SSブログ

200304読んだ本

〈先日、学生から「先生がいちばん関心をもっている人物は?」と聞かれて、フロイトだと答えたら、
「あの、何でもかんでもセックスと結びつけて考えた、いやらしい思想家ですか」と言われ、一瞬絶句
したが、気を取り直して「そう、あの人。きみ、よく知ってるじゃん」と答えた。私などは、ふだん
精神分析関係の本を読み、精神分析についてある程度の知識をもった人びととばかり接しているせいで、
つい、誰もがフロイトについてある程度は知っているのだろうと思ってしまいがちなのだが、フロイトを
たんに「エッチな思想家」だと思っている人は意外と多いのかもしれない。〉と鈴木晶『フロイト以後』
(講談社現代新書,1992)にあるけど、さしずめモラヴィアなら「エッチな作家」・・ヘ(__ヘ)☆\(^^;
一斉休校と同時に一斉休館となったのは図書館で働く職員に子育て中の女性が多いからだったり(@_@;)

【読んだ本】

千種堅『モラヴィア 二十世紀イタリアの愛と反逆』(中公新書,1989)所蔵

読了(^o^)丿 イタリアを代表する作家アルベルト・モラヴィア(1907~90)の評伝かつ作品論か(^^)
彼の主要な作品はほぼ全てが論じられてて、亡くなった1990年に出版された作品集『金曜日の別荘』
https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-02-27 )と死後に発見され翌年刊行の遺作
『豹女』( https://yomubeshi-yomubeshi.blog.ss-blog.jp/2020-02-28 )は取り上げられてなく、
また死後に刊行された『モラヴィア自伝』が資料として用いられていないのは仕方がないわな(^_^;)

モラヴィア(本書によると、ドストエフスキーとともに、フロイトにも若い頃から傾倒してた由)が
「性を描く作家」として有名なことは小生も知ってたけど、「・・・男性の性器に人格を与え・・・
ペニスも主人公と同じに考え、語り、行動する・・・」という、1971年の長篇『わたしとあいつ』の
存在は本書で初めて知った(^_^;) ちなみに、「一九五二年にはローマ教皇庁から全作品が禁書処分を
受けている。〝愛欲の書〟と断じられて、カトリック信者は読んではいけないとされた。」らしいが、
「・・・筋立てはともかく、エロティックな描写などないに等しい『無関心な人びと』を含めた全作品
というのは厳しすぎる処分だ。」とある(^_^;) 処女作で代表作の『無関心な人びと』は本書によると
「・・・現代イタリア文学全般を論じた文章には、必ずといっていいほど、冒頭で取り上げられる。
文学事典を開けば、この作品に項目が一つ割かれているのが普通だ。」とか( ̄◇ ̄;) 1929年出版の
「・・・『無関心な人びと』はヨーロッパ最初の実存主義的な傾向の作品・・・」で1939年のサルトル
『嘔吐』や1942年のカミュ『異邦人』よりも早い、という「モラヴィア自身の発言」もある由(゚ロ゚;)
「幼くして業病にとりつかれ、学校教育を受けていない」のに(←〝だからこそ〟と本人は語る)、
「・・・十七、八歳で『無関心な人びと』を書き始めた・・・」とは驚き∑( ̄ロ ̄|||)ニャンと!?

『無関心な人びと』は「実存主義的な傾向の作品」とされるが、「モラヴィアは半世紀以上も小説を
書いていて、しかも時代の動向に敏感であるだけに、作品もその時代時代の風潮を反映して、作風は
多様である。」とあるように、観念的なのが苦手な小生にはチト難解な「作風」の作品もある(^_^;)
昨年末には本書も取り上げているモラヴィアのある長篇を読み始めたけど、ネチネチした描写に辟易
して(性描写のことではない)、途中からストーリーだけ追って最後まで読むも、そーゆー次第ゆえ
このブログには記さなかった(^_^;) ストーリーは面白いので、本書で代表作の1つに挙げられている
別の長篇に年明けから挑戦するも、書名にもなっている主題がマジでイミフで、170頁で挫折(-ω-、)
でも、本書が「・・・しきりに[当該作品の]抽象性を紹介して・・・」たので、チョイ安心したし、
その主題についても本書の解説を読み、やっと得心(^_^;) というわけで、ブックガイドとしても本書は
役に立つのだけれど、結末まで書いちゃってる作品もあったのが難点(´ヘ`;) 巻末に「モラヴィア
年譜」とともに「モラヴィアの作品」というリストもあり、作品が原題(←モチ日本語)で年代順に
並べられて、その邦訳はwikiよりも丁寧に記されている(^^) 例えば、代表作の一つでもある1945年の
中篇『アゴスティーノ』(この作品から性描写が大胆になる由)は、邦訳の題名が全く異なる上に、
1948年の中篇『反抗』(これも邦訳題名が全く別の代物)とともに一冊の文庫本に収録されたことも
記されてるから、本書を読んで気になった作品を探すのには便利(^^) ただ、全て確認してないけど、
短篇集『黒マントの女』の邦訳が「千種堅訳、早川書房、一九八五年」とあるのは集英社の誤り(+_+)

ほんじゃ、最後に、モラヴィアの女性関係でも引いておこうかな〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

    ・・・/初恋にしても、やはり二十歳は年上の女性であり、親類のなかではサナトリウム
    入りを決定づけた伯母のアメーリアに、特に親近感をいだいていたようで、作品のなか以外、
    同年配の女性には関心を寄せていない点、おませな少年だったのかもしれない。それが後年、
    結婚相手を選ぶ段になると、逆にうんと若い相手しか選ばなくなる。最初の奥さんのエルサ・
    モランテが一九一八年生まれで、日本風に言えば、ほぼ一回り下となるし、次のダーチャ・
    マライーニは三十歳近くも離れ、三番目の夫人のカルメン・リィエーラにいたっては
    四十六歳年下となっている。/若いときは年上を求め、年配になると若い人を相手にする。
    その関心は同年配者にむかうことはない。・・・

最初の妻エルサ・モランテは「名実ともにイタリア最大の女流作家」だそうで、『歴史』(邦訳題名
は『イーダの長い夜』)という超ベストセラー作品も出していて、2番目の妻ダーチャ・マライーニも
女流作家で、「著名な日本学者フォスコ・マライーニの娘」の由、3番目の妻カルメン・リィエーラも
モラヴィアに勧められてモラヴィアのために自伝的な小説を書いて作家デビューと本書((;゚Д゚)ヒィィィ!
コメント(12) 
共通テーマ:

コメント 12

mimimomo

こんばんは^^
この前のブログを読んでいて寝不足で頭に入らず、コメントも書かず仕舞いになった。
今日は昼寝を2時間もしてしまって(-。- 夜寝られるかしら。
フロイト、自慢じゃないが読んでいません(__;
モラヴィアも全然知らない作家です(__; オサトガシレル(;、;
by mimimomo (2020-03-04 18:04) 

middrinn

旦那様から「モラヴィアを知らないなんてベートーベンを知らないのと
同じだよ。そんなの常識中の常識」って言われたりはしないかと(^_^;)
寝る子は育つと言いますし、温かいお布団に入れば眠れますよ(^o^)丿
by middrinn (2020-03-04 18:33) 

ニッキー

フロイト、精神分析よりもいやらしい思想家として有名だったとは(*_*)
年代のギャップなんでしょうかねぇ(⌒-⌒; )
by ニッキー (2020-03-04 20:09) 

enokorogusa

同年配に関心がないのではなくて、ある特定の年齢(20歳ごろ?)
の女性にしか興味がないのでは?
モラヴィアは全く知らないのですが適当に言ってみました(^^;)
by enokorogusa (2020-03-04 20:10) 

middrinn

この後、ユング心理学がブームになった以降の世代は、
ニッキー様、フロイトを知らなかったりして(^_^;)
by middrinn (2020-03-04 20:22) 

middrinn

「・・・一九八三年、モラヴィアは四十六歳下の
カルメン・リィエーラといっしょになる。」と、
enokorogusa様、あるので、彼女は30歳(^_^;)
「一九六二年、モラヴィア五十五歳の年、・・・
およそ三十歳年下のダーチャ・マライーニと同居
する。」とあり、彼女は25歳ぐらいかと(^_^;)
エルサ・モランテと結婚したのは1941年なので、
「一九一八年生まれ」の彼女は23歳です(^_^;)
by middrinn (2020-03-04 20:33) 

tai-yama

三番目の婦人は遺産ねら・・・・
ペニスが突然、電車の中で「やらせろ、やらせろ」と語り出したら
怖い気がしたり(笑)。
by tai-yama (2020-03-04 23:28) 

ナベちはる

間違っていないにしろ、思いもしなかった答えが出てくるのは驚きますね(◎_◎;)
by ナベちはる (2020-03-05 00:22) 

middrinn

カルメン・リィエーラはモラヴィアのファンだったそうです(^_^;)
tai-yama様もいつかブログのファンの女性と結婚したりして(^_^;)
by middrinn (2020-03-05 07:16) 

middrinn

ホント全くの想定外の答えが返って来ると、
ナベちはる様、対応に苦慮しますね(^_^;)
by middrinn (2020-03-05 07:18) 

yokomi

 やはりモラヴィアは配偶者に一定範囲に狭められた年齢要件が有ったのですね。-30歳とは在原業平より上手かも(^_^;)
by yokomi (2020-03-05 12:16) 

middrinn

たしかに業平よりも守備範囲が広いですね(^_^;)
妻3人の共通点は作家的資質かもしれませんよ(^^)
by middrinn (2020-03-05 15:58) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。