3週連続でメチャ高い古本をネットで注文したら、30万円もらえるのかと誤解されそうヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ

【読んだ本】

中西進『辞世のことば』(中公新書,1986)所蔵本

    /太田道灌といえば山吹の故事と切り離すことができない。雨にあって民家に蓑を借り
    ようとした時、一人の少女が山吹の枝をさし出したという話である。道灌がその意味を
    理解したのは、後に「七重八重花は咲けども山吹のみの一つだに無きぞ悲しき」
    (『後拾遺集』)の古歌を知ってからだったという。/これを恥じた道灌は歌を学ぶ。
    そしてある時の合戦に山川を渡ろうとしたが、思うようにいかない。その時、道灌いわく、
    古歌に「底ひなき淵やは騒ぐ山川の浅き瀬にこそあだ波は立て」というから、
    波の立っているところを者ども渡れ、といって無事前進できた──。幼いころに読んだ
    『常山紀談』の、もっとも面白かった部分である。/・・・

前段は有名な伝説で誤りもないけど、『後拾遺和歌集』の中務卿兼明親王の歌を、例えば、藤本一恵
(全訳注)『後拾遺和歌集(四)』(講談社学術文庫,1983)の訳で引く( ̄ヘ ̄)y-゚゚゚

      小倉の家に住み侍りけるころ、雨の降りける日、蓑借る人の侍りければ、
      山吹の枝を折りてとらせて侍りけり。心も得でまかり過ぎて又の日、
      山吹の心も得ざりしよしいひおこせて侍りける返りごとにいひつかはしける

    ななへやへ花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞあやしき

       小倉の家に住んでいましたころ、雨の降った日、蓑を借る人がいましたので、
       山吹の枝を折って与えました。その人は、そのわけがわからなくて帰りまして
       翌日、山吹の意味がわからなかったことをいいよこしてきました返事に
       詠みおくった歌。

     七重八重に花は咲くけれど、山吹の花は実の一つでさえもないのはふしぎなことよ、
     ──ご所望の蓑はわが家に一枚もないのです。

太田道灌の山吹伝説は『後拾遺和歌集』の兼明親王の歌の詞書から創作された気がしてならないけど、
第五句は「なきぞあやしき」で、道灌の山吹伝説の「無きぞ悲しき」とは実は異なっている(⌒~⌒)
伝説は異本から創られたんだろうけど、定本のと異なることも注記すべきかとオホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!

多くの伝本を校合して(語句を写し間違えた写本とかあるため)、専門家が原本に近い定本とした
『後拾遺和歌集』とは異なるのに「(『後拾遺集』)」と注記しながら、後段の「底ひなき」の歌は
何故か『古今和歌集』(この歌の作者は素性法師)に入っていることを記してない( ̄◇ ̄;)ナンデ!?

小町谷照彦(訳注)『古今和歌集』(ちくま学芸文庫,2010)は同歌の訳を「底知れぬ深い淵は静かに
水をたたえていて水音も立たない。山川の浅瀬にこそあだ波は立つのだ。」とし、補注で次の指摘(^^)

    口先だけ上手な人間とは異なっている、自分の誠意がわかってほしい、という暗示的な歌。

同歌は実は『古今和歌集』の恋歌に入っているんだよね(⌒~⌒) 「道灌は歌を学」んだとあるけど、
文字面の解釈だし、しかもソレを利用してて、「口先だけ上手な人間」に思えちゃうC= (-。- ) フゥー