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220622読んだ本【バカチン】

先行訳があればフツーは参照するはずで、どうして岩波文庫が誤訳したのか理解に苦しむ(@_@;)

【読んだ本】

前野直彬(編訳)『中国古典文学大系24 六朝・唐・宋小説選』(平凡社,1968)

本書の「唐」に作者不明の〈七 江総「白猿伝」補説〉も収録(^^) 梁の南方征討軍の別動隊を率いる
欧陽紇[おうようこつ]の美人妻が陣中から何者かにさらわれたか消えてしまったのだが、本書155頁
から引く(^^)

    ・・・それから一月[ひとつき]も過ぎたころになって、百里も離れたところの笹薮から、
    妻のはいていた刺繍のある靴の片方が見つかった。・・・それからまた十日あまりたった
    のち、宿舎から二百里ほど離れたところまで来た。・・・清らかにも静かな、俗世を遠く
    離れた別天地であった。/さて東を向いて開けた石門のところに、数十人の女がいる。
    ・・・そばへ行くと、/「どうしてここへおいでになりました」/とたずねる。紇がわけ
    を話すと、顔を見あわせながら溜息まじりに言った。/「奥さまは一月あまりも前から、
    こちらへ来ていらっしゃいます。・・・
    
姿を消して「一月」後に靴を発見し、更に「十日あまり」経った後の某所に「一月あまりも前から」
美人妻が来ていた由、「一月」+「十日あまり」=「一月あまり」で、不自然なところは無い(^^)v

なのに、今村与志雄訳『唐宋伝奇集(上)南柯の一夢 他十一篇』(岩波文庫,1988)の無名氏による
「1 白い猿の妖怪──補江総白猿伝」の当該件は次の通りであるヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!!

    ・・・/数か月たって、ふと、百里はなれたところで小竹のしげみから、刺繍のある
    妻の履物の片方を発見した。・・・さらに十日あまり探索をつづけて、駐屯地から
    約二百里離れたところで、・・・/・・・静かですがすがしく、この世と思われぬ
    不可思議な境地であった。岩窟の東向きの門のところで、数十人の女が・・・門を
    出たり入ったりしていた。/・・・そこに着くと、女たちが訊ねた。/「どうして
    ここへ来たの?」/欧陽紇が詳しく説明してそれに答えた。女たちは顔を見合わせて、
    嘆息した。/「奥様は一月あまり前ここに来ましたのよ。・・・

「数か月たって」が誤訳であることは竹田晃&黒田真美子(編)成瀬哲生(著)『中国古典小説選4
古鏡記・補江総白猿伝・遊仙窟〈唐代Ⅰ〉』(明治書院,2005)で原文確認済で、「また、つまらぬ
物を読んでしまったorz」(⇒ https://yomunjanakatsuta-orz.blog.ss-blog.jp/2018-07-01 )に
昔書いたけど、原文を見なくてもサルでもわかる誤訳なのに手元の岩波文庫は第16刷ヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ
タグ:小説 中国
コメント(6) 
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コメント 6

tai-yama

某キャンプ場の様に、靴が発見され、さらに人骨が・・・・
とならなかっただけ良かったと。一月あまりはきっと、"40日=ひと月
と10日余り" の意味だったり(笑)。
by tai-yama (2022-06-22 23:18) 

ナベちはる

初めて訳するなどならともかく、既に例があったのに誤訳とはなぜかと気になりますね((+_+))
by ナベちはる (2022-06-23 01:06) 

middrinn

何しろ、美人妻ですからね、生きてたから良かったと、
tai-yama様、言えるのかどうかビミョーかと(@_@;)
by middrinn (2022-06-23 05:54) 

middrinn

本邦初訳だったなら誤訳もありがちですけど、
ナベちはる様、参照しなかったのかな(^_^;)
by middrinn (2022-06-23 06:29) 

yokomi

ひっょとしたら現代も、かも知れませんか、1冊の本だけで真実を知って気になってはいけないのですね(>_<) 岩さんは人手不足で単に16回も増し刷りしていたのですね。恐ロシア(>_<)
by yokomi (2022-06-23 09:51) 

middrinn

「原文を見なくても」サルでもわかる誤訳と明言してる通りで、
この岩波文庫「1冊の本だけで」、少なくとも誤訳の可能性が
高いと気付くはずで読解力の無いサル以下が多くて16刷(^_^;)
by middrinn (2022-06-23 10:43) 

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