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220705読んだ本

ダージリン(仮名)「お姉様、就職したんですって?」、西住みほ(仮名)「うん、信用金庫にね」、
カチューシャ(仮名)「信用金庫って、危なくね?」といった3人の女子高生による他愛もない会話が
数日後に豊川信用金庫で取り付け騒ぎを惹き起した1973年の事件とは、マートンの自己成就予言(^_^;)
つまり、本来なら予言内容が間違ってるので実現しないはずだが予言されたことで実現しちゃう(^_^;)

【読んだ本】

倉本一宏編『現代語訳 小右記 14 千古の婚儀頓挫』(吉川弘文館,2022)

藤原実資の日記『小右記』の万寿2年(1025年)10月20日条の最後の件にイミフなところがあって、
本書42頁から引く(@_@;)

     二十日、戊辰。 政/京官除目/藤原能信に油火の怪異/小一条院女房、道長子女死ぬ夢想

    ・・・/参入した上達部は、大納言三人〈行成・頼宗・能信。〉、中納言三人〈実成・
    道方・朝経。〉、参議五人〈経通・資平・通任・定頼・広業。〉。関白[藤原頼通]が
    云ったことには、「先夜、大納言能信に油火[あぶらび]を立てた。これは怪異である。
    今、占うと、『特に重いわけではない』ということだ。ところが、『慎しまなければ
    ならない』ということだ」と。或いは云ったことには、「前日、院の女房の夢に、
    『入道殿(道長)の男子や女子は、死ぬであろう』ということであった。尚侍[藤原
    嬉子]は夢想に合った。『その後、関白以下は恐懼した』と云うことだ。ところが、
    この怪異が有ったのは、如何であろう」と云うことだ。

第一に「一夜、大納言能信に油火を立つ。是れ恠なり。」がイミフ(@_@;) 「油火」はフツーに古語
辞典にも載ってるが、何がどう「恠=怪異」なのか解らないし、そもそも「油火を立つ」というもの
がどのような状態なのかもさっぱり解らぬ(@_@;) 当の本人=藤原能信は「参入」してるわけだし、
心身に異常が起きた感じはしない(^_^;) 国際日本文化研究センター「摂関期古記録データベース」で
「油火」を検索しても、他にヒットするのは同じ『小右記』の万寿2年(1025年)10月29日条で、当該
件を本書50頁から引くが、結局、イミフなまま(@_@;)

     二十九日、丁丑。 備前守からの進物/後院司を宣下/平孝義、馬を道長家の他、
              実資・行成に贈る/能信、実資の言により金剛般若経を転読

    ・・・昨日、事の次いでに、私が(藤原)為盛朝臣に問うて云ったことには、「中宮
    権大夫(能信)は、油火の怪異によって、重く慎しまれているということを、云々して
    いる。如何か」と。為盛が云ったことには、「内外に、特にその慎しみを致します」と。
    私が云ったことには、「自ら金剛般若経を転読され、厄会を消除するか」と。今日、
    為盛の子左衛門佐(藤原)親国が云ったことには、「為盛は、すぐに長秋納言(能信)
    に伝え談りました。そこで明日、読み奉るということを、承っているところです」と
    いうことだ。

第二に関白頼通の発言内容の後半部分について、本書の巻頭の「本書の政治情勢と実資」で倉本一宏
は「万寿二年(一〇二五)十月十九日、小一条院の女房が、藤原道長の子女は死ぬことになるという
夢を見た。藤原嬉子[よしこ]はこの夢想に合ってしまったと、藤原頼通以下は恐懼したということ
である。道長子女の死に際して、さまざまな憶測が飛び交っていたのである。」(本書11頁)と解説
しているが、〈関白、・・・或いは云はく、「前日、院の女房の夢に、『入道殿の男子・女子、死ぬ
べし』てへり。尚侍、夢想に相合ふ。『其の後、関白以下、恐懼有り』と云々。而るに此の恠有るは、
如何」と云々。〉とあり、『其の後、関白以下、恐懼有り』は「院の女房の夢」の内容かと(@_@;)

この小一条「院の女房の夢」想=『入道殿の男子・女子、死ぬべし』だけど、この時点で既に寛子
(小一条院の女御)と嬉子(東宮[=後朱雀天皇]の女御)の二人が亡くなってて後出し感があり、
その後、姸子(三条天皇の中宮)と出家してた顕信が道長より先に亡くなるが(本書231頁の万寿4=
1027年]5月15日条に「・・・昨夜、入道馬頭(藤原顕信)が、無動寺に於いて遷化した〈禅閤[道長
]の子。高松(源明子)腹。年は三四歳。〉。/・・・」)、この夢想は的中と言えるのかね(^_^;)
この夢想が耳に入ったので頼通は健康に留意するようになり長生きしたのなら、自己破壊予言(^_^;)
つまり、本来なら予言内容が正しいので実現するはずだったけど、予言されたことで実現せず(^_^;)

・笠置寺の僧の「左大将[藤原]公季は、十二月に必ず死ぬ」という予言は大ハズレだったね(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-08-25

・「或る女が、右宰相(顕光)が今年十一月七日に必ず死ぬという夢を見ました」も大ハズレ(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-09-06

・姸子に「・・・故堀河左府・尚侍の霊等、出来す」と、延子の霊ではなく嬉子の霊なのが謎(@_@;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-07-04

・パワハラに抵抗して拘引されたのを最後に名前が見えなくなったということは・・・((;゚Д゚)ヒィィィ!

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-06-24

[追記220705]

小一条院女房の夢想が『入道殿の男子・女子、死ぬべし』かつ『其の後、関白以下、恐懼有り』なら
「死ぬべし」「入道殿の男子」に「関白」は含まれないから自己破壊予言という評は的外れか(^_^;)
タグ:歴史
コメント(8) 

コメント 8

tai-yama

「油火」と言うと天ぷら火災をイメージ。
藤原嬉子さんは天ぷらをあげている最中に火災で・・・・とか
だったり(笑)。
by tai-yama (2022-07-05 23:09) 

ナベちはる

デマは、今だったらTwitter等で当時以上のスピードで広まっていくに違いないですね。恐ろしいです(◎_◎;A)
by ナベちはる (2022-07-06 00:58) 

middrinn

「油火を立つ」は油に浸した灯心が茶柱の如く、
tai-yama様、立ったものだったりして(^_^;)
by middrinn (2022-07-06 05:09) 

middrinn

たしか日大と慶大の研究者が足を使って当時の拡散経路を調べ上げましたが、
ナベちはる様、Twitterなら拡散経路を辿るのも膨大ですけど楽かも(^_^;)
by middrinn (2022-07-06 05:12) 

df233285

「『油舐め』が出た」なら、少しは何なのかが判りますが。
「『油火立て』が出た」では、確かに意味が分からないですね。
by df233285 (2022-07-06 08:16) 

middrinn

まだ存在を知られていない妖怪がいるのかも(^_^;)
by middrinn (2022-07-06 09:00) 

yokomi

自己成就予言....言霊(^_^;)
by yokomi (2022-07-08 21:46) 

middrinn

自己成就予言は予言が公表されたことに対する社会の反応、すなわち、
社会の力によるもので、言霊の如く言葉の持つ力ではないです(^_^;)
by middrinn (2022-07-09 06:00) 

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