◇正宗[白鳥]先生と銀座を歩いている時だ。人ゴミの中を歩いていても先生は目が速い。
    「いま、あそこへ行ったのがツボイサカエだ」
     と教えてくれた。ふり返ったが、どの人だかわからなかった。
    「ツボイサカエというのは男ですか? 女ですか?」
     ときくと、
    「女だ」
     と云うのである。(ウチにはサカエという甥がいるけど)と思っていると、
    「君はナンニモ知らんな、知らんからいいかもしれんな」
     と、うまいことを云って下さったので、ついでに、
    「いくつぐらいの人ですか?」
     ときいた。
    「いくつぐらいになるかなあ」
     と考えてるらしいので、
    「〝二十四の瞳〟を書いた人でしょう、まだ子供でしょう」
     と云うと、
    「いや、四、五十位になるだろう」
     と云うのである。(ボクのカンでは、もの云うことも出来ない)と思った。家へ帰って、
    「ツボイサカエというのは女だぞ」
     と云うと、弟が、
    「そんなことを聞いてしまったのか」
     と驚くので、
    「知らなかったから聞いたのだ、誰だって、はじめから知ってる奴があるもんか、
    そんなことを云うなら、てめえ知っていたのか」
     と文句を云うと、
    「そんなことは聞かないでも、黙っていれば自然にわかることだ」
     と云うのである。
    「自然に?」
     とききかえすと、
    「ふだん、注意していて、新聞や雑誌の写真を見ていて覚えるのさ」
     と云うのである。(そいつは大変だ!)と思った。(そんなことじゃ、これから、
    夜もおちおちねむれなくなりゃしないか)と思った。・・・

深沢七郎『言わなければよかったのに日記』(中公文庫,1987)は何回読んでも気持ちいいな(〃'∇'〃)
たしかに「黙っていれば自然にわかること」はあるし、話したり書いたりして恥を掻く必要もない^_^;
メチャクチャ寒くて靴下をヒートテックのに履き替えたし、メチャクチャ眠くて何も出来ない(´ヘ`;)

【読んだ本】

永井路子『絵巻』(角川文庫,2000)所蔵本

朝日朝刊連載コラム「呉座勇一の歴史家雑記」の最終回「歴史学にロマンはいらない」から引く(@_@;)

    最近、私はあちこちで、歴史小説家が「歴史の真実」を解き明かそうとすることの危険性を
    語っている。・・・/110番通報があって警察が現場に駆けつけた時、血まみれの女性が
    横たわっていて、側に包丁を持った夫らしき男性が呆然と立ちつくしていたとする。もし
    これがミステリー小説・ドラマなら、夫は無実で真犯人は別にいるという展開になるだろう。
    だが現実に起こった事件だったら、十中八九、夫が犯人だ。/歴史的事実もこれと同じで、
    調べてみるとつまらない結論になることが多い。だが小説家は職業柄、話を面白くしよう
    として、ひねった解釈を提示する。・・・

この『応仁の乱』(中公新書)で売れっ子となった歴史学者のコラムは毎回興味深かった(^^) しかし、
〈歴史小説家が「歴史の真実」を解き明かそうとする〉作品とは誰のを指しているのか、読書家でない
小生には見当が付かない(^_^;) 「ミステリー小説」作家や「ドラマ」脚本家の手による歴史小説か^_^;
実はコレを26日に読んだ時、歴史学者(特に若手)にも名を揚げたりポストを得るために「話を面白く
しようとして、ひねった解釈を提示する」(歴史修正主義の)人がいるだろうし、他方で、小説家でも
永井路子なんか奇を衒った歴史解釈しないじゃん・・・などと、ここに書かなくて良かった日記(^_^;)

【買った本】

戸板康二『泣きどころ人物誌』(文春文庫,1987)

もったいない本舗楽天市場店で「良い」169(229円-60p)円(´・_・`) 20pくじ3回しか当たらず(-ω-、)