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200112読んだ本

ネットを検索してソレが最上位に表示されるのを見ると衆愚政治を連想してしまうのだが、某サイトの
〈 「六歌仙(ろっかせん)」とは、古今和歌集の仮名序において紀貫之が挙げた六人の歌人のことで、
・・・「歌仙」とは、もともと仮名序で柿本人麻呂と山部赤人の二人に限って使われていて〉云々との
説明、第一に柿本人麻呂とともに山部赤人を「和歌仙」と評するのは「仮名序」ではなく「真名序」、
第二に「仮名序」の柿本人麻呂評の「うたのひじり」を「歌仙」ではなく「歌聖」としてる注釈書も
あり(奥村恆哉、久曾神昇、小町谷照彦)、第三に「仮名序」の「うたのひじり」を「歌仙」とする
片桐洋一『古今和歌集全評釈 上』(講談社学術文庫,2019)にしても〈後世の六歌仙や三十六歌仙と
違って、また赤人とも区別して人麿だけを「歌仙[うたのひじり]」としていることに注目したい。〉
と指摘しているヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!! 調べずにデタラメを書き散らすネット上のサイト等
よりも紙の出版物の方が信頼できると思うのは早計で、片桐・前掲書は「真名序」の件では「・・・
柿本人麿と山辺赤人を和歌の二歌仙としている点は仮名序の場合と違いがないが、・・・」としてて、
編集者等が何人も何度も目を通していたとしても目が節穴なら無意味ヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンガァ!!

【読んだ本】

『新古今和歌集』入集歌の作者に「上東門院小少将」なる人物がいるが(同集の哀傷歌に入っている
紫式部の歌の詞書にも「上東門院小少将身まかりて後、・・・」云々と記されてる)、何者なのか、
手元の主だった同集の各注釈書の説明を(歌番号等は除いて)引く〇 o 。.~~━u( ゚̄  ̄=)プハァ

小島吉雄(校注)『日本古典全書 新古今和歌集』(朝日新聞社,1959)

    上東門院の女房。参議源扶義の女。紫式部と特に親しかった。

石田吉貞『新古今和歌集全註解』(有精堂,1960)

    一條左大臣雅信の子参議源扶義の女。上東門院の女房。紫式部と最も親しかったことが
    紫式部日記に見える。傳未詳。

窪田空穂『完本新古今和歌集評釈 下』(東京堂出版,1965)

    一条左大臣雅信の子参議源扶義の女。上東門院の女房であり、紫式部と親交のあったことが
    紫式部日記から知られる。

久保田淳(校注)『新潮日本古典集成 新古今和歌集 下』(新潮社,1979)

    生没年未詳。長和二(一〇一三)、三頃没か。宇多源氏、扶義女。

田中裕&赤瀬信吾(校注)『新日本古典文学大系11 新古今和歌集』(岩波書店,1992)

    生没年未詳.長和2年(1013)頃没か.権左小弁源時通の女.一条天皇中宮彰子
    (上東門院)女房.紫式部と親しかった.

峯村文人(校注・訳)『新編日本古典文学全集43 新古今和歌集』(小学館,1995)

    没年未詳、長和二(一〇一三)~三年ごろ没か。上東門院彰子に仕えた女房。
    参議源扶義の娘。紫式部らと親交。

久保田淳(訳注)『新古今和歌集 上』(角川ソフィア文庫,2007初版)

    生没年未詳。長和二(一〇一三)、三年頃没か。宇多源氏、扶義女。
    一説に扶義の弟時通女。上東門院の女房。
    
久保田淳『新古今和歌集全注釈 六』(角川学芸出版,2012)

    生没年未詳。長和三(一〇一四)以前没か。参議正四位下源扶義の女。上東門院の女房で、
    紫式部と最も親しかった。『紫式部日記』に「小少将の君は、・・・」と評せられている。

以上、岩波の新体系が源時通の娘とする以外、どれも源扶義の娘としてる∑( ̄ロ ̄|||)ニャンと!?

古いのは仕方がない(-ω-、) 『日本古典文学大系19 枕草子 紫式部日記』(岩波書店,1958)所収の
池田亀鑑&秋山虔(校注)『紫式部日記』の補注(同書510頁)も、「小少将の君」を「女房。源扶義
(雅信男)女。紫式部の同輩のうち最も親交があった。一〇一三・四(長和二・三)年頃没か。」と
記しているが如く、(上東門院)小少将は従来は源扶義の娘とされていたらしいからC= (-。- ) フゥー

だが、近年の『紫式部日記』の各注釈書は源時通の娘としてるぞヾ(`◇´)ノ彡☆コノ! バカチンドモガァ!!

萩谷朴『日本古典評釈・全注釈叢書 紫式部日記全注釈 上巻』(角川書店,1971)

    ・・・源時通の女にして則理と結婚したものの、父時通も出家遁世し、
    夫とも早く離別して、のち、伯母倫子や従姉の扶義女大納言の君の縁をもって、
    従妹の中宮彰子に仕え、兄雅通の官によって少将の君と呼ばれ、少将命婦と
    区別するために小少将の君と通称されたが、道長の愛情をも蒙ることとなり、
    きわめて薄倖な上に苦しい立場を経験した女性である。・・・

山本利達(校注)『新潮日本古典集成 紫式部日記 紫式部集』(新潮社,1980→2016新装版)

    中宮の上臈女房。源時通の女で[藤原道長の妻]倫子の姪。

長谷川政春&今西祐一郎&伊籐博&吉岡曠(校注)『新日本古典文学体系24 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部
日記 更級日記』(岩波書店,1989)所収の伊籐博(校注)『紫式部日記』の同書257頁脚注33

    中宮の上臈女房。源時通娘。

藤岡忠美&中野幸一&犬養廉&石井文夫(校注・訳)『新編日本古典文学全集26 和泉式部日記 紫式部
日記 更級日記 讃岐典侍日記』(小学館,1994)所収の中野幸一(校注・訳)『紫式部日記』の同書129
頁頭注28&「登場人物一覧」(同書264頁)

    源時通の娘。

    中宮女房。源雅信の子右小弁時通の娘。道長室倫子の姪にあたる。長和二、三年
    (一〇一三、四)ごろ没か。式部ともっとも親交があった。

宮崎莊平(全訳注)『紫式部日記(上)』(講談社学術文庫,2002)

    源時通の娘。中宮彰子の従姉妹、道長の北の方倫子の姪。式部とはきわめて親しい間柄の
    同輩女房。
コメント(12) 
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コメント 12

enokorogusa

まだ読めていない片桐洋一『古今和歌集全評釈 上』の「歌仙」に関する仮名序と真名序の該当部分を確認したらナルホド。
でもこれ自分で読んでたらスルーしない自信がないです(^^;)

by enokorogusa (2020-01-12 19:17) 

middrinn

「注目したい」とまで言い切っているから、ナルホドと感心させられた分、
「違いがないが」の件には、さとう珠緒ですらプンプンですよヾ(`◇´)ノ
by middrinn (2020-01-12 19:28) 

tai-yama

源時通=源扶義だったら丸く収まったのに・・・。学術的には
問題なんだろうけど(笑)。実は、紫式部と仲が悪かったの説が
出てきたらさらに記述が変わりそう。
by tai-yama (2020-01-12 19:55) 

middrinn

( ^o^)ノ◇ 山田く~ん 特製源時通=源扶義だったら座布団10枚 ♪
片桐・前掲書によると、仮名序の記述の矛盾解消のために人麿4人説も
あったとか(^_^;) 小少将の君も紫式部もともに「道長の愛情をも蒙る」
立場だったのに、そのことをお互い知らずに同じ局で生活してた由^_^;
by middrinn (2020-01-12 20:03) 

ニッキー

そういえば今日の夕方、RUNから帰ってきたときに
かみさんが見てたTVで古今和歌集だったかな?を
やってて思わず「えっ?興味あったっけ?」って聞いたら
「ううん、TVつけてたらこの番組が始まっただけ」と言われましたw
昨日は寝ても寝ても眠くて記事アップしたら速攻BEDに
倒れこんでました(;^ω^)

by ニッキー (2020-01-12 20:53) 

middrinn

『古今和歌集』の歌にあるような遠征する夫を思って砧を打つ妻というより、
ニッキー様を走れ走れとビシビシ鞭打つイメージオホホホ( ^^)/~~~~ ピシッ!
そのお蔭で、高滝湖マラソンの年代別表彰で5位ヤッタネ!!(v゚ー゚)ハ(゚▽゚v)ィェーィ♪
by middrinn (2020-01-12 21:00) 

ナベちはる

紙媒体だから真実…というのは、1つの幻想かもしれませんね(^^;
by ナベちはる (2020-01-13 01:22) 

middrinn

紙媒体だからと無条件で信頼するのも、ネット情報だからと
無条件で疑ってかかるのも、ともに問題があるかと(^_^;)
by middrinn (2020-01-13 06:42) 

mimimomo

おはようございます^^
ややこしくって付いて行けない。
何度読んでも覚えられない悲しさよ^^
by mimimomo (2020-01-13 07:39) 

middrinn

漢文で書かれた「真名序」と違って、「仮名序」は平仮名で書かれているものだから、
「歌仙」という漢字が「使われてい」るわけがないと気付けば後はスルスルと(^_^;)
by middrinn (2020-01-13 07:43) 

mimimomo

この所「日本語」に強い関心を持ち(middrinnさんのおかげ)
いろいろ勉強を始めましたが、範囲が広すぎて(=”=)なかなか追いつきませんよ。
by mimimomo (2020-01-13 07:55) 

middrinn

冒頭の枕は丁寧に説明してないので理解しにくいと思いますm(__)m
本文は『新古今和歌集』の研究者たちが『紫式部日記』の研究動向を
参照すべきなのに怠って古びた知識に基づいて執筆してる、と(^^)
by middrinn (2020-01-13 08:03) 

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