SSブログ

220508読んだ本

GWの終わりを告げるかの如く流れてくる笑点のテーマ、いつもより物悲しく感じられる(-ω-、)

【読んだ本】

萩谷朴『清少納言全歌集 解釈と評論』(笠間叢書,1986)所蔵本

     やまのあなたなる月をみて。

    月みればおいぬる身こそかなしけれつひにはやまのはにかくれつゝ

      山の彼方にかかる月を眺めて(詠んだ歌)。

     月を見ると年老いたわが身が一層悲しまれることだ。月は毎日最後には山の稜線へ
     隠れてしまうのだが(私の一生もあのように永遠に沈んでしまうのだろうと思って)。

本書から現代語訳も引いたけど、昨日の白居易(白楽天)の「贈内(内に贈る)」が清少納言の念頭
にあったのかどうか(@_@;) 〈月が山(の端)に入る〉と詠まれると、出家・遁世が思い浮かぶけど
(『伊勢物語』等の宴から寝所へ逃げる喩えも)、人生の終焉かぁ(@_@;) 試しに『新古今和歌集』
を披いて見付けた藤原隆信の歌を、久保田淳『新古今和歌集全注釈 五』(角川学芸出版,2012)から
現代語訳も一緒に引く(@_@;)

     百首哥たてまつりしに

    ながめても六十の秋は過ぎにけり思へばかなし山の端の月

     もの思いに沈みながらじっと月を見つめて、六十年の秋は過ぎてしまった。
     思えば悲しいなあ、西の山の端に懸かった月は、余命いくばくもない
     わたしの姿を思わせて。

同書は『方丈記』を挙げていたので、安良岡康作(全訳注)『方丈記』(講談社学術文庫,1980)から
当該一文を現代語訳とともに引く(@_@;)

    ・・・/そもそも、一期の月影傾きて、山の端に近し。・・・

     ・・・/さて、わたくしの一生という月が沈みかかって、残った寿命は、
     月の入る山の端に近いありさまである。・・・

同書が注釈で挙げていたのが僧正深覚の『後拾遺和歌集』入集歌で、犬養廉&平野由紀子&いさら会
『笠間注釈叢刊19 後拾遺和歌集新釈 下巻』(笠間書院,1997)から現代語訳も合わせて引くけど、
執筆者は橋本令子の由(@_@;)

     月の山のはにいらむとするを見てよみ侍ける

    ながむれば月かたぶきぬあはれわがこのよのほどもかばかりぞかし

      月が山の端に没しようとするのを見て詠みました歌

     もの思いにふけって眺めていたら、月は西に傾いてしまった。
     ああ自分の一生の残り時間もあれぐらいなんだなあ。

同書は「・・・西に没する月が老年や死期を表す例としても和歌の中では早いもの。」と指摘してて
興味深いんだけど、「深覚は長寿であり、八九歳で没した。」としか記さないところは謙抑的(^_^;)

川村晃生(校注)『和泉古典叢書5 後拾遺和歌集』(和泉書院,1991)の頭注は「※作者は長久四年
(一〇四三)八九歳にて入寂。晩年の詠。・・・」とし、藤本一恵『後拾遺和歌集全釈 下巻』(風間
書房,1993)も「・・・長寿を保ち、八十九歳で入寂している。この歌は、晩年の詠らしく、・・・」
と記してるけど、この歌は詠作時期が不明らしくて、もし50代とかでの詠なら、チト可笑しい(^_^;)

・「白詩の世界」を「再現する」なら、清少納言は白居易の如く「寝たまま」御簾を上げないと(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-04-04

・『枕草子』で最も有名な章段に不審なシーンがあるが疑問に思った研究者がいないのも不審(@_@;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2022-04-06
タグ:古典 和歌
コメント(6) 
共通テーマ:

コメント 6

ナベちはる

大型連休の終わりに聞く笑点のテーマやサザエさんのエンディングテーマは、普段の日曜日以外に悲しくそして寂しく感じます…orz
by ナベちはる (2022-05-09 00:48) 

middrinn

たしかに、サザエさんのも一日の終わりを感じさせますものね(^_^;)
by middrinn (2022-05-09 06:09) 

df233285

で、漢詩と西空低くに見える月は対応しているのでしょうか。
これは実際に、天象に見慣れている方の歌じゃないですね。
三日月は、闇夜週間が終わって、月明かりの週間に入る、近世
以前の夜遊び人にとってのウキウキ月。少なくとも上弦半月好き
の私も普段、三日月西に夕方見えると仲間が出てきたとウキウキ。
流れ星・流星雨は、ジャコピニとポンスヴィネッケを除いて、
たいていは明け方ですので、害も少ないですしねぇ。
by df233285 (2022-05-09 07:53) 

middrinn

漢詩文に「老年や死期を表す例」があるかまでは判りません(^_^;)
京都に住んでる人々ゆえ月が山に入るのは当たり前なのかな(^_^;)
by middrinn (2022-05-09 08:39) 

tai-yama

八十九歳は、もう最晩年ですね。でも、今の時代だと車を運転して
いる歳と言う(恐)。
by tai-yama (2022-05-10 00:05) 

middrinn

80代で詠んでたとしても、当時の平均寿命を考えると、
周囲の人間たちがどう感じたのか気になります(^_^;)
by middrinn (2022-05-10 05:55) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。