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210919読んだ本

読書の厄介なところは、「一昔前」の歴史認識の本の方が人気なことである〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ
その方が俗耳に入り易いのだろう、読者レヴェルが低い( ̄^ ̄)ヾ( ̄o ̄;)オイオイ買ったお前も衆愚の一人!

【読んだ本】

君塚直隆『悪党たちの大英帝国』(新潮選書,2020)

書名から井野瀬久美惠『子どもたちの大英帝国 世紀末、フーリガン登場』(中公新書,1992)を連想
しつつ、「はじめに──「悪党」たちが時代を動かす」を読むと、イギリスの「評伝(伝記)文化」
についての話に続いて、

    ・・・/そこで本書では「悪党」をキーワードとしてみたい。悪党といってもそれは、
    単に「悪事をはたらく者の集団」や「悪事をはたらく個人」といった意味ではない。
    ちょうど日本中世史に登場する「悪党」のように、公式の荘園支配(守護や地頭らに
    よる支配)の外部からまさにアウトサイダーとして登場し、いつしか荘園体制を崩壊に
    導いていった武士団のような存在をイメージしている。もちろん彼らのなかには、
    公式の支配者やそれに従う世間から単に「悪事をはたらく者」という烙印を押されて
    しまう場合もあったろうが、地方支配の主流をなす勢力にまで躍り出るような者たちも
    いた。/本書で取り上げる「悪党」たちも、もとはこのようなアウトサイダーだった。
    ・・・

と本書7頁に説明があったけれど、本書が取り上げた人物たちが日本中世史の「悪党」と言われても、
ピーンと来ない(@_@;) なお、本書巻末の「はじめに」の註4(本書294頁)に「日本中世史における
悪党については、小泉宜右『悪党』(吉川弘文館、二〇一四年)を参照・・・」の由_φ( ̄^ ̄ )メモメモ

とまれ、「第一章 ヘンリー八世──「暴君」の真実」は興味深く読んだヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪

    第一章 ヘンリー八世──「暴君」の真実

     雷鳴とどろく玉座の暴君?/テューダー王朝の正統性/ヘンリ父子の微妙な関係/
     国王即位と大いなる野望/ウルジーの登場──国際政治の調整役?/
     後継者問題の深刻化──男子継承者への渇望/「主権国家」のさきがけ?──
     イングランド国教会の形成/内憂外患の一五三〇年代/「帝国」の拡大/
     王権と議会の協働[パートナーシップ]/王の死とその遺産/

チューダーはショーチューをサイダーで割ったもので寺田ヒロオが発明・・ヘ(__ヘ)☆\(^^;まんが道?
ヘンリー8世なら「六人の妻を次々と娶り、そのうち二人が離縁され、二人が処刑され、一人は出産後
すぐに亡くなった。」(本書22頁)というだけで、フツーに悪党と呼ばれてもいいような気が(^_^;)

さて、「・・・当時のヨーロッパは弱肉強食の戦乱の世である。・・・王が自ら鎧兜を身につけ馬に
乗って兵を率いる時代であったので、ヘンリはどうしても男の子の世継ぎが欲しかった。さらに、父
ヘンリ七世治世の初期に見られたように、王位継承の正統性が弱いチューダー家を抑えて王になろう
とする男子が、王家に連なる大貴族のなかから出てこないとも限らない。しかし、ヘンリより六歳上
のキャサリンは一五二五年には四〇歳になってしまった。これ以上の子どもを期待することは無理
だった。」(本書34頁)という事情から、イングランド国教会を形成したと本書は説く(⌒~⌒) 本書
38頁を引く(^^)

    ・・・/一般的には、ヘンリは自らの離婚願望のためローマ教皇庁(カトリック)から
    離脱して、イングランドに独自の教会を形成したと矮小化されるが、その実は、ヘンリは
    もっと根本的に政治や国家のあり方を変えたと言えよう。/・・・

「離婚願望」ではなく「男子継承者への渇望」であり、「離婚願望」とするのは「矮小化」の由(^^)
「もっと根本的に政治や国家のあり方を変えた」として、本書39頁は次のように主張してる(⌒~⌒)

    ・・・/ヘンリのイングランドは、政治外交(さらに軍事)的にはカール[五世]の
    [神聖ローマ]帝国に対して、宗教的にはローマ教皇庁に対して、自らの「主権」を
    訴えた最初の国家だったのかもしれない。/現代の国際政治学などが定義する「主権
    国家」とは、国境によって他とは区分された固有の領土を持ち、その領土のなかでは
    何人からも制約を受けないで統治することができ、領土の外には自分より上位の存在
    がなく、各国の平等が認められる「主権」を保証されているとともに、その領土に
    属する「国民」から成り立っているものである。/一六世紀のイングランド(および
    ヨーロッパ国際政治)がこのすべての条件にあてはまるわけではもちろんないが、
    一七世紀以降に段階的にこれらのいくつかは実現し、一九世紀初頭にナポレオン戦争
    (一八〇〇~一五年)が終結する頃までには確立される、「主権国家」のさきがけ的な
    存在として、ヘンリのイングランドは当時としては画期的であったといえよう。/・・・

ヘンリー八世のイングランドを近代的な〈「主権国家」のさきがけ的存在〉として評価する一方で、
「絶対王政」と捉える見方を本書46頁は次のように否定する(⌒~⌒)

    ・・・/一昔前までは、歴史学の世界ではヘンリをはじめとするテューダー
    王朝のイングランドの王たちは「絶対君主」であると定義づけられていた。
    しかし、キャサリンとの離婚やイングランド国教会の形成に至る一連の動きを
    見ていただいてもおわかりのとおり、権威主義的な性格に見えるヘンリは
    意外にも重要な政策を遂行するためには必ず議会に相談し、場合によっては
    自ら議会に出席して審議に参加し、議会制定法のかたちを取って臣民に命じていた。
    同時代のフランス国王フランソワ一世が身分制議会である全国三部会に
    あまり頼らずに政治を行い、神聖ローマ皇帝のカール五世が、時として
    「皇帝絶対主義」の確立をねらい、帝国議会を構成する諸侯から権利を
    認めるよういつも突き上げを食らっていたのとは対照的である。/一見すれば
    専制的で強引な性格にもとれるヘンリは、近代へと移行しつつあるイングランドの
    時代状況を把握する賢明さがあった。・・・

こんな感じで、ヘンリー八世のイメージが一新されるような内容で勉強になる章だったv( ̄∇ ̄)ニヤッ
なお、本書の巻末の「註」を見ると、本章で引かれている文献では、指昭博編『ヘンリー8世の迷宮
──イギリスのルネサンス君主』(昭和堂,2012)所収の論文が多いから要チェック_φ( ̄^ ̄ )メモメモ

実は本書の刊行から2ヶ月も経たない内に同じ新潮社から発売された芸術新潮の2020年10月号の特集
が「名画は語る! 王と女王の英国史」で、この特集の「解説」を担当していたのも君塚直隆であり
(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-09-26 )、ヘンリー8世について同誌で
語っている内容は本書と重なっている部分が多く、しかも、歯切れよしv( ̄∇ ̄)ニヤッ 君塚直隆曰く、

    ・・・/また、国内に目を転じれば、ヘンリー8世はチューダー朝の2代目で、
    王朝が成立してから日が浅かったため、王権の正統性の点では[後の]エリザベス
    [1世]に比べても基盤が弱かった。/

    ・・・/ヘンリー8世が結婚・離婚を繰り返したのは、何が何でも男子継承者を
    得たかったから。イングランドでは法的には女系での王位継承も可能です。
    にもかかわらずあくまで王子出生にこだわったのは、王権の正統性を少しでも
    高めるために他なりません。・・・

    ・・・教会を国家の下に置く選択自体の意義を矮小化すべきではありません。
    近代的な主権国家への第一歩という面もありますし、ドイツ北部の諸侯や
    北欧諸国がプロテスタント化を進めてゆく手本となりました。・・・

    /かつて研究者でも、テューダー朝の王権は絶対王政だなどと言っていましたが、
    先ほど述べたように、実際は議会との二人三脚であって絶対王政ではありません。
    そもそも当時のイングランドには、強力な官僚機構や常備軍という絶対王政の
    前提要素が欠けています。・・・

ただ、気になる点として、本書では「[ヘンリー七世の手によって]国内で盤石たる体制を固めつつ
あったチューダー家ではあるが、・・・」(本書26頁)とか「ヘンリは父[ヘンリ七世]のおかげで
チューダー王家による統治権も盤石になりつつあることはわかっていた。」(本書30頁)等と叙述を
してるのに、本誌では上記のように「王権の正統性の点では・・・基盤が弱かった」と述べるので、
「即位の時点で、ボズワースの戦いから四半世紀近く経っていても?」と問われるも、「いえいえ、
とてもそれくらいの時間では。」と答えた上で、「ヘンリーは1530年代後半には全国の修道院を
解散してその土地や財産を収公します。財政的にこれでひと息つけたし、1537年にはエドワード
王子も生まれている。テューダー朝の基盤が安定したといえるのはこの頃でしょう。ボズワースの戦い
から50年経ってますよね。」と述べており、「盤石」だったのか「基盤は弱かった」のか謎(@_@;)

さて、さて、さ~て! 君塚直隆の『肖像画で読み解くイギリス王室の物語』(光文社新書,2010)を
駆逐した感もある、中野京子の『名画で読み解く イギリス王家12の物語』(光文社新書,2017)から
ヘンリー八世についての記述を引いときますか(⌒~⌒)ニヤニヤ

    ・・・/離婚したいがゆえに、アンと再婚したいがゆえに、たったひとりで強引に進めた
    「宗教改革」だったが、まさに一石二鳥。飽きれば簡単に離婚できるようになったし、
    もっといいのは、自分に従わない国内の修道院や教会六百近くを取り潰し、土地も財産も
    全て没収できた。王室は潤い、それによって他の有力貴族の力を削ぎ、絶対王政は完成
    された。/・・・

君塚直隆によれば、「離婚したいがゆえ」「再婚したいがゆえ」ではなく「男子継承者を得たかった
から」で、宗教改革も「たったひとりで強引に進めた」のではなく「議会との協働」によるもので、
「絶対王政は完成された」というのは「一昔前」の理解ということになるわなオホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!

カラヴァッジョ《聖マタイの召命》について、中野京子『名画の謎 旧約・新約聖書篇』(文春文庫,
2016)が「・・・近年、異説が唱えられるようになった。」云々と紹介している説は、実は芸術新潮
2016年3月号によると「1980年代に浮上した新説」にすぎないし、しかも、同誌が紹介している「ここ
2年ほどの間に、にわかに浮上した」新説=「マタイあいまい説」に関しては中野京子の同書は言及
すら無い(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2016-07-26 )オホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!
ちなみに、この絵に関しては、原田マハの「やっぱり現地に行かないとわからないんですね」発言が
笑える(⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-07-24 )オホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)

ついでにメモっておくと、中野京子は「五十を超えた王は梅毒の症状が進み、・・・」としてるけど、
本書48頁に〈かつて晩年のヘンリは「梅毒」に冒されていたなどと言われていたが、最新の研究では
拡張蛇行静脈瘤か骨髄炎だったのではないかとされている。〉とある〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

・『名画で読み解く イギリス王家12の物語』は読み解きも薄っぺらい(ノ ̄皿 ̄)ノモットシラベテカケ!┫:

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-05-08

・中野京子センセイは大学入試の世界史の問題でも間違った解答をしそうだねオホホホ!!♪( ̄▽+ ̄*)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-05-06

・君塚直隆『肖像画で読み解くイギリス王室の物語』(光文社新書,2010)は英王室の歴史が主題(^_^;)

 ⇒ https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-05-11
タグ:歴史 列伝 絵画
コメント(8) 
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コメント 8

yokomi

その昔、日本には女性天皇が複数居られたのに自民党の政治家は「男系の歴史」と述べています。女性天皇を抹殺した悪党ですね(^_^)v な、なんと英国でも男児を望んでいたとは...(>_<)
by yokomi (2021-09-19 21:51) 

tai-yama

自民党の総裁選に悪太郎が・・・・。悪党の子孫だったり(笑)。
平安期の藤原氏ならいくらでも女性を提供してくれたのに・・・
by tai-yama (2021-09-19 23:10) 

ナベちはる

「ひと昔前」から現在の間に解るようなった範囲は(内容次第では)かなり拡がったものがありそうなので、ひと昔の方が内容がコンパクトで理解がしやすいのかなと思います(;`・_・´)

それか、「ひと昔前」と現在とで全く内容がガラリと変わって、今の方は理解が追いつかないなんてことも…??
by ナベちはる (2021-09-20 01:27) 

middrinn

「男系男子に継承者を限定したサリカ法
と呼ばれるヨーロッパ大陸の継承法は
採らず、イングランドでは女系女子にも
継承権がある。」と本書34頁にもあり、
yokomi様、前提が異なります(^_^;)
by middrinn (2021-09-20 06:19) 

middrinn

森護『英国王室史話』(大修館書店,1986)によると、
tai-yama様、三度目の王妃ジェイン・シーモアは父の
サー・ジョン・シーモアが「娘ジェインの、お手付き
による立身を望」んだらしく、手を回したよう(^_^;)
by middrinn (2021-09-20 06:53) 

middrinn

パラダイムシフトが起きると、旧パラダイムにとらわれている人々は、
ナベちはる様、おっしゃるように、理解不能になるでしょうね(^_^;)
by middrinn (2021-09-20 06:55) 

U3

『温故知新』とも謂われるように、歴史認識の本が新しく出ることは良いことだと思います。まあ粗製濫造な代物であるかどうかを判断するのは、それこそ読者の質であろうかとは思いますが。
by U3 (2021-09-20 10:57) 

middrinn

歴史認識に関する本が新しく出るとか拙稿の内容と関係ないです(-ω-、)
by middrinn (2021-09-20 19:00) 

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