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220331読んだ本【バカチン多数】

100円ショップの老眼鏡を本を読む際に使ってるけど、気付いてないだけで中国製だったりして(^_^;)

【読んだ本】

岡村繁『新釈漢文大系117 白氏文集 二下』(明治書院,2007)

白居易(白楽天)の「夜雪[やせつ]」を本書618頁から通釈(「訳注稿」は柳川順子が担当の由)を
含めて引く(ただし、返り点は省略し、一部の漢字は完全に同一なのが無かったm(__)m)(⌒~⌒)

   已訝衾枕冷 復見窓戸明

   夜深知雪重 時聞折竹聲

    已に衾枕[きんちん]の冷ややかなるを訝[いぶか]り、
    復[ま]た窓戸[さうこ]の明らかなるを見る。

    夜[よ]深けて雪の重きを知る、
    時に竹を折る聲の聞こゆれば。

     夜着や枕が妙に冷たいなと思った上に、さらに窓のあたりが明るいのも目に入った。
     夜が更けてきて、降り積もった雪の重みを感知できた。時折、厚く積もった雪で
     竹の折れる音が聞こえてくるものだから。

蛇足だけど、「夜着や枕」の触覚に始まり、「窓のあたり」の視覚、「竹の折れる音」という聴覚で
「雪」が「降り積もった」のを「感知」するという白居易(白楽天)のセンスが凄く、萌えポイント
として、お布団の中に入ったまま出ようとしない白居易のグータラぶり・・ヘ(__ヘ)☆\(^^;チガウダロ!

植木久行『唐詩歳時記』(講談社学術文庫,1995)を披いて、この白居易「夜雪」に目が留まったのは、
坂上明兼が詠んだ『千載和歌集』入集歌、

        呉竹の 折れ伏す音の なかりせば 夜ぶかき雪を いかで知らまし

が明らかに白居易「夜雪」の翻案(パクリ)と気付いたからであって、片野達郎&松野陽一(校注)
『新日本古典文学大系10 千載和歌集』(岩波書店,1993)や久保田淳(校注)『千載和歌集』(岩波
文庫,1986)がそのことに全く触れていないことに驚き呆れ、国文学者の視野の狭さを改めて指摘した
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-02-01 )〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

その後に購入した上條彰次(校訂)『和泉古典叢書8 千載和歌集』(和泉書院,1994)も同様で、三書
とも能因法師の「降る雪や降りまさるらむ夜ふけて籬の竹のひとよ折るなる」を参考歌に挙げるが、
『白氏文集』は既に「承和年間」に「日本にもたらされ」てて、「漢文学のみならず、和歌や『源氏
物語』などを含めた平安朝の日本文学に与えた白居易の詩の影響の大きさと深さには、測り知れない
ものがあ」ると、藤原克己『菅原道真 詩人の運命』(ウェッジ選書,2002)も指摘するところ(^_^;)

さて、さて、さ~て!『新古今和歌集』入集の藤原範兼の歌(詞書の返り点は略)を御覧あれ(^_^;)

          夜深聞雪といふことを

         明けやらぬ 寝覚めの床に 聞ゆなり 籬の竹の 雪の下折れ

「寝覚めの床」に入ったままグー・・ヘ(__ヘ)☆\(^^; これも白居易「夜雪」の翻案(パクリ)(^_^;)

なお、坂上明兼は元は中原氏で(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-12-16
明法博士だし、藤原範兼も東宮学士や大学頭だったので、ともに漢詩文は身近で通じてたはず(^_^;)

なのに、小島吉雄(校注)『日本古典全書 新古今和歌集』(朝日新聞社,1959)、石田吉貞『新古今
和歌集全註解』(有精堂,1960)、窪田空穂『完本新古今和歌集評釈 上巻』(東京堂出版,1964)、
久保田淳(校注)『新潮日本古典集成 新古今和歌集 上』(新潮社,1979)、田中裕&赤瀬信吾(校注)
『新日本古典文学大系11 新古今和歌集』(岩波書店,1992)、峯村文人(校注・訳)『新編日本古典
文学全集43 新古今和歌集』(小学館,1995)、久保田淳(訳注)『新古今和歌集 上』(角川ソフィア
文庫,2007初版)、久保田淳『新古今和歌集全注釈 二』(角川学芸出版,2011)、どれを見ても白居易
「夜雪」に言及していない(^_^;) 田中裕&赤瀬信吾・前掲書は坂上明兼のを参考歌に挙げているが、
久保田淳の三書の評を発行年の順に引く(^_^;)

    /雪を視るのではなく、聴くというところに、本作に先行する「降る雪や
    降りまさるらむさよふけて籬の竹のひとよ折るなる」(『能因集』)と
    ともに、中世的美意識の先取りが感じられる。竹と雪とは和歌のみならず、
    漢詩の世界でもしばしば取り合わされる素材。/

    /▽能因に「夜の雪」の題で「降る雪や降りまさるらむさ夜ふけて籬の竹の
    一節(ひとよ)折るなる」(能因集)、範兼より少し前の坂上明兼にも
    「呉竹のをれ伏す音のなかりせば夜深き雪をいかで知らまし」(千載・冬)
    という作がある。/

    /・・・雪は本来その清白な美しさを見るものである。ところが「聞雪」という
    題を設けている。ここに中世もかなり進んだ時期のそれにも通う美意識を認める
    ことができる。が、それはまた「参考歌」として引いた能因の歌などの存在に
    よって定着したものであろう。能因が中世的美意識を先取りしていると見られる
    一つの例である。/・・・
    
4年前の疑問も解けて、その「題」からして能因法師は白居易「夜雪」の翻案(パクリ)を自白(^_^;)
久保田淳『新古今和歌集全注釈 二』は、「まがきの竹」は「平安時代の用例もあるが、中世でとくに
好まれた句であると見られる」し、「雪の下をれ」も「中世好みの表現である」とも指摘してるし、
相変わらず読ませる評と敬服も、「中世的美意識」だけでなく中国製美意識なことに気付けよ(^_^;)
タグ:中国 古典 和歌
コメント(4) 
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コメント 4

tai-yama

パクリの本場中国と言われるけど、昔は日本の方がパクって
いたのかも。白居易なので白って(パクって)とか(笑)。
by tai-yama (2022-03-31 23:42) 

ナベちはる

100円ショップの老眼鏡、お値段を考えると中国製かと…(◎_◎;A)
by ナベちはる (2022-04-01 00:57) 

middrinn

( ^o^)ノ◇ 山田く~ん 白居易なので白って(パクって)座布団1枚 ♪
tai-yama様、久々に笑ったけど、しかし、よく思い付きますねぇ(^_^;)
by middrinn (2022-04-01 06:05) 

middrinn

重宝してますが、使っていると、たいてい、
ナベちはる様、フレームが折れます(^_^;)
by middrinn (2022-04-01 06:15) 

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