この暑さばかりがクローズアップされてるけどさ、連日の強風にも困り果てているんですが(ノ_-;)ハア…
簾がカチカチと音立てるし、また網戸にして出掛けて降られた日には大変なことになるヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ
同じ理由で網戸にしたまま眠れないし(-ω-、) 街ではショップの幟とか倒れてきて危険だよ(´ヘ`;)

【読んだ本】

紀田順一郎『にっぽん快人物烈伝』(旺文社文庫,1985)所蔵本

「作家・評論家・ジャーナリスト」の14人目は、「焦土文学の旗手」として、坂口安吾だったよ(^_^;)
坂口安吾らしいというか、小生のイメージ通りのおかしな、そして、嫌~な逸話が多かったなぁ(^_^;)

    安吾が矢田津世子という文学少女に夢中だったときのことである。「桜」という雑誌の
    編集プランで、彼は一度俗受けのする企画をたてて、同人たちをびっくりさせた。しかし、
    それが可決されて仲間が編集をすすめていると、次の会合に津世子が出席した。すると
    安吾はたちまち純粋文学を追求する作家に早がわりして、自分の出した編集企画を弾劾
    しだした。友人が「これは君が出したプランじゃないか」となじると、「そんなバカな!
    こんなプランはくだらんよ、実にくだらん」とケンカ腰でいうのだった。

松本清張に推理小説作家としての才能があることを芥川賞の選評で指摘していたことを小林信彦がよく
紹介してたけど、たしかに坂口安吾の本質を見抜く能力は凄い(^^) その凄さと限界を示してる一例を、
坂口安吾「日本文化私観」同『堕落論』(角川文庫,1957)から引いておこう(⌒~⌒)ニヤニヤ

    三年前に取手という町に住んでいた。・・・/この町から上野まで五十六分しか
    かからぬのだが、利根川、江戸川、荒川という三ツの大きな川を越え、その一つの
    川岸に小菅刑務所[現在の東京拘置所]があった。汽車はこの大きな近代風の建築物を
    眺めて走るのである。非常に高いコンクリートの塀がそびえ、獄舎は堂々と翼を張って
    十字の形にひろがり、十字の中心交叉点に大工場の煙突よりも高々とデコボコの見張りの
    塀が突っ立っている。/もちろん、この大建築物には一ヵ所の美的装飾というものもなく、
    どこから見ても刑務所然としており、刑務所以外の何物でもあり得ない構えなのだが、
    不思議に心を惹かれる眺めである。/それは刑務所の観念と結びつき、その威圧的なもので
    僕の心に迫るのとは様子が違う。むしろ、懐かしいような気持である。つまり、結局、
    どこかしら、その美しさで僕の心を惹いているのだ。利根川の風景も、手賀沼も、その
    刑務所ほど僕の心を惹くことがなかった。/いったい、ほんとに美しいのかしら、と、
    僕は時々考えた。

この後の「小菅刑務所」=東京拘置所(その後、全面改築されたため「旧・」の冠が厳密には付く)の
建物の「美しさ」の分析が坂口安吾の「限界」をも示してるんだけど、面倒だから、今回は省略(^_^;)

    日本の監獄建築界には、これまで三人のスターが出ている。・・・/そして[山下啓次郎、
    後藤慶二に続く]もう一人のスターが、昭和五年、小菅刑務所(今の小菅の東京拘置所)
    を手がけた蒲原重雄である。/刑務所の建築家というものが、ビルや住宅を作る普通の
    建築家とはまるでちがった心理状態にあり、余人にはうかがいしれない表現意欲を秘めて
    いることは小菅のこの建物の前に立ったらすぐ分かる。/中央にスックリ延びる塔を立て、
    この根元から左右に建物を張り広げる。色は、大胆にモスグリーン。/かようなポスト
    モダンなデザインを見て、これが刑務所と分かりますか。設計者は何を考えてたんだろう。
    ツル、そう、タンチョウかナベヅルがいましも大空に飛び立とうとするその一瞬をとらえた
    デザインにちがいない。正面からの写真では分からないが、塔の先端はくちばしみたいに
    キューッと前面に張り出し、左右に延びる建物の側面には羽根の先のような庇がつき、
    正面玄関の壁には鳥の爪先のような窓が開いている。おそらく、折り鶴を製図台の上に
    載っけて図面を引いたんじゃないか。/カゴとかオリにちがいない刑務所の建物を大空を
    飛ぶ自由な鳥のように・・・・・・せめてデザインだけでも、と蒲原は考えていた。/
    しかし、いくらカゴがトリの真似をしても、カゴのトリにとってはカゴはカゴだ。

藤森照信(文)&増田彰久(写真)『建築探偵』(朝日文庫,1997)から引いたけど、旧・東京拘置所の
建物から鳥の姿を見て取った坂口安吾の一文にも言及すべきだったし、また刑務所とは全く目的が異なる
少年院の建築でも鳥をイメージした施設が存在することを、藤森照信は御存知ないようですねぇ(^_^;)  

朝から眠いことを言い訳に予定を変更して、某書を読了することにした(^_^;)