ネット通販は現物を実見できないので副題(サブタイトル)があるなら必ず表示してほしい(@_@;)

【読んだ本】

倉本一宏編『現代語訳 小右記15 道長薨去』(吉川弘文館,2022)

副題にあるように「道長薨去」が本書のハイライトだけど、本書の序盤に早くもそのシーンは訪れて
しまうので、残り=本書の大半では35歳年下の関白藤原頼通(道長の子)と右大臣藤原実資の関係性
を見極めようと読んでる小生(^_^;) そーゆー視点を設定した理由は、倉本一宏が本書巻頭の「本巻の
政治情勢と実資」という内容紹介&簡単な解説で、この藤原実資の日記『小右記』からちょっとした
ゴシップ的記述を紹介し、ソレに対する従来の「解釈」に異を唱えているのを先に読んだから(^_^;)
その件についてはさておき、その「本巻の政治情勢と実資」に次の記述(本書17頁)もあった(^_^;)

    ・・・/なお、九月二十六日、伊勢の荒祭神(皇大神宮[こうたいじんぐう]〈内宮〉
    の境内別宮)が人に託して、「関白は天下を亡乱している。極めて愚かなことだ」
    という託宣を行なっている。また、大僧正深覚[しんがく]は忌諱を憚らず、関白を
    諷諫し、これに万人が感歎した。頼通の執政態度(と能力)に対する批判は、当然の
    こと、実資の耳にも入っていたことであろう。/

非常に興味深い内容なので、長元2年(1029年)9月26日条の問題の件を本書315頁から引用する(^_^;)

     二十六日、辛巳。 大膳大夫から進物/伊勢御幣使従者を打擲[ちゅうちゃく]した三人
              を禁獄/頼通が天下を亡乱しているとの神託/深覚、頼通を諷諫

    ・・・黄昏、尾張守(平)惟忠が来て云ったことには、「一昨日、入京しました」と。
    雑事を言った。「先日、関白[よりみち]の随身右近番長播磨貞安と雑色二人を獄所に
    下しました。法成寺の材木を曳かせていた際、山科に於いて伊勢御幣使の従者を打擲
    しました。その事によって、禁固されました」と云うことだ。「貞安は獄に拘禁しま
    した。政所の雑色二人は、牢屋に拘禁しました。悩まれていた際、伊勢の荒祭神
    [あらまつりのかみ]が、人に託して雑事を宣したことには、『関白は天下を亡乱
    している。極めて愚かなことだ』と云うことでした。秘して漏らしていません。また、
    この託宣から数日の後、貞安たちの事が、更に発りました」と云うことだ。「また、
    深覚大僧正は忌諱[きき]を憚らず、関白を諷諫しました。万人は感歎しました」と
    云うことだ。

播磨貞安らが「伊勢御幣使の従者を打ち損なふ」事件と「託宣」との先後関係がよく解らん(@_@;)
「悩まるる間、」と、「亦、此の託宣より数日の後、貞安等の事、更に発る」の「更に」とがイミフ
である(@_@;) 「貞安、獄に候ぜしむ。政所の雑色二人、囹圄に禁ず。」の後なら如何にも感のある
「託宣」になるけどね(^_^;) それに、「諷諫」の方もその肝心な内容を記していないところは既視感
だけど(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-11-14 )、望蜀の不満か(^_^;)