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211022読んだ本

読書の厄介なところは、雲上界の人事の話なのに下下が盛り上がることである〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)
次々と繰り上げられ、玉突きであわよくば自分も・・・などと内心期待し夢見てるからだったり(^_^;)

【読んだ本】

新田次郎『小説に書けなかった自伝』(新潮文庫,2012)所蔵本

書名はかつて私小説が純文学の主流だった文壇を意識したものか(@_@;) 自伝の形をとった自作解説
という感じで新田次郎作品のブックガイドとして読め、また〈如何にして作家になったか〉が随所に
語られてるので作家を目指している人向きでもある(^^) モチ小生は前者の読書案内として読んでて、
「時代科学小説」その他を読破してきたけど、今日は「ひそかに辞職の決意をする」の章を読む(^^)

富士山気象レーダーが事実上は完成した昭和39年の暮に、「比較的親しくしている」気象研究所長の
大谷東平(⇒ 気象庁も財務省の如く「記録」を破棄したか、あるいは朝日新聞の誤記かヾ(`◇´)ノ
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2018-07-28 )から、気象庁が全体的に高齢化し
人事が頭打ちになってしまってるので測器課長を辞めてくれないかとの話( ̄◇ ̄;) 断わるも、一晩
考えて、翌朝には上司である観測部長の吉武素二に辞意を表明すると、人事課長に云われて拒否した
話だし、富士山気象レーダーの実用免許が降りるまでは、そして来年度(昭和40年)に東京で開催の
国連気象機構の気象測器観測部会の国際会議で一役買ってもらいたいので辞めて貰っては困るなどと
慰留され、心の中では一年後の今日に辞表を出すと決意(@_@;) 何故か金色夜叉の台詞を連想(^_^;)

    ・・・終戦と同時に気象庁は従来の気象台の職員の他に、海外地に居た気象関係者、
    陸海軍気象部関係者まで引受けてしまった。終戦時二十歳の人も既に四十歳である。
    四十歳になって係長にもなれない人がごろごろしている実情だった。中央の課長が
    一人辞めると、その異動に伴って中央だけでも課長、課長補佐、専門官、係長、
    技術主任という具合に次々と昇格又は昇任の道が開け、更に地方官署にまで影響を
    及ぼすことを考慮すると、私一人辞めることによって、十人は浮上するということに
    なる。・・・

退職後に備え、昭和39年春に「山と渓谷」に「孤高の人」の連載を始めたのに続き、昭和40年5月から
「歴史読本」に「武田信玄」の連載を始めるも、〈他の小説雑誌に比較すると「歴史読本」の原稿料
は安かったし、山と渓谷社の原稿料も同様だった。〉ヒィィィィィ(゚ロ゚;ノ)ノ それでも公務員の恩給と両者の
六十枚の原稿料で当分の間は何とかやっていけそうとのこと(ノ_-;)ホッ… また昭和40年6月には直木賞
受賞後初の長篇一挙掲載小説を「別冊文藝春秋」に発表、満州で終戦を迎えて収容所生活から日本に
引揚げるまでの自分自身をモデルにした作品「望郷」は、気象庁を辞めることを決心し、自分の真価
を世に問おうと、念入りに書いた自信作である( ̄ヘ ̄)y-゚゚゚

    ・・・掲載後の書評も悪くはなかった。単行本にするために、もう一度加筆して
    文藝春秋出版部の佐藤観樹さんに渡した。彼はその後、父佐藤観次郎氏の後を継いで、
    衆議院議員(社会党)となったがこのころは文藝春秋の出版部にいた。私が彼に
    「望郷」について感想を求めたら、/〈こんな面白くない小説ははじめて読んだ〉/
    と云った。これほど率直にものを云った編集者は後にも先にもいなかった。その後
    私が書いた「富士山頂」と司馬遼太郎さんが書いた「腹を切ること」とが「別冊文藝
    春秋」誌上に掲載されたときのことである。佐藤観樹さんが私のところにやって来て
    その「別冊文藝春秋」が売り切れになったと報告したあとで面白いことを云った。/
    〈でも喜んじゃあいけませんよ、「別冊文春」が売り切れたのは、「富士山頂」のせい
    じゃなくて、司馬さんの乃木大将の話があったからですよ〉/そのとおりだと思ったが、
    まともにこう云われると少々私も気になった。だが私はこの佐藤観樹さんの遠慮がない
    ところが好きだった。彼が政治家になると決ったとき、私は率先して彼のために推薦文
    を書いた。/・・・

佐藤観樹、面白い(^_^;) 大昔、彼が日本社会党の右派に属していた頃、「諸君!」に論文を寄せてた
記憶があるけど(読んだけど、モチ内容は憶えてない)、文藝春秋社の元編集者だったとはね(゚o゚;)
「望郷」は力作だったんだろうけど、「初版八千部で終ってしまった」とあるから、佐藤観樹の眼識
も褒めるべきなのかも(^_^;) それはともかく、新田次郎にとっては、「終戦後の一ヵ年間は十年にも
値するほど長かった」そうで、その後、何かの折に当時の夢を見てうなされたが、「きまって日本へ
は帰れないという絶望の夢だった」由(´ヘ`;)

    ・・・「望郷」を書いている最中には毎夜のように当時の夢を見た。しかし、これを
    書き終えてしまえばもう夢は見ないだろうと思った。その期待は見事に裏切られた。
    憑きものは落ちないどころか、むしろ忘れかけていた苦しい思い出がよみがえって、
    夢見はいっそう悪くなった。/・・・

・不平ばかりで仕事をしない者が多くて真面目に仕事する人は白い眼で見られた「処女作のころ」(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-07-23

・投稿しても落選続きの原稿を直木賞受賞後は新編集長は〈面白い〉と言う「投稿作家の四年間」(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-07-24

・〈あなたは落ちるに決っています。面白くない小説ですものね〉と妻に言われた「直木賞受賞」(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-07-29

・受賞後第一作は酷評も石原慎太郎の小説などは「アホくさ」と評された「昼の仕事 夜の仕事」(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-01

・40歳を過ぎて作家となったので、その個性を確立しようと試行錯誤する「方向づけに苦しむ」(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-16

・虹を観察して地震を予知しようとした椋平広吉を藤原咲平が支援してた「メロドラマ的作品」(゚ロ゚;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-25

・時代科学小説と名付けられた作品群を読みたい人もいそうゆえメモした「メロドラマ的作品」(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-26

・登山家善人説を否定する作品と女流登山家に美人なしを打破する作品の「メロドラマ的作品」(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-29

・新田次郎の創作ツールは筋書きをグラフ化した「小説構成表」という「小説構成表を創る」(@_@;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-08-31

・斎藤十一の御眼鏡にかなわず5本中1本しか「週刊新潮」に載らぬ「労作必ずしも佳作ならず」(゚ロ゚;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-09-03

・山男はいい人達だが山に入ると別人でさんざん酷い目に会った「労作必ずしも佳作ならず」( ̄◇ ̄;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-09-05

・気象庁内で荒井郁之助以来の伝統を守ってる人は多くはなかった「視点を変えたヨーロッパ旅行」(..)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-10-04

・地方紙への新聞小説を依頼されたけど、途方もない条件を押しつけられた「新聞小説」((;゚Д゚)ヒィィィ!

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-10-07

・昭和36(1961)年頃に新田次郎が書いた短篇小説の会話部分に要注目な「新聞小説」_φ( ̄^ ̄ )メモメモ

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-10-11

・日欧の山の形状の差が人間の思考に影響と富士山気象レーダー設置と課長ポストの「岐路に立つ」(..)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-10-30

・古川武彦『気象庁物語』のデタラメと強迫観念のような「気持」が気になる「役人として」(@_@;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2019-11-25
タグ:歴史 小説 自伝
コメント(6) 
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コメント 6

ナベちはる

昇進であれば、自分も…と思ってしまいます(^^;
by ナベちはる (2021-10-23 01:34) 

middrinn

退職でもポストが空くわけですし、玉突きで昇進の可能性が(^o^)丿
by middrinn (2021-10-23 06:05) 

tai-yama

新田次郎さんでも、同時に掲載されて司馬遼太郎さんの刺身で
言うツマ(下手をするとたんぽぽ)程度だったとは・・・。
「ツマんない」と言われないだけ良かったのでは(笑)。
by tai-yama (2021-10-23 18:46) 

middrinn

「富士山頂」の方は佐藤観樹も褒めたのではないかと推察(^_^;)
小生は「新田次郎『富士山頂』(文藝春秋,1967)は面白く一気
に読み終えた(^^)」し、現に石原裕次郎主演で映画化も(^_^;)
by middrinn (2021-10-23 19:16) 

yokomi

映画『八甲田山死の彷徨』は見ましたが、気象にも興味が有るのに新田次郎の本はあまり買っていません(>_<) 収容所とはシベリアでしょうか。我が家の亡き爺とご一緒していたかな(^_^;) 「望郷」探してみます。
by yokomi (2021-10-24 09:29) 

middrinn

「満州で終戦を迎えて、家族と共に北朝鮮に疎開中に、
ソ連軍の捕虜の員数に加えられ、家族と別れて、東満州
の延吉捕虜収容所へ連行され、ここで一年暮らしてから、
翌年の十月、日本へ引揚げるまでの自分自身をモデルに
した小説」と、本書では説明されております(@_@;)
by middrinn (2021-10-24 09:59) 

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