撮るならお肌の調子がいい今夜にしてほしいな♡(*'ε`*)チゥとか、お月様も思ってたりして(〃'∇'〃)

【読んだ本】

萩谷朴『枕草子解環 五』(同朋舎出版,1983)所蔵本

花山院に「こゝろみにほかの月をも見てしがなわが宿からのあはれなるかと」(ためしに他所の月を
見てみたいものだ。見る場所がこの家ゆえのすばらしさなのかどうか、知りたいので。)という歌が
あり(訳も工藤重矩[校注]『詞花和歌集』[岩波文庫,2020])、清涼殿から眺める月こそ素晴しい
としていて意味深だけど(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-10-29 )、斯く
の如く同じ月でも見る場所によって異なることを詠んだ和歌は結構あり、有名歌人として西行の歌を
後藤重郎(校注)『新潮日本古典集成 山家集』(新潮社,1982→2015新装版)から訳も引く(⌒~⌒)

    いづくとて あはれならずは なけれども 荒れたる宿ぞ 月はさびしき

     どこであろうとも月があわれでない例はないが、荒れ果てた宿を照らす
     秋の月はことに寂しさのまさるものである。

同書頭注欄の解説によると、この歌は西行の家集『山家集』の〈・・・荒れた所、人里離れた寂しい
所における月の光の「あはれ」を詠じた小歌群。〉の一番最初に収録されている歌ということに(^^)
たしかに「荒れ果てた宿」から見る月が「まさる」というのは「廃墟の美」にも通じ頷けるかと(^^)

    /手入れの行き届かない家の、蓬が茂ったり、八重葎が延[ママ]び放題の庭に、
    月が隅々まで明るく照らし、(夜空に)澄み昇ってるところが(縁先から)眺め
    られるの(が結構)。/或いは、そのような荒れた(屋敷の)屋根板の隙き間から
    洩れて来る月の光。荒々しいというほどではない風の音(がいい)。/・・・/
    ともかく、月の光は、どんなところであっても、趣がある。/

本書の口訳を引いたが、「月の光は、どんなところであっても、趣がある」と結論付けているので、
清少納言の美意識は西行らのとはズレがあるのかな(@_@;) 萩谷朴は本書の語釈で次の指摘(⌒~⌒)

    /第四十二段には、「下種の家に……月のさし入りたるも、口惜し」と、
    「似げなきもの」の一つに数えて、月光の鑑賞にさえ階級意識を持ち
    込んでいたが、ここではそれと矛盾はするものの、むしろ月光の効果を
    絶対的なものと見る唯美主義に徹したものと言えよう。或いは、政官界
    の有為転変を見尽して、区区たる階級意識をも超越した、一つの悟りの
    境地にも達したものか。月光を絶対の美として礼讃する点では、後世の
    藤原定家の『明月記』『松浦宮物語』その他に見られる態度と共通する
    ものがある。/

清少納言らが月光の絶対主義ならば、西行らは相対主義ということかな〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

負の絶対主義なのが白居易(白楽天)で、岡村繁『新釈漢文大系99 白氏文集 三』(明治書院,1988)
298~299頁から「舟夜贈内(舟夜[しうや] 内に贈る)」(0878)を、通釈も含めて引く(返り点は
省略し、一部の字体は異なるし、訳注稿は竹村則行が担当の由)(^^)

  三聲猿後垂郷涙  三聲の猿後[ゑんご] 郷涙[きゃうるゐ]を垂れ、
  一葉舟中載病身  一葉[いちえふ]の舟中[しうちう] 病身を載[の]す。
  莫凭水窓南北望  水窓[すゐさう]に凭[よ]りて 南北を望むこと莫[なか]れ、
  月明月闇總愁人  月明[あきら]かなるも 月闇[くら]きも 總[すべ]て人を愁へしむ。

   二声三声鳴く悲しげな猿の声を聞くと、故郷恋しさに涙を流し、
   一葉舟に寂しく病身を託している。
   しかしお前は、舟の窓によって北の故郷を見やってはいけない。
   月は明るくても暗くても郷愁で人を悲しませるものだから。

解題に「舟旅の夜、妻に贈った詩である。・・・」(本書298頁)、余説には「『白氏文集』巻十五、
「発商州」詩(〇八六六)によると、慌しく国都を出立した白居易は、商州で三日停留し、妻子の
到着を待って一緒に[左遷先の]江州へと赴いた。」(本書299頁)と〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

[追記220418]

白居易(白楽天)にも西行らの相対主義に立つ作品があるのに引いておくのを忘れてしまった(^_^;)
その作品は「華陽觀中、八月十五日夜、招友翫月本書(華陽觀中、八月十五日夜、友を招きて月を翫
[もてあそ]ぶ)」(0627)で、「八月十五日の夜に華陽観に友人を招いて、中秋の名月を賞玩した
詩である。華陽観は道観の名。前詩(〇六一九・〇六二三)に見える。」と解題されてて、本書38頁
から同じように引く(^_^;)

    人道秋中明月好  人は道[い]ふ 中秋明月好[よ]しと、
    欲邀同賞意如何  邀[むか]へて同じく賞せんと欲す 意如何。
    華陽洞裏秋壇上  華陽洞裏 秋壇の上、
    今夜清光此處多  今夜 清光[せいくわう] 此の處多[ところた]ならん。

     中秋の名月はすばらしいと皆が言う。
     そこで君たちを招待して共に賞でたいが、ご意向は如何?
     ことに華陽観の秋壇[←「道観西側の祭祀用の土盛りか。」と語釈]のあたり、
     今夜ここでの月光はことにすばらしいであろう。