ネタは沢山あれど記事原稿ストックはナシオン主権でその日に読んで調べたことを書くだけ_φ( ̄^ ̄ )

【読んだ本】

淸水龍山(閲)音馬實藏(譯)『國譯扶桑隱逸傳』(平樂寺書店,1930)所蔵本

    ・・・遂に老を古曾部に終ふ。將に死せんとするとき自ら多年の吟稿を取りて。
    深く土中に埋む。/

『扶桑隠逸伝』中巻の「能因」の末尾を本書の訳で引いたけど(以下の引用も含め漢字の字体は一部
異なる)、目崎徳衛『平安文化史論』(桜楓社,1968)所収の「能因の伝におけるニ、三の問題」や
藤岡忠美(校注)『新日本古典文学大系29 袋草紙』(岩波書店,1995)、はたまた尾崎雅嘉(著)
古川久(校訂)『百人一首一夕話(下)』(岩波文庫,1973)にも見当たらぬ情報なんだが(@_@;)
著者の元政上人による賛には次のようにある(@_@;)

    /賛に曰く。余嘗て金龍寺の僧の需[もとめ]に憑[よつ]て。能因が傳一卷を
    艸[さう]す。博[ひろ]く捜[さぐ]り旁[あまね]く索[もと]めて。
    筆削粗[あらあら]備れり。頃[このごろ]又敗册[はいさく]の中を探りて。
    其稿を埋むの事を得たり。是に於て自ら捜索の至らざることを惜む。昔林和靖。
    僧佚老[いつろう]。皆嘗て稿を留めず。此れ蓋[けだし]名根の枯槁[こかう]
    せるに由りてなり。只後死[こうし]の者の考ふる所なきことを奈[いかん]せん。
    能因が此事太[はなはだ]奇なり。必ず當[まさ]にこれを取りて以て彼艸
    [かのさう]を補ふべし。/

この『扶桑隠逸伝』は江戸時代に著されたものゆえ、平安時代の能因法師に関しては『袋草紙』以上
の情報は出てこないと思っていたから意外(@_@;) これが史実かどうかはモチ判らんけど(@_@;)
「林和靖」は北宋の詩人の林逋のことで、wikiの「林逋」の項の〈一生仕えず廬のそばに墓を造り、
「司馬相如のように封禅書を遺稿として用意してはいない」と詠み、国事に関心がないことを自認し
ていた。〉という逸話のことを指しているのかしら(@_@;) 「僧佚老」は誰のことだろう(@_@;)