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220723読んだ本

事前に予告されてたとはいえPV数が激減したショックで更新を止めるSSブログ主もいたりして(^_^;)

【読んだ本】

井上靖『ある偽作家の生涯』(新潮文庫,1956→1970改版)所蔵本

森田悌(全現代語訳)『日本後紀(上)』(講談社学術文庫,2006)の中で一番驚き印象に残ったのは
行賀の卒伝(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-02-20 )で、「僧行賀の涙」
という短篇小説を井上靖が書いてるのを知り、同作品を収録している本書を購入して読んだところ、
漢文の訓読は疑問も満足(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-02-24 )(^_^;)
今谷明『信長と天皇 中世的権威に挑む覇王』(講談社現代新書,1992)に「因みに、この松姫[武田
信玄の娘]の生涯については、故井上靖氏の短篇『信松尼記』に美しく描かれている」とあり、本書
で「信松尼記」も読んだ(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-06-13 )(^_^;)
烏孫公主について調べた(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-06-19 )流れで
本書所収の短篇小説「漆胡樽[しつこそん]」も読んでみたが、二千年前の大陸へタイムトラベルに
連れて行かれたような感(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-07-08 )(^_^;)
表題作「ある偽作家[ぎさくか]の生涯」は橋本関雪(←もしTwitterとかやってたなら即炎上しそう
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-07-09)の贋作を描いていた実在の人物を
モデルにした小説で面白い(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-07-13 )(^^)
続けて、本書所収の短篇小説「玉碗記[ぎょくわんき]」を読んだ(^o^)丿 芸術新潮1991年4月号の
追悼特集「井上靖 美への眼差し」は次のように紹介している(^^)

    ・・・小説「玉碗記」の主人公は、安閑天皇の玉碗と伝わるガラス碗と、これと瓜二つ
    だという正倉院の白瑠璃碗である。昭和二十五年、安閑天皇の玉碗が発見された直後に、
    二つの碗は同じ場所に並べられ、学術調査が行われた。当日、熱を出してしまって調査
    に立ち会えず、病の床で玉碗の夢ばかり見ていたという[美術担当の新聞記者]井上は、
    この二つの碗がペルシャかどこかで同一人物によって作られ、同時に日本に渡りながら、
    離れ離れになったまま今日に至ったものと考えた。そしてこの〝夫婦碗〟が千何百年かの
    歳月を経て、ここに邂逅したことを「ひどくロマンチックに」感じ、その運命的な邂逅を
    安閑天皇と春日皇女の夫婦の機微に重ねて書いたのが、小説「玉碗記」(昭和二十六年)
    である。/

流石、芸術新潮と言うべきか、作品の紹介の仕方が上手いな(^_^;) モチ二つの碗の写真も掲載(^^)
井上靖『忘れ得ぬ芸術家たち』(新潮社,1983)で「安閑天皇の玉碗」「白瑠璃碗を見る」の二篇の
随筆も読んだが、前者は上述の「漆胡樽」にも言及してて、同書の155~156頁と158頁から引く(^^)

    ・・・/私は以前にも正倉院の「漆胡樽」を見た時やはり同じように、それが東漸の
    経路を小説に書いてみたいと思って、同名の小説に書き上げたことがある。この方は
    漆胡樽そのものが、何に使用されたものかさえも詳しくは判らず、江上波夫氏のお宅に
    伺って、江上氏の意見を伺ったり、美術研究所の松下隆章氏はじめ何人かの方々から
    それについての考えを聞かせて貰ったりして、全く初めから仕舞いまで、自分の自由な
    想像で小説に書いてしまった。漆胡樽の方は往古砂漠地方で使われた液体の容器で
    あろうぐらいのことしか知られていなかったので、前記の専門家諸氏の意見を伺った
    だけで、のびのびと筆を走らせることが出来たが、「玉碗記」の方は、それが発見
    された直後ではあったし、それが学界から注目されるべき価値を持とうとしている
    矢先であっただけに、あまり自由な想像を駆使することはできず、作品としては
    自分ながら不出来なものになってしまったと思っている。/・・・

    ・・・/私は、漆胡樽という作品では、全く一つのロマンとして、漆胡樽が日本へ
    来るまでの経過を一篇の物語として書いたが、玉碗の場合は、それだけの度胸は
    なかった。玉碗が発見されて、対照調査が行われるまでの経過を殆ど事実に基づいて
    書いて、二個の往古の器物が長年月を経て相会う運命を、現代の一組の男女の運命と
    からませて書いた。/・・・

美術担当の新聞記者だったからか、こんな短い小説でも、井上靖はちゃんと取材して調べた上で執筆
してたとはね( ̄◇ ̄;) 百目鬼恭三郎『現代の作家一〇一人』(新潮社,1975)が「井上の資料調べ
は徹底して」て「歴史小説を書くまでの準備はたいへんなことがよくわかる」と井上靖『歴史小説の
周囲』というエッセイ集を紹介してたのを思い出す(^_^;) この随筆「安閑天皇の玉碗」によると、
「玉碗記」の「東京のI博士」とは「石田茂作博士」(同書156頁)、「京都の大学のU博士」とは
「梅原末治博士」(同書157頁)と判明(^_^;) となると、「漆胡樽」で名前だけ挙がっていた「京都
のH教授」「京大のN博士」「Kさん」といった「美術史家や考古学者」も実在の人物かもね(^_^;)
ノンフィクション的な部分は有益だったけど、フィクション=小説要素である「現代の一組の男女の
運命」(←モチ「安閑天皇と春日皇女の夫婦の機微」に非ず)が小生にはよく解らなかったな(^_^;)
ところで、この二つの碗、芸新の写真を見ると、たしかにそっくりなんだけど、何か違うような気が
すると思ってたら、同書159頁に次の件が(^_^;)

    ・・・/安閑陵出土の玉碗と御物「玻璃碗」との対照調査の結果は、二つのガラス器
    とも、質も直径も、高さも、カットの大きさ、カットの数も全く同じであり、厚さと
    碗のふくらみに僅かの差があったということを、梅原博士の報告は伝えている。/・・・
コメント(16) 
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コメント 16

ナベちはる

PV数が激減すると、ショックを受けますよね(^^;)
実際にそれで更新するのをやめた方、いるかもしれないですね。
by ナベちはる (2022-07-24 01:02) 

middrinn

心が折れてしまう人もいますよね(^_^;)
by middrinn (2022-07-24 05:59) 

df233285

はぁ。珍しく「What's new?
SSブログの最新情報をお知らせします。」が有ったんですね。
当方のブログは、ロボットの割合は平均より多いと思うので、
ここと違って、順位低下は気にせず織り込み済みです。
by df233285 (2022-07-24 07:40) 

middrinn

What's new?の説明を読んでも情弱な小生はイミフでしたが、
どかーん!とPV数は激減(半減以上!)しましたよ(^_^;)
by middrinn (2022-07-24 07:52) 

そら

そりゃぁ〜PV数減るのはショックですよね
でもnice数とかコメント数とかPV数とか気にしながら続けるのも
精神的にキツいです、やっぱりのんびりと、自分の居場所ですもん(^^)
by そら (2022-07-24 08:38) 

middrinn

反応・反響を視野に入れることなく、溜め込んでしまった胸のうちを吐き出して
カタルシス効果を得ることが目的となると、思わぬ問題が生じる危険も(^_^;)
by middrinn (2022-07-24 09:38) 

Cazz

そんなことがあったのも知りませんでした^^
お知らせも読んでないし。いかにサボってるか、ですね。
by Cazz (2022-07-24 18:21) 

middrinn

「What's new?」は管理ページに表示されなくなったから、仕方ないですよ(^_^;)
SSブログのトップページの右下にありますから、読者登録すると新着通知が(^_^;)
by middrinn (2022-07-24 18:31) 

tai-yama

「玉碗記」はPV数の激減を恐れて書けなかったとかだったり(笑)。
ペルシャではただの土産用の碗だった可能性もありそう・・・
by tai-yama (2022-07-24 23:13) 

middrinn

シルクロードの道の駅で売ってたりして(^_^;)
by middrinn (2022-07-25 05:45) 

yokomi

シルクロードファンで有り、井上靖の作品は少しだけ読んでます。二つの碗はロマンですね。西域の道の駅で探したいです(^_^;)
by yokomi (2022-07-25 17:52) 

middrinn

安閑天皇陵と正倉院とに分かれて「千何百年」ぶりに並んだわけですけど、
同じ日本国内に存在したので、それほどロマンは感じなかったです(^_^;)
by middrinn (2022-07-25 19:36) 

ぽ村

あ、やっぱ減ってますよね?
一週間くらい半分くらいしか人が来ないなーって…予告とか全く知らないんですけどなんかあったんですか?
by ぽ村 (2022-07-25 22:42) 

middrinn

返信コメに書いた「What's new?」で「予告」されてます(^_^;)
by middrinn (2022-07-26 04:46) 

ぽ村

ドモヽ(´Д` ) ( ´Д`)ノドモ
管理ページの通知が無くなってから見るの久しぶりですわ…
by ぽ村 (2022-07-26 21:31) 

middrinn

ヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪
by middrinn (2022-07-27 06:32) 

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