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230221読んだ本

エメラルダスは双子の姉だったんだ( ̄◇ ̄;) でも、メーテルの方が年上に見え・・ヘ(__ヘ)☆\(^^;

【読んだ本】

山中裕(日本歴史学会編集)『藤原道長』(吉川弘文館人物叢書,2008新装版)

山中裕は本書でも「古記録、いわゆる和風漢文の公卿の日記は、いずれも史実が正確に書かれている
と言われ、古文書とともに大変重んじられるものである。」(本書226頁)と歴史学の研究者として
至極真っ当なことを記す一方(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2023-02-05 )、
古記録の代表格である藤原実資の日記『小右記』の記述の安易な利用について「注意すべきである」
と指摘していた(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2023-02-06 )v( ̄∇ ̄)ニヤッ
しかし、山中裕は更に踏み出しており、チト長くなるけど、本書の「はしがき」から(原文ママで)
引いておく(本書8~11頁)エッ(゚Д゚≡゚Д゚)マジ?

    ・・・/ここで道長の人物像に迫るにあたって、取りあつかう文献についてのべて
    おきたい。・・・/また、古記録に次いで多く用いたのは『栄花物語』である。
    『栄花物語』はその呼び名のとおり、藤原道長の生涯と発展の栄花を、道長の生涯を
    通して叙述したものといわれている。さらに、それ以前に完了した『源氏物語』の
    かたちをまねて、実際の歴史に用いたものとされる。なるほど、巻三十「鶴の林」で
    道長が薨じ、以下の十巻は藤原氏のその後の物語であるというところなども、
    『源氏物語』の影響であろう。/しかし、『栄花物語』には、早くから『世継』
    『世継物語』という呼称もあった。「よつぎ」は、すなわち歴史であり、史書として
    認められていたことは明瞭である。『源氏物語』をまねたといえども、『源氏物語』
    が一貫して光源氏が主人公であるのに対し、『栄花物語』は、正編(三十巻)すべて
    が道長が主役というわけではない。巻一「月宴」は宇多天皇の時代、藤原氏の基経
    からはじまり、巻巻十「鶴の林」の道長の死まで、摂関・太政大臣を占めた藤原氏と
    天皇との外戚関係の結びを詳細に述べていく。いわば、摂関政治の歴史である。/
    しかし、『栄花物語』にも光源氏のような叙述がなきにしもあらずであるが、作者は
    現在の歴史小説のように意図的な虚構を書くつもりはまずなかったと言ってよいと思う。
    一見、虚構のように見える史実の誤りは、意図的な改変ではなく、気が付かぬ史実の
    誤りと見るべきである。/その中には、もちろん、原史料の誤りをそのまま用いて
    しまったものなどもあろう。巻八「初花」の後一条天皇誕生などは、原史料として
    『紫式部日記』をそのまま用いているところも多いが、そうした部分でも紫式部自身
    の私的な感想とか、美的な文章の部分は大幅に省いており、原史料から公的な儀式を
    正確に記しているところのみを採り上げて叙述を進めている。しかも、『紫式部日記』
    の誤りを、ところどころ訂正していることも少なくない。/さらに、編年体には大変に
    こだわっており、「かくて〇〇元年になりぬ」と書いて、元年の史実を月日とともに
    述べていく。これは、六国史・『新国史』の方法をまねたものである。『御堂関白記』
    をはじめ古記録の種類も多いこの時代、『栄花物語』はこれらといろいろと併せ用い
    つつ、摂関時代の歴史を研究するのには、もっと利用されるべきである。/以上のように
    述べたが、といって、私は『栄花物語』が文学・物語であるということを否定している
    のではない。巻々に素晴らしい文学的な場面は多い。しかし、これは物語文学としての
    特徴かというとやや心細い。『源氏物語』などは、作者紫式部の書こうとする主題が明確
    にあり、一貫した内部論理の流れが見られる。『栄花物語』にも、部分的に素晴らしい
    文学的な美・あわれというようなものが充分に見られるのだが、残念ながら『源氏物語』
    のような主題・内部論理との統一が薄いように見える。/もちろん、藤原氏の大臣・摂関
    のうち、後見[うしろみ]の強い家こそ成功していき、後見の弱い家に生まれた皇子は
    東宮・天皇に立つことが難しいなどという論理は、一面文学論ということも出来よう。
    しかし、これは史観と見るべきであると言いたい。したがって、本書に『栄花物語』は
    史料としてかなり多く用いた。これらは『栄花物語』の史実として誤りのない部分である。
    また、史実かどうか、ややあやふやな場面は、確実な文献である『御堂関白記』『小右記』
    『権記』などとよく比較検討して用いたつもりである。/・・・

『栄花物語』の「史実の誤り」は作者の故意によるものでもなければ過失も無いとはヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ
山中裕が本書で歴史物語の『栄花物語』を「史料としてかなり多く用いた」と知って頭に浮ぶのは、
やはり倉本一宏(日本歴史学会編集)『一条天皇』(吉川弘文館人物叢書,2003新装版)で、同書の
「はじめに」は次のように記している(@_@;)

    ・・・/ここで、叙述に使用する史料の問題について述べておきたい。これまでは
    とかく、『栄花物語』『大鏡』などの歴史物語の記述に依拠した平安時代史の
    「一般書」が多かった。もちろん、これらの歴史物語も、正確な原史料を基に
    記述して史実を伝えた部分も多いのであるが、一方では事実を誤った原史料に
    基づいた部分や、作者の創作・文飾・作為の入った部分も、これまた多い。
    したがって、これらの中から史実だけを厳密に弁別して歴史事実や年次の確定を
    行なうのは、私などの力では、よほど困難なことと言わざるを得ない。この本では、
    基本的には、歴史物語を叙述に使用することを控えることとしたい。/・・・

両書の歴史叙述で異なっているところを比較・対照して検討を加えたレヴューはあるのかな(@_@;)
タグ:歴史 伝記
コメント(8) 
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コメント 8

tai-yama

トチロー(アルカディア号の中の人)はメーテルの義理の兄っ!
『栄花物語』なだけに、映画化を前提として作られた・・・・
とかだったら全米も泣いたのに(笑)。
by tai-yama (2023-02-21 23:38) 

ナベちはる

同性の双子なら「パッと見で区別がつきづらい」と思うので、それでいてメーテルが年上に見えるということは実は「双子のようで双子でない」のかもしれませんね(◎_◎;A)
by ナベちはる (2023-02-22 00:26) 

middrinn

藤原道長の生涯に限定するなら映画化は可能も、『栄花物語』は、
ウダダから堀河までを描いているから長すぎてムリかと(^_^;)
tai-yama様、『栄花物語』には泣けるシーンは無さそう(^_^;)
市川崑監督の『細雪』で四姉妹が着物になると観客席の女性から
漏れた溜息のようなものはありそうだけど涙は無さそう(^_^;)
by middrinn (2023-02-22 06:27) 

middrinn

原作漫画のではなく、アニメ、特に劇場版の、
ナベちはる様、作画からの印象ですが(^_^;)
声もメーテルの方が落ち着いた雰囲気(^_^;)
鉄郎の母親のイメージもあるからかも(^_^;)
by middrinn (2023-02-22 07:13) 

df233285

10~11世紀の藤原道長に関連しては知りませんが。
呉座勇一氏が、西暦1381~2年頃の、栃木県の、
小山義政の乱に関して、歴史叙述で異なっているところを
比較・対照して検討を加えた趣旨の研究発表を、同県小山市
の市役所か図書館か小野塚イツ子記念館か、この3者の
どれか付近で、発表されてたのを私が聞いた記憶があります。
意図的、勘違い、両方有りのようでしたが。真面目に研究
している方の例は、藤原道長関連でも、どこかには有るの
ではないでしょうか。
by df233285 (2023-02-22 08:06) 

middrinn

学会誌を始めとするジャーナルが本書刊行時に、同じ人物叢書ですから
言及してそうですけど、叙述を比較・対照した上で、どちらかに軍配を
上げることまでは、流石に期待できないかな(^_^;) 呉座勇一は軍記物
に依拠した小山義正の乱の叙述と古文書や古記録に基づいた同乱の叙述
を比較・対照して検討されたのかな(@_@;) 「170826読んだ本」に
「亀田[俊和]先生の講義、1回栃木県小山市で聞いたことが有ります。
確か、小山義政の乱の、鎌倉大草紙と他一級史料の、イベントの年月日の
比較に関する、研究発表だったような気がします。」とのコメントを頂戴
しましたけど、この乱は知名度のわりに研究者からは人気ですね(^_^;)
by middrinn (2023-02-22 10:40) 

df233285

(追記)前コメ私の「170826読んだ本」のコメは間違いです。
今更ながらですが、この場を御借りし深くお詫び申し上げます。
誠にすみません。以下、そのイベントの案内を記載した参考url.
エイチティティピーコロンスラッシュスラッシュ
nihonshi.sakura.ne.jp/cgi-bin/diarypro/diary.cgi?date=20160601
by df233285 (2023-02-23 07:57) 

middrinn

ともに中公新書から出した著書が売れましたけど、
どっちが『応仁の乱』でどっちが『観応の擾乱』か
この二人は、よく間違えられてそうですね(^_^;)
by middrinn (2023-02-23 09:41) 

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