものを言うことができるのであったら、どんなにか
       昔のことを尋ね問いたいものであるのに)

    この古い詩歌を口ずさまれると、[鬼界が島へ流されて赦免された平]康頼入道も、
    折が折だけにしみじみと心をうたれて、涙に僧衣の袖をぬらしたのであった。・・・

この件、桃の三連発(上述のように、「ふるさとの」は本当は桃の花を詠んだ歌)であると同時に、
菅原ジェットストリームアタックにもなってるヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ 「昔の主はなけれども、春を忘れぬ花
なれや」は道真の「東風吹かば」の歌を踏まえ、「桃李ものいはず」の詩句は『和漢朗詠集』に入る
菅原文時(道真の孫)作の漢詩文の一部であり、「ふるさとの」の歌は説話の世界では道真作(^_^;)
このように深読みして、『平家物語』の作者は凝ってるなぁと感心するんだけど、「ふるさとの」の
歌について、杉本圭三郎・前掲書は、

    『後拾遺集』春下に、「世尊寺のももの花をよめる 出羽弁」として載せる。
    『古今著聞集』『十訓抄』は菅原道真の作とする。

と注記も、梶原正昭&山下宏明(校注)『平家物語(一)』(岩波文庫,1999)の注は次の通り(^_^;)

    後拾遺集・春下の出羽弁の歌。故郷の花がもしもの言うことができたなら、
    昔のことをぜひとも尋ねてみたいものよ。
タグ:古典 和歌 説話
コメント(10) 
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コメント 10

tai-yama

鳥羽の山荘よ。私は帰って来た。とガトーさんの様な心境で
つい、道真公の歌をパクったと(笑)。
by tai-yama (2021-08-30 23:49) 

ナベちはる

アニメの用語を普通に使っては、普通は「???」ですよね。
使わないのが良いですが、使うとしたら「用語が通じる友人」だけに限った方がいいですね。
by ナベちはる (2021-08-31 01:04) 

middrinn

少将成経は、自分の歌として詠んだわけではないので、
tai-yama様、パクリに非ずオホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!
by middrinn (2021-08-31 06:04) 

middrinn

ですよねぉ(^_^;) ただ、アニメに興味のない人々にも、
ナベちはる様、浸透しているフレーズもありそう(^_^;)
by middrinn (2021-08-31 06:06) 

そら

梅の木が空を飛ぶとは!
風流ですなぁ(^^)
by そら (2021-08-31 06:46) 

middrinn

梅の木そのものが筑紫まで飛んでったら豪快ですけど、
飛んだのは「梅の一本の枝」なので風流ですね(^_^;)
by middrinn (2021-08-31 06:50) 

美美

毎年咲く花々には私も聞いてみたくなることがあります。
何故ここで咲いているのか
どんな時世を見てきたのかと
でも時に聞かない方が良いこともあるでしょうけど(^^;
by 美美 (2021-08-31 17:31) 

middrinn

例えば、寒いから家の中に入れてくれ~と樹木から言われたら困惑しますね(^_^;)
いつも咲いてくれてありがとうとか話しかけたのが通じるだけでもいいですね(^^)
by middrinn (2021-08-31 18:36) 

yokomi

どなたか太宰府の梅の枝を我が家まで飛ばしてくれませんか(^_^)v 次男の嫁はアニメ系発音(^_^;)
by yokomi (2021-09-02 18:12) 

middrinn

左遷されないと(^_^;)
by middrinn (2021-09-02 19:22) 

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