読書の厄介なところは、興醒めするようなことが書かれている本である〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

【読んだ本】

清水好子『王朝女流歌人抄』(新潮社,1992)所蔵本

植木久行『唐詩歳時記』(講談社学術文庫,1995)が(前にも引いたけど)〈六朝・宋の陸凱が作った
短い四句の古詩「范曄に贈る」〉を紹介している件が好き(〃'∇'〃)

    ・・・

     花を折りて駅使に逢い
     隴頭の人に寄与す
     江南は有る所無し
     聊か一枝[いっし]の春を贈る

    隴頭とは、今の陝西省隴県の西北にある隴山の頭[ほと]り(北魏の長安)の意。私の
    住む江南地方(長江下流の南、南朝の都健康)には、君に贈るべきものとて何もないが、
    とりあえずこの咲きにおう一枝の春を贈ろう。君のいる隴山のほとりは、春の訪れが遅い
    というから。「一枝[ひともと]の春を贈る」とは、なんと清新な友情表現であろうか。
    「一枝の梅を執っ」て贈った使者の話(『説苑』奉使篇)を踏まえつつ、それを「春」の
    字に言い換えることによって、春の色と香りをただよわせた手腕は、まさに非凡である。
    /・・・

本書のこの件、何度読んでもいいなぁウキウキ♪o(^-^ o )(o ^-^)oランラン♪ 言うまでもないが、陸凱の
「一枝の春(を贈る)」という表現の素晴しさが先ずあるわけだけど(〃'∇'〃) 「一枝の春」という
表現が『和漢朗詠集』に入っている紀斉名の作とされる漢詩句でも用いられていることを知ったが、
川口久雄(全訳注)『和漢朗詠集』(講談社学術文庫,1982)の訓み下し文と現代語訳で引く(´・_・`)

    聞き得たり園の中に花の艶なるを養ふことを

    君に請ふ一枝[いっし]の春を折らんことを許せ

     君の宿という花園には、すばらしい花々が養い育てられていると聞きました。

     なにとぞその美しい春の盛りの花一枝を手折ることを私に許してはいただけない
     でしょうか。

同書は〔語釈〕で「一枝の春を折る」を「美女を一枝の春の花にたとえ、折るに、男女の意がある。
・・・」と解し、〔参考〕で「・・・美人を一人私に頂戴したいの意。」としており、その通りなん
だろうけど、植木久行『唐詩歳時記』の上記の件を読んだ後では、興をそぐものでしかない(-ω-、)
清水好子も次の如くで、まるで陸凱が友人に美女を贈ったかのように思えてきて更に興醒め(´ヘ`;)

    ・・・〝一枝の花〟は漢詩以来美女を意味し、公任撰といわれる『和漢朗詠集』にも
    「聞き得たり、園中に花艶なるを養ふことを。請ふ、君一枝の春を折ることを許せ」
    (巻下雑恋 紀斉名[ときな])があり、唐の名妓に「一枝花」という美女がいて、
    白楽天もよく話題にしたという。・・・

でも、渡部英喜『漢詩歳時記』(新潮選書,1992)に陸凱「范曄に贈る詩」から〈「一枝の春」も梅の
別名になりました〉(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2021-03-13 )(ノ_-;)ホッ…